
休日とオニギラズ
窓から差し込む光で目が覚める。
休日の朝はアラームもかけず、寝れるだけ寝る。それがモットーの私。
時計を見ると午前9時24分。いつもの休日よりは少し早い目覚めだった。
近くに幹線道路があるため、車の行き交う音が聞こえている。
他の人が働いている時間に休んでいる、この少し後ろめたい優越感に浸る。
横を見ると彼女がまだスヤスヤと寝ている。
あまりにも気持ちよさそうだったため私も二度寝をしてしまった。
彼女の出かける支度をしている音で目が覚めた。
今日は天気がいいためピクニックでも行こうという話になった。
ピクニックにかかせないのはお弁当である。
仕事中に食べる弁当とは別格なあの場所でしか味わえないなにかがある。
ピクニックのお弁当というとサンドイッチやおにぎり、唐揚げや卵焼きなどが代表的なポジションだろう。
今回はちょっと違うものがいいなと思い、オニギラズを作ることにした。
彼女とスーパーへ向かい、挟みたい具材を思いつく限り籠へ入れる。
卵、豚肉、大葉、アボカド、にんじん。
気づけば色とりどりの食材で籠が賑やかになっていた。
レジに行き、会計を見てびっくり!これならちょっといいランチができるぐらいの金額まで膨れていた。
帰宅して調理する。薄焼き卵を作り、横では豚肉を甘辛く炒める。
フライパンから流れてくる音や甘塩っぱい香りがワクワク感を積み上げる。
大判の海苔にご飯と具材を乗せてサンドする。
とびっきり大きなオニギラズの完成だ。
ピクニックの場所は山の中腹にある大きな公園。
車を走らせていると、ふと気がつく。
おかずを用意していない。
オニギラズに集中しすぎた結果だ。
慌てて道すがら何か無いかと見ていると小さなお肉屋さんがあった。
入るとショーケースにはコロッケ、串カツ、ローストビーフ、おかずにもってこいの商品が所狭しと並んでいる。
揚げ物の香りとは怖い物で、あれもいいこれもいいと中々決まらない。
5分ほど悩んでいると、店員さんが揚げたてのチーズ入りハムカツを陳列し始めた。
揚げたてで美味しいですよ。その言葉に2人で目を合わせる。
これはずるい。そんなことを言われては買わないわけにはいかなくなる。
無事におかずも購入し、公園に向かう。
朝も遅かったのでお昼を過ぎて2時になろうかというところで公園に到着した。
お腹はもうぺこぺこだ。
公園には学校を終えた小学生が鬼ごっこをしていた。
遠くから「待てー」という声が響く。
自転車に乗った少年達がぶーん、キキーと言いながら公園に集まっていた。
子供の頃、公園というのは日常にあったものだった。
それがいつからか何か特別なことがないと来ない場所になっている。少しだけ、自分が大人になってしまったと実感した。
子供達の声を聞きながら、歩いてちょうどいい原っぱにシートを広げて2人で座る。
お腹と背中が引っ付きそうだったからすぐに弁当を広げた。
そこには朝作った色鮮やかなオニギラズ。
一口かぶりつく。豚肉の甘塩っぱさが口いっぱいに広がったかと思うと大葉の爽やかな香りが広がる。お米の甘味や卵のまろやかさで包まれる。
うん。美味しい。
やっぱりピクニックのお弁当は少し違う。
この風景も一緒に食べているような高揚感がある。
チーズハムカツもまだ少し暖かい。これも手づかみで一口、チーズの濃厚さ、ハムの肉々しさ、サクサクした衣。ますますオニギラズが進む。
朝40分かけて作ったオニギラズは10分かからず2人で平らげてしまった。
お腹がはちきれんばかりになったので少し横になる。
シート越しの草が頬を少しチクチクとくすぐる。
土と草の香りがそよ風に乗って流れてくる。
しばらく言葉もなく、2人で空を眺める。
少し間が空いた頃、彼女が鞄からニーチェの本を取り出した。
なぜか彼女の家にあったそれを、交代で声に出して読む。
よく分からない小難しい言い回しにケラケラと笑ったり考え込んだりする。
気づけば16時。体感では1時間も経っていない気がする。
スマホを触ってダラダラと過ごす休日も嫌いではない。
でも、たまには外へ出て、緑の香りを吸いながら何もせず過ごすのも悪くない。
子どもの頃は当たり前だった公園が、少し特別な場所になっていた。
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