
母、旅に出る。 第14話
〜いろんな喜びがある〜
ロープウェイを無事に乗り切り、
地面に右足が着いた瞬間——
私は静かに思った。
「……うん、生きてる」
大げさではない。
さっきまで宙に浮いていた人間にとって、
“地面がある”という事実はかなりありがたい。
「地球、ありがとう。」
こうして
無事、生還。
そして次に向かうのはーー
黒部ケーブルカー。
まだ乗る。
この旅、“絶景”と“乗り物”の圧がすごい。
乗っては移動し、
降りては感動し、
また乗る。
大人のアトラクション祭りである。
そして——
ついに。
とうとう。
やっと。
来てしまった。
黒部ダム。
目の前に現れた瞬間、
思わず全身で深呼吸したくなった。
空気が美味い。
なんだこれ。
肺が喜んでいる。
すると視界に入る。
ソフトクリーム。
絶景観光地には、
だいたいソフトクリームがある。
迷わず購入。
ふと周りを見回すとーー。
だいたいみんな
ソフトクリームを持っていた。
結構高いけど、買っちゃう。
あの景色の中で、
「私は食べませんよ」と冷静でいられる人。
たぶんそんなにいない。
ひと口食べる。
……美味しい。
いや、めちゃくちゃ美味しい。
どうしてなんだろう。
旅先で食べるソフトクリームって、
なぜか通常の1.8倍くらい美味しく感じる。
私は心の中で自分に言い聞かせる。
……これは黒部ダムのソフトクリームなんだ。
ただのソフトクリームではない。
ほら、ここに
ご当地クッキーが付いているだろ。
旅先では、
感情もクッキーもトッピングされるのだ。
つづく