
スイートでビターな日曜マルシェ
欧州では、新鮮な果物や野菜、作りたてのパンやチーズケーキなどを扱う市場がよく開催されていますよね。特にフランス語圏ではマルシェといいます。ベルギー•ブリュッセルも例外ではなく、至るところでよくマルシェが開催されていました。ベルギーって実は農業国で、例えば芽キャベツはフランス語でchou de Bruxelles (ブリュッセルのキャベツ)と呼ばれ、一説によるとブリュッセルにて初めて栽培が始まったようです。他にも日本では見かけないような野菜や果物がたくさん並び、中でも果物は種類もたくさんあって、特に安くてすごくおいしいです。
円安が加速して、引っ越しやその他、初期費用等がかさむ上にまだ給与も入らなかった最初のころ、まともな食べ物すら手に入らず、しばらくは一週間を1ユーロ以下のオートミールだけで過ごしていました。外出する体力もなく、外出すれば盗難に気を付けたり早歩きしたりしなくてはいけないので余計おなかが減りそうで、休日は一日中寝て過ごすということも経験しました。さすがにビタミンが足りなくなって、スーパーよりは安いマルシェで手に入れようと思い、バスで自宅から少し離れた大きめのマルシェに向かってみました。週末の朝のかなり早い時間帯にも関わらずお祭りかと思うくらい、とにかく人が多くてびっくりしたの覚えています。人酔いすらしました。よく知られているようにベルギーは小国でありながら移民がとても多く、特にブリュッセルは人口の3分の1が外国人です。言ってみれば私自身も外国人としてブリュッセルに住んでいたわけですが、そこのマルシェも立地的にいわゆる移民の方がとても多いなという印象でした。そこから少し物騒な雰囲気は感じ始めていました。
新鮮な果物の試食コーナーが至るところに設けられていて、大体がセルフサービスなのですが、何しろしばらくまともな食事をしていなかった私は無料で新鮮な果物が食べられるんだと少し感動して、本当に食べたことのない果物も沢山あったのでとにかく試食に全力でした。まるで『ヘンゼルとグレーテル』のような、今思えばグリム童話に出てきそうな話ですよね。
私だけ全力だった訳ではなく、せっかくセルフサービスで試食コーナーが設けられているのだからと割とそれぞれが遠慮なく試食していました。
ただ、プロには私の余裕のなさが見透かされていたんでしょうね。やたらと試食を勧めてくるマルシェの店員がいました。どうやらこれは組織的犯罪で試食を勧めてきたり、商品の説明をしてきたりして注意をそらしている間に貴重品を盗むと言う手口だったようです。もともと野菜は買うつもりで、最後に野菜を買おうとカバンを開けた瞬間に財布がどこにも見当たらなくてパニックというよりは、これが現実なのか、狐につままれたような感覚に陥ったのを覚えています。いくつか青果店が集結して出店しているので、どの店で盗られたのか本当にわかりませんでしたが、正直にその会計係の店員に「たった今財布をすられたみたいなので、買い物をキャンセルします」と伝えました。店員側も驚いており同情されたのか、なんとその野菜はもらえることになりました。財布を盗ったのがこの店の店員だったのであれば、矛盾したよくわからない話ですがそれも今となっては日頃からカオスなベルギーらしいです笑
野菜をもらえたのは良かったんですが、問題はここからで私はなんとクレジットカード3枚とほぼすべての現金、つまりほぼ全財産を財布に入れて持ち歩いていたんです。一瞬にして、ほぼ全財産を失いました。本当に不注意だったなと思いますが、万が一のことを想定した上で色々持ち運ぶしかなかったんですよね。それにしてもクレカはやはり分散させるべきですね。その後の諸対応はご想像の通りですが、引越ししたばかりだったのに次の給料日までは、タンスに隠してあるなけなしの現金でしのぐしかなくなってしまったので、欧州版メルカリのようなアプリで日本から持ってきた日本で買ったほぼ全ての自分の服やカバン、靴などをすべて売って生活していました。その時はまだ知り合いすらいなかったので。なので、不思議なことに今身につけている服は大体がベルギーやフランスなどで買ったものです。私の身の回りの物はいったん全てここでリセットされました笑
たった数時間のマルシェ滞在でしたが、スイートでありビターな、まるでベルギーチョコレートのようなとても濃い経験になったのでした‥🍫