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還暦祝いは終わらない 10


    〜還暦祝いは、やっと終わる〜


    ついにフィギュアを渡す日が来た。

    私は箱を抱えながら、
    なんだか自分のほうが緊張していた。

    今回はちゃんと彼に許可をもらっている。

    「動画撮っていい?」

    「いいよ。」

    今度は隠し撮りじゃない。

    堂々と撮影開始である。

    箱を手渡す。

    「開けていい?」

    「どうぞ。」


    ゆっくりフタが開く。

    ……

    数秒、沈黙。



    そのあと彼の表情が少しずつ変わった。

    「えっ……。」

    「これ……俺?」


    箱の中には、

    還暦同窓会で幹事を務めた彼の姿。

    スーツ姿でマイクを持ち、

    赤いハートの台座の上に立っている。

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    待ちに待った これがフィギュアです。


    私はあの日の彼を、

    そのまま形に残したかった。

    ……同窓会で見たわけじゃないけど。

    しばらくフィギュアを眺めていた彼が言った。

    「すごい……。」

    「こんなの初めてもらった。」


    その一言で、

    私は何日分ものドタバタが全部報われた気がした。



    カネゴンを探し回り、

    生まれた年の雑誌を探し、

    ホールケーキを電車で運び、

    プレゼントの正体を口を滑らせ、

    台風に振り回され、

    予定どおりに進んだ日は、

    一日もなかった。


    でも、

    思い出だけは想像を遥かに超えた。



    私は思う。

    完璧な誕生日なんて、

    案外つまらないのかもしれない。


    少しくらい失敗して、
    ……結構失敗多めだけどね。

    少しくらい笑って、
    ……あごが外れそうなくらい笑ったな。


    最後に

    「生涯心に残る誕生日だった。」


    そう思ってもらえたなら、

    それが一番のプレゼント。

    そうして還暦祝いは、

    やっと終わった。


    ……と思った。


    そうそう。

    肝心なお寿司の話を忘れていた。


    私は深呼吸をひとつした。



    そして彼に言った。

    「実はね……。」


    つづく


    #創作大賞2026
    #エッセイ部門

     
     

    SANBA

     
     
    人生はSANBAの如く、笑って揺れてたのしくあーれ♪ 明るさ自前、ソウルナンバー33を携えた50代。 日々の気づきや体験をエッセイや小説風に綴っています。 サクッと読めて、くすっと笑えて、少し余韻も。 いただいた質問は少しお時間をいただくことがあります。

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