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還暦祝いは終わらない3


    〜映ってる?〜


    予想外の行動だった。

    私はスマホを設置した場所を必死で思い出していた。

    カメラの画角は、彼が立っている状態で
    設定していたのである。

    ところが彼は座ってしまった。


    これでは画角からはみ出している
    可能性がある。


    私は笑顔だった。

    しかし心の中はヒヤヒヤしていた。


    せっかくの動画なのに、

    誰も映っていなかったらどうしよう。




    還暦祝いの記録どころか、


    「音声だけをお楽しみください」


    になってはいないだろうか。


    気になる。

    ものすごく気になる。


    しかし確認はできない。

    還暦祝いの最中だから。




    彼はカードを読みながら微笑んでいた。

    どうやら船に書かれた名前や、
    猫の名札にも気づいてくれたらしい。



    私はうれしかった。

    しかし同時に思った。

    その笑顔は映っているのだろうか。


    もはや還暦祝いより画角である。



    続いてカネゴンを渡した。

    「なんでカネゴン?」


    と聞かれたので、

    「カネゴンも今年還暦だから」


    と答えた。

    彼は声を出して笑った。


    よし。



    この笑顔も映っていてほしい。




    さらに生まれた年の雑誌を渡した。

    彼は興味深そうにページをめくり、

    当時の広告や記事を眺めている。


    頼む。


    映っていてくれ。


    私は平静を装いながら、

    心の中で何度も祈っていた。


    しかし確認する術はない。



    結果がわかるのは動画を見る時だけである。



    還暦祝いは続いているのに、

    私の頭の中では別の戦いが始まっていた。

    画角との戦いである。



    つづく

    #創作大賞2026
    #エッセイ部門

     
     

    SANBA

     
     
    人生はSANBAの如く、笑って揺れてたのしくあーれ♪ 明るさ自前、ソウルナンバー33を携えた50代。 日々の気づきや体験をエッセイや小説風に綴っています。 サクッと読めて、くすっと笑えて、少し余韻も。 いただいた質問は少しお時間をいただくことがあります。

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