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Photo bygoldrush00

母、旅に出る。 第19話


    〜思わぬ同乗者と
       開通セレモニー〜


    黒部峡谷トロッコ列車へ向けて、再びバスに乗り込む。

    揺られること約2時間。

    ついに宇奈月駅へ到着した。

    ここから、9:42発のトロッコ列車に乗るらしい。

    時刻、細かい。


    もはや分単位で旅が動いている。

    そして出発まで、約20分。

    「よし、景色見よう!」

    そう言いながら、駅周辺を軽く散策する。

    山が綺麗。

    空気もいい。

    川の音まで心地いい。

    ああ、旅っていいなぁ——

    ……と思った次の瞬間。

    視界に入る。

    お土産売り場。

    吸い込まれるように入店。


    そして、また買う。

    さらにエコバッグへin!


    なんだろう。

    私のエコバッグ、空になっても最終的にはまた膨らむ運命らしい。

    まるで呼吸しているみたいである。

    今朝は今朝で、

    「この旅ももう終わりかぁ……」

    なんて少しセンチメンタルになっていた。

    旅の終わり特有の、あの寂しい感じ。

    でもその一方で、

    「今日はトロッコ列車だー!」

    という遠足前の小学生みたいなワクワクもある。

    感情が忙しい。


    しんみりしたかと思えば、

    次の瞬間にはお土産コーナーで真剣に物色している。

    ……なんて現実的なんだ、私は。


    でもたぶん。

    旅って、そういうものなんだと思う。

    感動もしながら、

    ちゃんと買い物もする。

    人生感と物欲は、

    案外いつもセットである。


    そんなこんなで、トロッコ列車の出発時間が
    近づき、集合場所へ向かった。

    すると——

    改札付近が、異様に騒がしい。

    ものすごい人。

    しかも普通の観光客ではない。

    よく見なくてもわかる。

    報道記者。

    カメラマン。

    テレビクルーっぽい人までいる。

    なにこれ。

    芸能人来るの?

    ……と思ったら。

    どうやら今日が、黒部峡谷トロッコ列車の
    “今年初の開通日”らしい。


    なるほど。

    だからこの騒ぎか。

    私は彼と顔を見合わせた。

    「私たち、持ってるねー」


    旅先でこういう偶然に当たると、
    ちょっとテンションが上がる。

    運気上昇中である。


    そして、いよいよトロッコ列車へ乗り込む。

    ……狭い。


    思ってた以上に狭い。

    私たちは張り切って1番前のシートへ座ったのだが、ベンチシートは4人掛け。

    振り向けば、すぐ後ろの人の顔がある。

    距離感が近い。


    かなり近い。

    これ、夏だったらちょっと大変だったと思う。

    季節に救われた。

    しかし、私は思った。

    せっかく最前列なんだから、
    窓を開けて風を感じたい。


    旅情を浴びたい。

    すると彼が、前方の窓を少し開けようとした。

    その瞬間。

    ポロッ。

    何かが落ちた。

    ……カメムシだった。


    つづく



    #創作大賞2026
    #コミックエッセイ部門

     
     

    SANBA

     
     
    人生はSANBAの如く、笑って揺れてたのしくあーれ♪ 明るさ自前、ソウルナンバー33を携えた50代。 日々の気づきや体験をエッセイや小説風に綴っています。 サクッと読めて、くすっと笑えて、少し余韻も。 いただいた質問は少しお時間をいただくことがあります。

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