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#9 手術まで|乳がんと再建キロク

手術の朝

朝6時。
看護師さんの足音で目が覚めた。

前日、眠れなかった影響もあったのかもしれない。
一人きりの病室だったからかもしれない。
スッキリした目覚めではないが、眠れた。

今は、他人に気兼ねする必要がないので、布団の中でグダグダしながら、体温を測る。

今日は、絶食。
とはいえ、まだ水は飲める。シャワーの予約も必要ない。
まだ、布団の中でゴロゴロしていてもよかったのかもしれないが、少しだけエンジンをかけるため、お湯をもらいに病室を出る。

窓の外は、昨日と違って雪景色。

今日は手術。
自分の思考が、少し止まっているような感じがする。
でも、世の中の日常は変わらない。
街はいつも通り、朝を迎えている。
それに気づき、少し我に返る。

くぅ〜。手術。
なんとも言えない、変な気分。

朝ごはんがわりに白湯を飲んで、喉を潤す。
手術は午後。まだ時間がある。
やることもないので、身支度を済ませておこうと、顔を洗い、歯を磨く。
そして、着替える。

パンツはこの日のために用意した、使い捨ての紙パンツ。
2枚1組なので、もう1枚は手術用の荷物にある。
エステとかの頼りない使い捨てパンツとは違った。
紙とは思えないくらい作りもしっかりしている。ギャザーが効いていて、フィット感がいい。覆っている面積も大きめなので、なんだか暖かい気がする。
難点があるなら、柄が好みではないくらいかな。
手術前に、使い捨てパンツの履き心地を確認している場合ではないのだが。


今日の任務

9時過ぎ。
形成外科と乳腺外科の回診。
手術ということもあって、体調確認だけして終わる。

その後、担当の看護師さんが来た。
今日のスケジュールを聞き、荷物も再度確認する。
手術は、午後3時ぐらいからとのこと。
まだ数時間ある。

「手術の後、5時間経過したら歩いてもらいます」
そう言われる。
「え? 歩く?」

歩けると思うけど、わざわざ説明されるということは何かあるのかな?
と言っても、手術前に、術後の話をされてもいまひとつ想像できない。
理解していなさそうな顔をしていたのか、看護師さんは、術後に歩くことは合併症を防ぎ、回復を早めるためだと教えてくれた。
それなら、歩いてやろうじゃないか〜!と意気込む。が、まだ手術前。
最後に、11時には点滴するので、今日は病室で過ごすように言われる。

まだ、10時前。
手術までにやっておきたいことがあった。

昨日、歯が欠けたので、歯医者の予約だ。
術後の調子はわからないので、動けるうちに、そしてお正月休みに入る前に、予約を入れたかった。病室では電話できないので、病室を抜け出し、電話をかけられる場所へ行く。

いつ退院できるか、まだわからない。
そして、年明けすぐには職場復帰していないだろう。そんなことを考え、平日の午前中に予約を入れた。
術後の体調がどうなっているかなんて、考えずに。ま、調子悪かったら、その時だ。

今日の個人任務終了。


新しいルームメイト

部屋に戻ると、斜め向かいのベッドには、シーツが整えられ、名札がかかっていた。
新しい入院患者さんが来るようだ。
なんだ。
一人きりの時間は、1日だけだったか。

看護師さんにオーバーテーブルの荷物を片付けるように言われていたので、片付ける。そして、水分を取れる時間が迫っていたので、制限ギリギリまで水を飲む。
あとは、今はもうやることがないので、スマホを眺めて過ごす。

しばらくすると、廊下から声が聞こえてきた。
だんだんこの部屋に近づいてきて、部屋に入ってきたのは、看護師さんと新しい患者さんだ。

よく通る、可愛い声。
ちょっと、知り合いの声に似ている。
看護師さんの細かい説明はなかったので、初めての入院ではなさそうだった。
看護師さんがいなくなったあとは、荷解きをする音がカーテン越しに聞こえてくる。

あぁ、二日前の私も、こんな感じで聞こえていたんだろうな。
まだ顔を合わせていないけど、今度は同じ病室の人と、挨拶くらいは対面でできたらと思った。

あれ?

本当は、入院初日に病室の先輩方に挨拶するものだったのかな?
いやぁ〜、その辺の作法がわからない。
今更ながら、ちょっと焦る。
誰か教えて〜。

そんなことを考えているうちに、今度はこちらに看護師さんがやってくる。

点滴の時間だ。
腕に点滴を入れられると、一つ病人になった気分だ。
トイレに一緒に行く相方ができた。
針も、柔らかいのね。と思った。

斜め向かいのベッドから、いい匂いが漂ってくる。

やっと昼になったのか。
お腹空いた。
絶食、結構辛いかも。

そんなことを思いながら、再びスマホを眺め、漫画を読む。
読んでいたのは、『警部補ダイマジン』

今、それ読むんかい。

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