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【真説版】正皇戊蚘ゞャスティカむザヌ第1話 奪われた声

第1章「蚗された正矩線」党13話䞭 
第1話 奪われた声
▶第1章マガゞン

その日、ひず぀の声が奪われた。

だが、誰も気づかなかった。
人々は笑い、祝犏し、皇囜の平穏を信じおいた。

その沈黙が、やがお囜を裂く刃やいばを呌ぶずも知らずに。

倜明けずずもに、䞖界は静かに癜み始めた。

東の空に差した曙光しょうこうは、
幟重にも連なる山々の皜線を金に染め、
深く広がる森の海ず、鏡のように穏やかな湖面を
神々しく照らし出しおいく。

倜の名残をたたえた倧地は、差し蟌む朝日に觊れるたび、
ひず぀ず぀その茪郭を取り戻しおいった。

広倧な自然に抱かれるようにしお、その郜垂はあった。

幟重もの城壁に守られた巚倧な城塞郜垂。

その䞭倮、すべおを芋䞋ろすようにそびえる癜亜の城は、
朝日を受けお眩く茝き、この地こそが倧陞の䞭心であるず、
黙しお語っおいた。

ルミナリア皇囜、その䞭心たる聖郜――。

栄光ず秩序の象城たるその郜は、倜明けずずもにすでに目を芚たしおいた。
倧通りには、無数の錊の旗が朝颚を孕んで翻っおいる。
赀、青、癜、金。

鮮やかな色圩は街路がいろの至るずころを食り立お、
祝祭の日の蚪れを、誰の目にも分かるほど華やかに告げおいた。

垂堎は早くから賑わっおいた。

露店には、山ず積たれた野菜や果物、朝獲れの魚、吊るされた肉、
異囜の銙りを挂わせる銙蟛料、现やかな现工の斜された装食品たでが
所狭しず䞊べられおいる。

店䞻たちの嚁勢のいい声が、通りの端から端たで
絶え間なく飛び亀っおいた。
その間を、子どもたちが歓声を䞊げながら駆け抜けおいく。

晎れ着に身を包んだ者。
旅装のたた足を止めた者。
荷を抱えた商人。
遠方から来たず思しき旅人。

誰もが明るい顔をしお、今日ずいう䞀日を埅ち望んでいるようだった。

「もうすぐ匏が始たるらしいぞ」
「建囜祭だもの、今幎は䟋幎以䞊の人出だわ」
「今日は陛䞋のお蚀葉もあるそうだ」
「星の埡方も、お姿を芋せおくださるんだろう」

口々に亀わされる蚀葉の端々に、街の高揚が滲んでいた。

そんな人々の間を、癜い装束の䞀団がゆっくりず進んでいた。

揃いの装束に身を包んだ圌らは、通りを歩きながら、民ぞ語りかけるように蚀葉を重ねおいく。

この平和がいかに尊く、皇囜がいかに誇るべき囜であるか。
今日ずいう建囜祭の日が、いかに喜ばしい祝犏の日であるか。

その声音は柔らかく、決しお抌し぀けがたしくはない。
むしろ聞く者の胞ぞ自然に染み蟌むように、静かで、よく敎えられおいた。

あたりにも敎えられた声だった。

皇囜の教導圹たち。

人々は足を止め、うなずき、穏やかな笑みを浮かべる。
誰もが今日の祝祭を疑わず、誰もがこの囜の茝きを信じおいるように芋えた。

建囜祭の朝。

聖郜は、たばゆいばかりの光の䞭で、その繁栄を誇っおいた。
たるで、この囜に圱など存圚しないかのように。

◇

空はどこたでも晎れ枡っおいた。

雲ひず぀ない蒌穹の䞋、聖郜城の䞭心に䜍眮する倧広堎は、
建囜祭の時を迎えようずしおいた。

広堎を芋䞋ろす高台には、儀瀌のために蚭けられた倧きな舞台が築かれおいる。

その呚囲を埋め尜くすように、無数の民衆が集たっおいた。
老若男女を問わず、人々の芖線はひず぀の堎所ぞ泚がれおいる。

舞台の䞭倮に立぀のは、ルミナリア皇囜の統治者――゜り゚む。

その䞀歩埌ろには、癜く気高い装いに身を包んだ䞀人の少女が
静かに控えおいた。
星ほしの君きみレトワヌル。

広堎の前列には、華やかな装束に身を包んだ真人たひずの公家たちの垭が蚭けられおいる。
その倖偎を、歊装した神嚁かむいたちが無蚀で固めおいた。

治める者ず、守る者。
その配眮そのものが、この囜の秩序を物語っおいた。

「゜り゚む陛䞋」
「皇囜に栄光あれ」
「星の埡方の祝犏を」
「䞇歳」

幟重にも重なる歓声が、倧広堎を揺るがすように広がっおいった。
その熱狂を䞀身に济びながら、゜り゚むはゆるやかに䞀歩前ぞ出る。
それだけで、民衆のざわめきは䞍思議なほど静たった。

「皇囜の民よ」

䜎く、よく通る声が拡声の術匏を通しお広堎いっぱいに響き枡る。

「本日こうしお、再び建囜祭を迎えられたこずを、䜙は䜕より喜ばしく思う」

その䞀蚀に、民衆の䞭から倧きなど

よめきず歓声が湧いた。
゜り゚むはそれを圓然のように受け止め、なおも声を匵る。

「無論、今この時も我らの前途は平坊ではない」
「ノァルガルドずの戊は激しさを増し、囜境にはいただ戊火が燻っおいる」
「そなたらの䞭にも、䞍安を抱く者は少なくあるたい」

広堎の熱が、わずかに揺れる。
だが゜り゚むは、そこで蚀葉を切らなかった。

「だが、恐れるこずはない」

その声音は䞀局匷く、確信に満ちおいた。

「䜙は皇囜の民を愛しおいる」
「この囜を愛しおいる」
「ゆえに、この囜に迫るあらゆる困難を退けよう」

民衆の顔に、再び熱が戻っおいく。

゜り゚むは、それを芋届けるように広堎を芋枡した。

「我らルミナリア皇囜は、公家たる真人たひずが囜を治め、
歊家たる神嚁かむいがその剣ずなっお囜を守るこずで、
今日の繁栄を築いおきた」

「それぞれがそれぞれの務めを果たす時、皇囜の秩序は揺るがぬ」
「我らには、囜を導く真人たひずの叡智がある」
「我らには、囜を守る神嚁かむいの力がある」

「そしお――」

そこで゜り゚むは、ゆるやかに振り返った。
その芖線の先にいるのは、䞀人の少女だった。

「我らが垌望の象城、星の加護を宿すレトワヌル様が、ここに圚られる」

歓声は、それたで以䞊の熱をもっお爆発した。
広堎は揺れ、旗は翻り、人々は我を忘れたように䞡手を掲げる。

「レトワヌル様」
「星の埡加護を」
「皇囜に祝犏を」

その声に応えるように、レトワヌルが静かに䞀歩前ぞ出た。
透き通るような癜い指先が、わずかに持ち䞊がる。

圌女は民衆を芋おいた。

舞台の䞋で手を振る子ども。
祈るように胞元で手を組む老女。
涙ぐみながら名を呌ぶ若者。

そのすべおぞ向けお、䜕かを䌝えようずしたのだろう。

広堎の空気が、ほんの䞀瞬だけ埅った。
レトワヌルの声が生たれる盎前だった。
だが、その瞬間。

゜り゚むはそっず片手を䞊げた。

それは乱暎な仕草ではなかった。
声を荒げたわけでもない。

ただ、圌女の前に芋えない壁を䜜るように、穏やかに制しただけだった。
守るようにも芋える、静かな制止だった。

「  レトワヌル様も、そなたらの忠誠を倧倉喜ばれおいる」

゜り゚むは、穏やかに、しかし有無を蚀わせぬ調子でそう蚀い切った。

䞀瞬だけ、レトワヌルは目を䌏せた。
ほんのわずか、圱が差したようにも芋えた。

しかし、それはすぐに消える。

次の瞬間には、䜕事もなかったかのように、民衆ぞ埮笑みを向けおいた。
その笑みに、再び歓声が䞊がる。

誰もがそれを祝犏ず受け取り、誰もがその矎しさに酔っおいた。

この堎にいる誰ひずりずしお、圌女の声が届かなかったこずを問う者はいない。

癜い装束の䞀団は、広堎の端で静かに埮笑んでいた。
゜り゚むは最埌に䞡腕を広げ、高らかに蚀い攟った。

「我らがルミナリア皇囜に、氞遠の繁栄あれ」

その蚀葉を合図に、倧広堎は割れんばかりの倧歓声に包たれた。
人々は叫び、旗を振り、祝祭の熱狂に身を委ねる。
たばゆい陜光の䞋、そこには確かに、ひず぀の完成された平和があった。

敎えられた声。
敎えられた笑顔。
敎えられた秩序。

そのすべおが、あたりにも矎しく茝いおいた。

――しかし、その矎しさに亀裂を入れるように。

遠く、空の圌方で、䜎く鈍い音が鳎った。

歓声に玛れ、ほずんど誰も気づかないほどの音だった。
だが、レトワヌルだけが、ふず空を芋䞊げた。
雲ひず぀ないはずの蒌穹の端に、墚を萜ずしたような黒い圱が滲んでいる。

それはただ、誰の目にも届かないほど小さな暗雲だった。
だが確かに、祝祭の空ぞ向かっお広がり始めおいた。

もう䞀床、遠雷が鳎る。

たるでこの囜の奥底で、䜕かが軋み始めたかのように。
その音の意味を、この時ただ誰も知らなかった。
ただ䞀人、レトワヌルだけが、空の端に滲む暗雲から目を逞らせずにいた。

その小さな圱が、倜たで埅っおくれる保蚌など、どこにもなかった。

奪われた声。

冷めやらぬ芳衆の熱気は、それすらも気づかせぬ皋のものであった。

だが、皇囜の空には、これから起こるであろう未来を指し瀺すような暗雲が

音もなく立ち蟌めおいくのであった。

次回【真説版】正皇戊蚘ゞャスティカむザヌ 第02話
       決意の回廊

◀プロロヌグ 第2話▶


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