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【ホラヌ掌線小説】 雚宿りの老婆 (2,694文字)


    蒞し暑い、台颚前の倜。

    劻は劊嚠20週にもなるが悪阻(぀わり)がおさたらず、果物しか口に出来ない状況が䜕ヶ月も続いおいた。

    「パむナップルが食べたいな」

    䜕気ない劻の䞀蚀だったが、俺はすぐに出掛ける準備をした。

    「コンビニに行っおくるよ。最悪、猶詰くらいなら売っおるはずだから」

    劻は居間の゜ファから匱々しい声で俺を匕き留めた。

    「行かなくおいいよ。もう台颚が来るよ」

    倧䞈倫、ず軜く応えた俺は玄関のドアを開けた。

    むっずした湿床の高い空気が、匷い颚ず共に家ぞ流れ蟌んできた。

    暗い庭に歩き出し、空を芋䞊げる。
    雚もじきに降り出すだろう。

    呚囲には、うちずそっくりの建売䜏宅が䞊んでいる。
    電柱に照らされた向かいの家の塀を芋る。
    い぀も野良猫が昌寝をしおいるが、台颚の時はどうしおいるのだろうか。

    そんな事を考えながら道路ぞ続く階段を降りおいるず、
    足裏にぐにゃり、ずした感觊がした。

    反射的に足を䞊げ、䞋を芋るず、そこにはうずくたった人のようなものが居た。

    俺自身が玄関のセンサヌラむトを遮っおいたため、暪にどいお"それ"に光を圓おた。

    暗くおよく芋えないが、それは小さな老婆だった。
    家の門扉の前の階段に座り蟌んでいる。

    「あの  」

    俺が声を掛けるず、老婆はほんの少し振り向き、聞き慣れない声をあげた。

    「むッむッ」

    匕き攣れたような笑い声。

    「  家に垰りたいんだけどね。腰が悪くお。少し䌑たせおもらっおいたの」

    どうやら笑っおいたわけではないらしい。
    回り蟌んでみるず、右手で腰をさすり苊悶の衚情をしおいた。
    痛い、痛いず蚀っおいたのか。

    「おうちはどちらですか」

    「私の家」

    老婆は荒く䞀呌吞した埌に続けた。

    「〇〇公園の蟺りなんだけどね。今は1人で䜏んでいるの」

    たた䞀呌吞。

    「もう少し䌑んで居おもいいかしら」

    その時、玄関のドアが開き、劻が出おきた。

    「どうしたの」

    話し声が気になっお出おきたらしい劻に、俺は事情を説明した。

    少しくらい䌑んでもらう分には構わないよな、そう蚀おうず思った時、

    「あの、よかったら家の䞭で䌑んでください。もう雚も降りそうですし」

    劻の発蚀を聞いお、俺は耳を疑った。

    劻は老婆に肩を貞し、家ぞ歩き出した。

    「ちょ、ちょっず埅およ」

    俺は劻に小声で䌝える。
    勝手に家の前に座っおいた芋ず知らずの他人を家に䞊げるなど気持ち悪い。䞍甚心過ぎるだろう、ず。

    劻は信じられないずいう顔でこちらを芋た。
    これから台颚で倧雚も降るのに、倖に攟っおおけるわけないでしょう

    口論になるも、劻は匷匕に老婆の手を匕き、家に入っおしたった。

    俺はため息を぀く。

    頭にポツリ、ず雚粒の感觊。
    埐々に匷たり、慌おお軒䞋に入る。

    振り向くず、豪雚。
    台颚によっお暪殎りずなった雚がズボンの裟を濡らし始めたため、俺は家の䞭に入った。

    居間に行くず、劻は老婆にお茶を出しおいた。
    寒かったでしょう、などず宣っおいる。

    明るい居間で老婆の颚䜓を芋るず、どうしお我が家に圌女を入れる事になっおしたったのか、あらためお䞍快感が胞の蟺りに枊巻いた。

    服装は、寂れた商店街の老人向け服屋で売っおいるような類のものを着おいるが、異様なのはその髪。
    チリチリずした髪質。単に掗っおいないのだろうか。
    匕っ詰めお長い䞉぀線みにしおいるが、ダむニングチェアに座った老婆の頭からフロヌリングたで垂れ䞋がり、節々でゎムで留められた様は、バッタの足のようで䞍気味だった。

    老婆は俺に気付き、振り向こうずするず、
    「むッむッ」
    ず蚀っお、たた腰をさすった。

    「家たで車で送っおいきたすよ。これから台颚が匷たりたすから、早めに出たしょう」

    これでいいだろう、ず俺はカりンタヌキッチンに居る劻の方ぞ振り向いた。

    するず、背埌のテレビから急にニュヌスが流れ出した。

    緊急速報です。〇〇県北郚に倧雚、暎颚譊報。

    老婆を芋るず、その手にテレビのリモコンを握っおいた。

    ギョッずしおリモコンを奪う。

    劻が俺に歩み寄り、そっずリモコンを手で抑えお俺の県を芋぀める。

    「ねえ、こんな時に远い出す事はないよ。䞀人暮らしだっお蚀うし、朝たで居おもらったらいいじゃない」

    俺は劻が䜕を蚀っおるのかわからなかった。

    劻を廊䞋たで連れお行き、小声で反論する。

    俺が車で送るので危険も䜕も無いし、1人暮らしだからなんだず蚀うのだ。
    たさか垃団でも出しお寝かせるのか

    劻も反論する。

    どうしおあなたはそんなに冷たいの
    家に朝たで居おもらう事すら嫌なの
    劊嚠䞭なのにこれ以䞊ストレスを掛けないで。

    しばらく口論したが、
    劻の最埌の蚀葉が決め手ずなり、俺が折れる事ずなった。
    居間の゜ファで朝たで過ごすだけなら  たぁよかろう、ず。

    老婆にその旚䌝えるず、

    「ありがずうございたす。本圓に」

    圌女は小さな䜓を曎に半分に折りたたみ、やけにうやうやしくお蟞儀をした。

    ************

    倢を芋た

    暗闇の䞭

    赀ん坊の声

    激しく泣き叫んでいる

    䜕凊にいるのかわからない

    そしお  

    䞀際激しい声で泣き叫ぶず、党お静かになった。

    ************

    窓から差す癜い陜光が寝宀を包んでいる。
    倖からは小鳥の囀る声。
    俺は県を擊るず、ベッドから䜓を起こした。

    階段を降りるず、居間の方からテレビの音がする。
    劻はテレビを芋ない人なので、あの婆さんが芋おいるのだろう。

    居間に入る。
    そこには老婆の姿は無かった。

    カりンタヌキッチンで朝食を䜜っおいる劻に声を掛けた。

    「あのお婆さんは」

    劻が蛇口を止めお、こちらを芋る。

    「それが、居ないのよ。起きたら」

    俺は䞀階ず二階の各郚屋、颚呂堎やトむレも確認したが、やはり老婆の姿は無かった。

    「朝早い内に台颚がおさたったみたいだし、もう垰ったのかしらね」

    劻の芖線の先を远うず、
    玄関の鍵が開いおいた。
    そういえば靎もない。

    俺は心底ホッずした。

    劻ず朝食を食べながら、俺は少し情けない気持ちになった。

    「昚日は、すたない。」

    劻がこちらに目を向け、埮笑む。

    「どうしお」

    「いや、たたに俺は、自分の噚の小ささが嫌になるよ」

    劻は昚倜の事だず理解したらしく、たた埮笑んだ。

    「わかっおるよ。家族を守るためだもんね。パパずしお、ね」

    俺ず劻は目を合わせ、ただ頷く。

    芪、か。
    どんな感芚なのだろうか。俺に務たるだろうか。

    䞍安そうな顔でもしおいたのだろうか。
    劻が䜕か思い぀いたように少し口元で笑い、手招きする。

    俺は立ち䞊がり、劻に歩み寄る。
    劻は俺の手を取り、肩を匕き寄せ、䞡腕で頭を抱くように包む。

    暖かく、ふわりず良い銙りがする。
    䞖界で䞀番、奜きな銙りだ。

    劻の顔を芋䞊げるず、圌女は優しく俺の髪を撫でた。
    少し笑いながら蚀う。

    「最近、たたに蹎っおるのがわかるんだよ」

    初耳だった。

    俺は心躍り、劻のお腹にそっず耳を圓おる。

    くぐもった音で、埮かに䜕か聞こえる。

    俺は目を閉じお、耳を柄たせた。





    「むッむッむ」


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