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「誰もお前に興味はない」と上司に言われて過ごした20代後半

    はじめに言います。
    タイトルから直感するほど嫌な記事ではありません。


    社会人5年目の頃の話でしょうか。
    私には尊敬する上司がおりました。


    彼は効率と情緒という相反する要素を、笑いながら両獲りするような大人でした。大衆を動かす人心への理解と愛嬌、それらを能率よく運用し、世の大勢の要点を抑えて結果を出す。欠点と言えば異常なパチンカスである点、見えているものが違いすぎて大雑把な点が挙げられるでしょうか。私はそんなダイナミックな上司に面倒を見てもらい、尊敬しておりました。


    一方、彼に出会った頃の私は兎にも角にも評判が悪く、世話になる以前の上司にトコトン噛みつきまくり、部下の間違いも許さずしかし自身は未熟で、結果周りにボコボコにされ、されども己のやり方しか選べぬダイナミックなうつけものでした。


    そんななか人事異動の辞令を受け、件の上司の世話になることとなりました。



    私が異動して2ヶ月くらい経った頃、面談で「お前評判より随分マトモだな〜ワハハ」と言われました。曲がりなりにもずっとずっと頑張ってきた私は、涙が出るような思いでした。上司は続けました。



    「お前はマトモだから、先に教えといてやろう。誰もお前に興味なんてない。」びっくりする私をまっすぐに見ながら、彼は続けました。



    「いいか。部下はお前が上司だから言うことを聞くし、俺はお前がマトモで使えるから使う。取引先が興味あるのは、お前の発注権限だ。お客が興味あるのは、店員としてのお前だ。」


    「だからこそ、ちゃんとやれ。手を抜くな。腰を低く接して、無駄なことを言わず、やるべきことをちゃんとやって、余計なところでつまづくな。お前はマトモだから、うまくやれ。こんなことは言ったら、本当はいけないんだけどな。お前は俺と同じ失敗しそうだと思うんだよ。まあ若いうちなら、失敗してもいいんだけどな。ワハハ。」


    正直、時代にそぐわない滅茶苦茶な話だと思いました。

    しかし、誰しもが正しさを訴え、守られることしか選べない世の中で、彼は私より真剣に私の未来を案じ、考えてくれていました。未熟な私は、そんな大人に忠誠を誓わぬわけがありませんでした。



    まあ全然すぐに言われた通りできるわけでもなく、部下と幾度となく揉めたり、パワハラ案件にされかけたり、大切な資料を任されたり、怒られて拗ねたり、忙しすぎてみんなで夜中まで設営したり、二日酔いで怒られたり、毎日のように興味のないパチンコの話を聞かされたり、数字良くて褒められたり、逆に言われたこと落としていて懇々と説教されたり、結婚したお祝いをいただいたり、パートたちの陰口大会にジュース片手に付き合ったり、花火大会の日に夜中まで働いてバックルームでみんなで花火見上げたりもしました。



    全部が全部、そこにいるのが私である必要がある瞬間ではありませんでした。社会とはそういうもので、相手が自分に興味があろうがなかろうが、お互いが役割を果たす限り廻ってゆきます。



    それが分かって、腹の底まで納得して。少しだけ肩の力が抜けた。
    私の20代後半は、そんな時間だったと思います。

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