
還暦祝いは終わらない11
〜最終回
おしくらまんじゅう寿司〜
彼はフィギュアを満足そうに眺めていた。
私はスマホを取り出した。
「そうそう、これ見て。」
彼が画面をのぞき込む。
「ええー!どうしたん?」
私は少し照れながら答えた。
「気づいたら、
自転車のカゴの中で立ってた。」
そう。
お寿司の入れ物は90度に立っていたのである。
お寿司たちは、全員。
片側へ大集合していた。
しかも、
ぎゅうぎゅうである。
まるで、
おしくらまんじゅう状態だった。

彼は写真を見て笑った。
「押し寿司みたいだね。」
優しいひと言だった。
……でも、ちょっと切ない。
今日こそは、
完璧だと思っていたから。
さすがにこのままでは出せない。
私は急いで修復作業に取りかかった。
ネタを戻し、
向きを整え、
「たぶん最初からこうでした。」
という顔をさせる。
そして完成したのがこちら。

なんちゃってお寿司 復刻版である。
よく見ると、
それぞれが大冒険から帰ってきたような顔をしている
思い返せば、
今回の還暦祝いは、
予定どおりに進んだことが、
ほとんどなかった。
カネゴン探し。
生まれた年の雑誌。
ホールケーキ。
プレゼントのネタバレ。
台風。
届かなかった本命プレゼント。
そして、
おしくらまんじゅうになったお寿司。
それでも、
ひとつひとつが、
今では全部笑い話になっている。
私は思う。
予定どおりに進んだ日は、
一日もなかった。
でも、
思い出だけは、
予定以上に増えていった。
だからきっと、
これから先も、
また何かやらかすのだろう。
でも、そのたびに、
「また一つ、笑える思い出が増えたね。」
そう言って笑えたら、
それでいい。
その日の夜、
彼からLINEが届いた。
「ありがとね💕
一生大事にしますね〜
嬉しすぎる」
私はその文章を見ながら、
思わず笑った。
あぁ、還暦祝いは大成功だった。
還暦祝いは、
本当に終わった。
……たぶん。
おしまい
最後まで読んでいただきありがとうございました
(*´꒳`*)