
母、旅に出る。 第8話
〜残りものには福がある〜
バスに乗り込み、2日目がスタートした。
いよいよ本番。
立山黒部アルペンルートへ向かう、
ウキウキ乗り物ツアーである。
そして私は、昨日スーツケースに無理やり押し込んでいたダウンコートを取り出した。
今日、ついに出番らしい。
……とはいえ。
朝の時点では、そこまで寒くない。
むしろ普通。
なんなら少し歩けば暑い。
本当にこれ、必要?
いささか疑問ではあったが、
旅先で「いらないかも」と思った物ほど
後で必要になる。
人生と上着は、油断ならない。
ということで、ダウンコートは丸めてエコバッグへ。
結果ーーー
荷物、パンパン。
バッグの口が「もう無理です」と訴えている。
それでも出発である。
こうして、荷物量だけは冬山レベルの私を乗せ、
バスは走り出した。
まず向かうは、立山駅。
バスを降り、添乗員さんの説明を手短に聞いたあと、私は迷いなくお土産店へ向かった。
「もうお土産買うの?」
「うん、買うよ」
「お土産って最終日でよくない?」
「いやよ。行く先々でいろいろ見つけたいもん」
少し呆れ顔の彼。
わかっていない。
お土産とは、
旅の最後にまとめ買いする作業ではない。
旅の途中で“出会うもの”なのである。
一期一会。
たぶん。
私は店内を巡る。
見る。
手に取る。
戻す。
また見る。
この一連の動きに、女性は妙に強い。
旅行中に◯ターンやるのだろう。
なぜ女性は買い物が好きなのか。
永遠のテーマである。
たぶん理由は一つではない。
楽しい。
選べる。
比べられる。
そして“今買わないともう会えないかもしれない”という旅先特有の煽りがある。
冷静な判断力は、観光地で弱くなる。
ちなみに私は、旅行前に毎回お土産リストを作る。
誰に何を買うか。
完璧な計画表である。
しかし。
そのリスト通りになった試しがない。
現地に着くと、
「あ、この人これ好きそう」
「え、これかわいい」
「なにこれ美味しそう」
「私これ欲しい」
感情が会議を乗っ取る。
結果、最初のリストとはまるで違う現実が広がる。
でも、それでいい。
なぜなら私のお土産選びには、
明確な基準があるからだ。
それは——
自分がもらって嬉しいもの。
これに尽きる。
自分が嬉しくないものを、人に渡してどうする。
なので自然と、私の好きなものが増えていく。
そして旅の終盤。
これはあの人。
これはこの人。
そうやって分けていったあと、
最後に残るものがある。
そう。
私へのお土産である。
偶然ではない。
たぶん必然だ。

ほとんどが食べ物やん|( ̄3 ̄)|
つづく