
母、旅に出る。 第13話
〜景品側の人生を考える〜
そうして私たちは、ラスボス級の立山ロープウェイに乗り込んだ。
360度の大パノラマ。
美しい。
壮大。
そしてちょっと怖い。
景色を楽しみながらも、心のどこかではずっと、
「頼むから無事に着いてくれ」
という気持ちが流れている。
絶景と命綱が近い。
それがこのロープウェイである。
でも——
そのハラハラ感込みで、
なんだか妙に「生きてる!」って感じがした。
人は少しスリルがあると、
生を実感する生き物なのかもしれない。
そんなことを考えながら、ふと私は思った。
……ユーホーキャッチャーの景品って、
こんな気持ちなんだろうか。
少しだけ、景品側の気持ちがわかった気がした。
だが、よく考えたら。
あっちの方が
絶対スリリングである。
だって、あの金属の3本爪。
あれが突然、自分に向かって降りてくるのだ。
しかも最近のユーホーキャッチャー、
「30秒取り放題!」
とかある。
怖すぎる。
景品側からしたら、ほぼ災害である。
さらに運悪く掴まれたあとも大変だ。
上に揺られ、横に振られ、
「落ちる?落ちない?」
みたいなギリギリの攻防を延々やられる。
最後は暗い穴へ落下。
……世界観が怖い。
もしあれが人間だったらどうだろう。
私なら、掴まれた瞬間に気絶する。
もう無理。
恐怖に耐えられない。
気絶したまま、上下左右に振り回され、最後は落下。
でも幸い、気絶してるから落下の恐怖だけは回避できている。
いや、そういう問題ではない。
そもそも——
50代の身体で落下は、もう死を意味する。
恐怖でしかない。
にしても、怖い世界だ。
あれ、ゲームセンターには必ずあるけど、冷静に考えるとかなり狂気のシステムである。
そう思うと——
今こうしてロープウェイで揺れている程度、
まだ全然マシだ。
ユーホーキャッチャーの景品たちの気持ちに比べたら、雲泥の差である。
ああ。
人間として生きていて、本当によかった。
つづく