
梅シロップ?|雑サメ。〜勇者の隣で普通に暮らす……多分♯59|第10章 そういう配置(だいたいお出かけ編)
―― 世界はポリゴン。ご飯は正常(多分)。一国につき解像度の高い男女が一組。
そして女神は何も答えない。――
街の炊き出し場にて、いつも通り集まったメンバーと野菜の皮むき。
お湯を沸かす音と、器具が当たる音。米を研ぐ音が耳の中で混ざる。
「女神像?あの丘の?」
「シオリちゃんそんなの見てたんっすか?ヤブ蚊刺されてません?」
炊き出し娘さん達が、人参の皮を剥く手を止めて高い声をあげる。
「あ、うん大丈夫だったよ」
「像の顔ねえ。シオリちゃんそれ気にしなくて良い奴よ」
おばちゃん達もコクコクと頷いた。
「あそこずっとあんなだし?」
「雨とか?」
「風とか?」
「子どものイタズラとか?」
「まあ私らには関係ない」
「そうなの?」
シオリも、ピーラーを動かす手をピタと止めた。
「けどさー、今の神殿にはなんで女神像ないの?普通あるよね」
ふと思い出したように、一人が口にする。手元は止まらない。
「え、ないの?」
「多分、それも気にしなくて良い奴よ」
「神殿のことなんて、考えてもねえ」
「それより助けて。ごぼうの泥ってどこまで取ればいいの?」
「……迷うやつだね」
「白くしちゃえばいいじゃない」
「栄養までこそげちゃうかな?」
「うーん。あ、ごぼう茶飲む?」
「「「それだ!!!」」」
シオリはそっと、おばちゃんの横にタワシを追加で置いた。
◻︎◻︎
その日の深夜。
神殿の食堂に静かにあかりが灯る。
立ち寄ると、シスターLが透明な瓶を台所のカウンターに乗せていた。
茶色っぽい液体に、何かが浸かっている。
「シスターL、なあにそれ?」
「あら、バレてしまいましたか」
そう言うと、いそいそとコップへ一口分ずつ注ぎ、瓶を床下にしまう。梅の爽やかな匂いがした。
「どうぞ」
渡された果肉は柔らかく、食欲すら誘った。
言われるがまま、シオリは口にそれを運んだ。
◻︎◻︎
気がついたら脇の辺りが圧迫されてる気がする。
お尻から下が摩擦される。
「え?え?」
「気がついたか?」
見上げるとミカルと目が合った。
「シスターLに呼ばれてお前の部屋に運んだ」
……これは、両脇を抱え上げられ引きずられているのでは?
「介抱されてるみたいだから文句言うのもなんだけど、普通はここ、お姫様抱っこじゃない?」
「食堂からここまではもうやった」
「はあ!?」
「ソファからベッドの距離なら、これで十分だろ」
「いやいや、スカート脱げる!パンツ脱げる!」
「じゃあ立つんだな。それだけでかい声が出せるなら、もう大丈夫だろ」
ミカルはシオリを引っ張り立たせた。
ととん、と身体と足先が左右に揺れる。頭の中でカーニバルが鳴ってる。ふわふわして気持ちいい。
「私のスカート無事?パンツ見えてない?」
「平気だろ。暗いし」
「何それ。笑うんだけど」
支えてもらいながら手探りで移動する。
姿勢が上手く保てない。多分へっぴり腰。
さらりとコシのある金髪がシオリの頬をかすめた。耳裏にいつも隠れてる、ピンクのインナーカラーが目に付いた。
「シスターLは?」
「シスターLか。顔が赤かったな」
「私、何か飲んだことしか覚えてない」
何を飲んだんだっけ。
甘い匂いのいい飲み物。
ミカルもいい匂いがする。
違うな。今日に限らずずっとだ。
「ベッド着いたぞー」
膝にほわっと当たる、ベッドの柔らかい感触にほっとして、「いとしのオフトーン!!!」とシオリは頭からダイブする。
布団にくるまってゴロゴロした。
これでパンツは守られた。
「お前、そのうち歌い出すんじゃないか?」
「いーの。こんな日もあるの」
「明日、ゲロ吐く準備しとけ」
ミカルは頭をかきながら、ソファの方へ歩いて行った。