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彼らがふにゃオスを馬鹿にしたとき、私は声をあげなかった。

    はじめに

     先日、「死ぬ程キレ症の俺がVRCHATを始めた」に関するnoteを投稿した。それなりに反応されて嬉しい限りである。
    あんな記事を書いておいてなんだが、悪口本舗氏にあまり興味がない。彼の記事がそこまで面白いと思えないからだ。

    彼は自分が言及された記事のかなり多くにコメントを残している(それは良いと思う。オタクの自意識っぽくて)が、その多くが「いいね。」とか「面白かった。」「効いた。」みたいな書き出しなのがどうも気になる。noteなんか書いているオタクは大概君の敵ではないのか。罵倒されてるんだから罵倒で返したらいいのに。名前負けしてないか?
    指摘を真正面から受け止めるでもなく、なんとなく馴れ合いに持ち込もうとする感じが加藤純一みたいだ。

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    当人も好きっぽいし。

     等々の理由で、彼自身については「底が見えてんな」としか思えず、これ以上言及しないと思う。またバズったら乗っかって記事書くかもしれないけど。


    しかし、彼が起こしつつあるムーブメントは、VRCに潜む病巣を浮き彫りにした。


    最近、苛烈な悪口を読みました。長々とした文にも関わらず読ませる文章、その全方位への攻撃力たるや。悪口って書いていいんだなぁと思いました。なので書きます。タプタプと。

    『VRChatter、キモ。』冒頭部分より

    さて、今現在VRChatの界隈を騒がせている投稿が存在する。「悪口本舗」というユーザーによるVRChatに対するぶっちゃけた感想だ。彼の言い分をめちゃくちゃ簡潔にまとめると「VRChatはコミュ障と社会不適合者のゴミ溜めであり、その中に健常者がたまに混ざっている」という感じだ。これは私自身の解釈も含まれているため本人はこんなこと思ってもないかもしれないがちゃんと彼の投稿を全て読んだうえでこの解釈となった。そのうえで彼の意見に賛成である。
    つまりだ。今からここに書く文言はすべて毒だ。VRChatをしているすべての人間に右フックを入れる勢いだ。右フックを入れられる覚悟がある者のみとは言わないが否定的な意見が多くなることを了承したうえで読んでほしい。

    『VRChatを600時間やって思ったこと』冒頭部分より

     引用が面倒なのでとりあえず二例に留めておくが、この手の文章が氾濫しつつある。悪口本舗憧れ系とでも言おうか。感情的に悪口を言えば面白くなるのだという風潮はインターネットをつまらなくする。罵倒にもセンスはいるのだ。

     「つまんねー文章ばっか書いてんじゃねえよ」と文句を言いたいわけではない。それよりもずっと重大な問題を彼らは抱えている。


    彼らに共通しているのは「ふにゃオス」という属性への差別的言動である。

     先ほどの記事から重ねて引用しよう。

    ふにゃオスじゃありません!っていうやつもいたな〜。自認なんて聞いてねんだわ。私のこの意見も、ふにゃオスと同じく多様性だろ?自分が都合悪くなった時だけ否定すんの?一貫性も無いくせに一丁前に性欲だけあるの?ちんこ立ててるフェミニストみたいで情けねえなあ。見てらんねえよ。

    自覚持て。お前は異常者で、嫌悪される存在なんだよ。隅っこで霞食って息してろや。まともに社会を生きてる人間の慈悲とおこぼれを啜ってるんだろ?生きてていいから立場を弁えてろ。

    『VRChatter、キモ。』より

    Q.ふにゃおすってなに?A.ゴミ
    まずふにゃおすとは何か。ふにゃふにゃしたオス。つまり弱者男性の中でもさらに階層の低い底の底。生態ピラミッドの最下層の男ども。略してふにゃおすだ。はっきり言おう。カスであると。

    『VRChatを600時間やって思ったこと』より


     こんなこと言っていいわけないだろ。


     
    現代倫理というものを全く置き去りにしてしまった方々にお伝えしておくと、属性を理由にカスだの嫌悪される存在だのと罵倒することは「差別」なのだ。当然の話である。
    これをLGBTQや障碍者、特定人種や職業に置き換えて読んでみてほしい。この手の言説がいかに差別的かを理解できるはずだ。

    「生理的嫌悪」は免罪符にならない

     実際、VRCには「ふにゃオスヘイター」がそこそこの数生息している。筆者はそういう人たちに出会うたびに、それが差別的言動であることを指摘している。

     彼らの言い分はこうだ。
    「だってキモいじゃん。俺がそう感じるのは自由でしょ」
    「生理的に無理」

     論外である。そもそも属性に対してキモい、という感情を抱くことは差別的なのだ。「女性だからキモい」や「黒人は生理的に無理」と述べることが批判を免れないように。この手の人間はそこまで深く考えていないだけだ。「弱者」とラベリングされないと理解できない彼らに、やはり啓発を続けていくしかないのだ。「それは差別だ」と滾々と話すと、5割ほどの人はわかってくれる。
    また、こういう返事をされる場合も多い。

    「前にふにゃオスがパブリックでイチャついてるのを見た」
    「フレンドのフレンドにふにゃオスがいて、距離感がバグっててキモい」

    彼らの主張は、ある致命的な論理の飛躍——あるいは意図的なすり替え——を孕んでいる。  
     それは、「個人の行動の問題」を「属性の問題」にすり替えているという点だ。

     確かに、VRChatには迷惑なユーザーもいるだろう。距離感がバグっている、性的なアプローチが不快、会話が成立しない……。そうした「行動」に対して批判を行うのは正当だ。その個人がブロックされるのも、コミュニティから弾かれるのも、自業自得である。
     しかし、「迷惑な/キモいふにゃオスがいた」という事実から、「ふにゃオスという属性そのものが悪である」と結論付けるのは、論理として破綻している。

     気持ち悪くない「ふにゃオス」もいれば、社会的地位がありながらセクハラを働く「コミュ強(と自称する人々)」もいる。
     問題なのは「その人が無礼であること」や「その人が迷惑であること」であって、「その人がふにゃオスであること」ではないはずだ。
      彼らがやっているのは、たまたま犯罪を犯した人間が男性だったからといって、「男性は全員性犯罪者予備軍だ! 去勢しろ!」と叫ぶヘイトスピーチと何ら変わらない。
     個人の振る舞いに対する責任を、その人が持つ「属性」全体に連帯責任として負わせる。これは差別の最も古典的かつ、卑劣な手口である。


    「まともな側」に立ちたい人々

     なぜ彼らは、これほど単純な論理のすり替えを行うのか。
     それは、仮想敵の「主語」を大きくした方が、自分たちが「まともな側(多数派)」に立ちやすいからだ。
     「〇〇というユーザーが迷惑だ」という個別の話にしてしまえば、それはただのトラブル報告に過ぎない。しかし、「ふにゃオスはカスだ」と属性全体を攻撃対象にすれば、「俺たちはあいつらとは違う、社会性を持った側だ」という安易な連帯感を生み出すことができる。
     弱い(と彼らがみなす)属性を踏みつけることで得られる「スキ」や「まとも感」を楽しむ人間達。貧相な精神性と言わざるを得ない。

    VRChatの死

     もし、彼らの主張が通り、「ふにゃオス」という属性が駆逐されたとしよう。
     では、その次に標的になる属性は誰だ?
     「無言勢」という属性か?
     「人型アバターを使うユーザー」という属性か?
     「声が変」という属性か?
     「アバター改変勢」という属性か?
     あるいは、「VRCをインストールした」という属性を持つ、あなた自身か?

     そもそも、「ふにゃオス」とは明確な定義のないタームである。その定義が今後拡大していくことは充分考えられる。VRCをインストールしようなどと思う人間は、世間から見ればふにゃオスと大差ない。
     我々は連帯しなければいけない。旧時代的な社会規範やジェンダー規範に基づけば、我々は皆カスなのだから。

    彼らがふにゃオスを攻撃したとき

     ナチス・ドイツの迫害を生き延びた牧師、マルティン・ニーメラーの有名な詩がある。

    ナチスが共産主義者を攻撃したとき、私は声をあげなかった。私は共産主義者ではなかったから。 続いて彼らがユダヤ人を攻撃したとき、私は声をあげなかった。私はユダヤ人ではなかったから。 (中略) そして、彼らが私を攻撃したとき、私のために声をあげる者は、誰一人残っていなかった。

     筆者はふにゃオスではない。(少なくともそう見なされたことはない)彼らの文化に共感することもないかもしれない。
     しかし、彼らが個人の振る舞いではなく「属性」を理由に不当に石を投げられ、「カス」と踏みにじられるのを黙って見過ごすことは、明日の自分自身がVRChatterという属性を理由に石を投げられることを容認するのと同じだ。弱いモノ虐めに乗っかって「スキ」を稼ぐ差別主義者たちのようにはなりたくない。

     悪口はエンタメかもしれない。しかし、そこに属性差別の論理が混ざり込んだとき、それは毒ガスへと変わる。
     その毒ガスが充満したVRChatの世界で、私たちは本当に自由に呼吸ができるだろうか。

     だから筆者は、彼らがふにゃオスを馬鹿にしたとき、声をあげることにした。
     これ以上、インターネットをつまらなくさせないために。

     では、また……。


    おわりに

     Z李みたいな文体で悪口言う文章ばっか読んで身体が痒くなった。


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