
母、旅に出る。 第9話
〜雪の大谷、時間との戦い〜
集合時間になる頃には、
私のエコバッグはすでに
そこそこパンパンになっていた。
中身は、さっき出会ったお土産たち。
……この子たちと、旅を続けるのか。
ふとそんなことを思う。
ほんの少しだけ、
“子連れ旅行”の気分が芽生えた。
全員、無口だけど。
そして私たちは、添乗員さんの旗を目印に、
2列で進む。
……完全に遠足である。
大人になっても、列を組むと人は
一瞬で小学生に戻る。
ふと前を見ると、
私と同世代くらいの女仲良し3人組が、
2人ずつで写真を撮り合っていた。
いいなぁ、その感じ。
すると隣の彼が言った。
「撮りましょうか?」
ナイス提案。
こういうちょっとした優しさが、
旅の空気をやわらかくする。
その後のやり取りは、
たぶんいい感じだったはずである。
記憶はふんわりしている。
さて。
傾斜のきついホームに並び、
ケーブルカーに乗り込む。

車内——ギュウギュウ。
大人たち、無言で圧縮される。
そのまま運ばれて、美女平に到着。
そしてすぐに次の乗り物、
立山高原バスへ乗り換え。
忙しい。
乗り物のリレーが激しい。
窓の外を見ると、景色がどんどん変わっていく。
さっきまで普通の風景だったのに、
気づけば一面の雪。
え、切り替わり早くない?
ループでもした?
スイッチでもあった?
一気に“雪国モード”に突入する。
不思議だ。
そして到着、室堂。
ここが今回のメインイベントーーー
雪の大谷。
……なのだが。
ここで課せられるミッションがこちら。
・お弁当を食べる
・雪の大谷を歩く
・必要ならお土産を買う
制限時間——1時間。
いや、詰め込みすぎじゃない?
メインイベントにしては、
時間割がスパルタである。
でもやるしかない。
私たちは外へ飛び出した。
つづく
#創作大賞2026
#コミックエッセイ部門