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医学部の外に、居場所をつくった話

私は、もともと医学そのものに強い興味があったわけではありません。

医学部に入ったからといって、医学だけを学び、医療関係者だけと関わって生きていきたいとは思っていませんでした。むしろ、それ以外の世界を知る必要があると感じていました。

その気持ちをさらに強くしたのが、大学に入ってからの人間関係です。

正直に言うと、私は医学部の内輪のノリが嫌いでした。

もちろん、これは私がいた環境についての話です。その環境を楽しめる人もいるでしょう。ただ、私にはどうしても合いませんでした。

狭い世界の人間関係が、しんどかった

私が進んだのは単科の医科大学でした。

先輩と後輩の上下関係。誰と誰が付き合った、別れたという話。外に向けて発信する場面でさえ、身内にしか通じないネタで盛り上がる。

そうしたことが、そのコミュニティの中では大きな意味を持っているのかもしれません。しかし、私にはどうしても、それほど重要なことだとは思えませんでした。

大して面白いと思えないイベントのために、強制的にお金を徴収されることにも、納得できませんでした。支払いを拒んだ同期が、その後、先輩たちに囲まれていたこともありました。

一部の体育会系の部活には、辞める際に教授を含むOBの幹部全員へ挨拶に回る慣習まで残っていました。

部活を辞めるのに、なぜそこまでしなければならないのか。

その世界では当然とされていることが、私にはひどく不思議でした。不思議というより、気持ち悪いと感じていたのが本音です。

これを愚痴や負け惜しみだと言われれば、そういう部分もあるのかもしれません。

ただ、合わないものは、合わないのです。

学生のうちから、世界を狭めなくてもよい

これは、単科大学だけの話でもありません。

総合大学の医学部でも、医学部だけ、あるいは医歯薬系の学生だけで構成され、他学部の学生が入れない部活やサークルがあります。

もちろん、そうした場所に所属するメリットはあります。先輩から受け継がれてきた試験の資料をもらえたり、同じ道に進む人から助言を受けられたりする。そのつながりに助けられる場面もあるでしょう。

ただ、それでも私は思うのです。

医師になるのであれば、医療の外に意識的に出ていかない限り、働き始めてからの人間関係は医療関係者が中心になります。放っておいても、医師という狭いコミュニティに戻ってくるわけです。

それが分かっていながら、学生の間から人間関係の枠を狭める必要があるのでしょうか。

以前、ある教授が、学生時代の部活の試合で知り合った他大学の人と、医師になってからも学会で再会して飲みに行けるから、部活はよいのだという話をしていました。

長く続く友人関係があること自体は、よいことだと思います。

ただ、その「他大学の人」も、もちろん医学部の人です。大学の枠は越えていても、医療の枠は越えていません。

それを部活の魅力として語られても、私には響きませんでした。むしろ、この先もずっと医師同士のつながりで完結するのか、と感じてしまったのです。

私が求めていたのは、違うことを学び、違う道へ進む人たちとの関わりでした。

隣の大学に行ってみた

そこで、隣にある総合大学のインカレサークルに入りました。

振り返っても、これは行ってよかったと思っています。

理由は単純です。色々なことを学んでいる人と関わるのが、面白かったからです。

医学部の中では、学ぶ内容も、将来の職業も近い。一方、総合大学には、自分とは異なる分野を学んでいる人がいます。

自分が勉強していないことを、日々学んでいる人と話せる。それだけでも、私にとっては外へ行く意味がありました。

何か将来に役立つ人脈をつくろうとか、医師として有利になろうとか、そういう目的がなくてもよいのだと思います。

自分とは違うことを学ぶ人と関わる時間は、それ自体が面白い。

「視野を広げる」と言うと、少し立派な話に聞こえます。しかし、当時の経験を言葉にするなら、知らない世界の人と関わってみたかったし、実際に関わると楽しかった、ということです。

医学部の人間関係が合わないからといって、人付き合いそのものを諦める必要はありませんでした。私の場合は、隣の大学に行くことで、別の居場所を持つことができました。

医療の外にも、人間関係を持っていたい

医療の中で長く働くうえで、同業者とのつながりが役立つことは分かります。その価値を否定するつもりはありません。

ただ、私には外の人間関係も必要でした。

そして今は、学生時代とは別の意味でも、その必要性を感じています。

以前の記事でも書きましたが、私は、医業だけに専念していれば将来も安泰だと考えられる時代は、急速に終わりつつあると見ています。

だからこそ、仕事も収入も価値観も、医療の中で通用するものだけを前提にせず、外の世界を知っておきたいのです。

もっとも、学生時代の交流を、すべて将来への備えとして説明する必要もないでしょう。損得を抜きにしても、違う分野の人と話せることには楽しさがあります。

学校や職場は、生活の中で大きな割合を占めます。しかし、そこに所属していることと、そこで人間関係を完結させることは、別の話です。

私がしたことは、隣の大学のサークルに入るという、小さなことでした。医学部の文化を変えたわけでも、周囲を説得したわけでもありません。

それでも、自分が関われる人の範囲は広がりました。

これからも医療の仕事をしながら、医療の外にいる人とも関わっていたいと思います。

自分の知らないことを学び、自分とは違う世界で生きている人と話すのは、やはり面白いですから。

そのつながりが、いつか自分の人生を助けてくれることもあるかもしれません。

まずは、面白そうだと思う世界に顔を出してみる。それくらいの理由で、外に出てもよいのだと思います。

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