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還暦祝いは終わらない5


    〜胃袋は正直だ〜


    プレゼントを渡し終えると、

    私たちは近所の焼肉屋へ向かった。

    外は雨。

    雨の日の出勤は憂鬱なのに、

    この日の雨はどこか楽しかった。

    還暦祝いの余韻に包まれながら歩く道は、
    雨までお祝いしてくれているような気がした。



    店に着くと、

    私はうれしくて完全に浮かれていた。

    「あれも食べよう。」

    「これも美味しそう。」

    気づけばテーブルは料理でいっぱい。

    しかし、胃袋は正直だった。


    「ほどほどにしとけ。」


    とっくに警告を出していた。


    これは食べきれない。

    私は店員さんに聞いてみた。


    「頼みすぎちゃって……。

    勿体ないので持ち帰れますか?」


    「もちろんです。」


    そう言って容器を持ってきてくれた。



    「このサイズで大丈夫ですか?」

    私は返事に少し迷った。

    すると店員さんは私たちの表情を見て、

    「あ、大きいサイズを持ってきますね。」

    と笑顔で言ってくれた。


    なんて気持ちのいい接客なんだろう。

    このお店は安くて、お肉も柔らかくて美味しい。

    しかも量が多い。


    悲しいことに50代と60代の胃袋は、

    詰め放題の袋のようには伸びてくれない。


    しかし、
    お持ち帰り用のパックは伸びしろがあった。


    店員さんはみんな笑顔で親切。

    ここのお店が平日にもかかわらず
    満席なのがわかる気がした。



    彼がぽつりと言った。

    「料理の美味しさだけじゃないね。この人気は。」

    私も大きくうなずいた。



    次に来る時は、胃袋と相談してから注文しよう。

    ……たぶん。



    もし注文に失敗したら、
    笑顔でパックをひとつお願いします。


    楽しい時間はあっという間に過ぎていく。


    ……しかし。

    まだ終わりではない。


    家ではホールケーキが私たちの帰りを待っている。


    首を長くして……

    いや、

    ろうそくを長くして待っている。

    ……これ、本当である。



    ろうそくは準備万端。

    準備は万端。

    胃袋だけが準備不足だった。



    つづく

    #創作大賞2026
    #エッセイ部門

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    SANBA

     
     
    人生はSANBAの如く、笑って揺れてたのしくあーれ♪ 明るさ自前、ソウルナンバー33を携えた50代。 日々の気づきや体験をエッセイや小説風に綴っています。 サクッと読めて、くすっと笑えて、少し余韻も。 いただいた質問は少しお時間をいただくことがあります。

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