メインコンテンツへスキップ
見出し画像

真夜中に 《詩》

    わたしがまだ子供だった頃
    真夜中に わたしは変な音で目が覚めた
    それは空から鳴っていて 
    たしかに空から鳴っていて
    (ギィーッ ギィーッ ギィーッ ギィーッ)
    何とも気味の悪い嫌な音
    とがった爪を黒板に押し当てて引っ掻いたような


    真夜中 幽霊たちが動きだすころ
    それは空から鳴っていた

    わたしは外へ飛び出した 
    真っ暗闇のただなかへ 
    ずんと重く沈むただなかへ
    雨が降っていた 
    雨はいよいよ激しく
    音はいよいよ巨きく 大音量で
    まるでサイレン 
    警告するように空から鳴り響く


    雷が轟きはじめ
    ゴロゴロゴロゴロ 
    ゴロゴロゴロゴロ 
    ピカっという稲光とともに空が二つに割れる
    (あっちにいくか こっちにいくか  
         あっちにいくか こっちにいくか)
    と空は脅迫する


    陰鬱な空から 不気味な音が
    降ってくる 降ってくる
    近いような 遠いような 
    近いような 遠いような
    雷鳴と手を組んで 
    村中に響きわたる


    わたしは坂道を登っていった
    その地響きを肌に感じ
    不吉な爆音に貫かれそうになりながら
    時おり光る雷の明かりが石崖を照らす
    その石崖をつたいながらわたしは歩いた


    地蔵菩薩が五体並ぶその場所で 
    わたしは足を止めた
    その上 くねくね道を登ったところに
    小屋があることは知っていた
    地蔵菩薩はわたしを見た
    (ここだ ここだ 間違いない)

    わたしは急いでくねくね道を登り
    小屋の中へ飛び込んだ



    小屋の中にはラジオ
    音はそのラジオから鳴っていた
    (得体の知れないものたちが
     ラジオを通して入り込んでくる)

    ギィーッ ギィーッ ギィーッ ギィーッ

    妖しく不気味な周波数をとらえて 
    焦点を合わせて


    わたしは無我夢中でラジオのダイヤルを回した
    音は歪んだように狂いながら
    (不本意だ 何とも不本意だ)
    と最期の叫びをあげて
    息を吸うような喘ぎとともに止まった


    呪いは止んだ 音は止んだ
    たしかに音は止んだ 呪いは止んだ
    後には耳鳴りの錯覚だけが
    未練がましく残るばかり


    小屋の外に出た
    雷雨は嘘のように静かになっていた
    雷は遠くの空で小さく小さく鳴っていた

    薄明の予感とともに 
    もうすぐ朝日が顔を出そうとしていた


    帰り道 濡れた石崖にもたれかかり
    わたしはそこに祈りの文字を描いた
    唐草模様の飾り文字

    それから家に着くと ぐったりと眠った



    目が覚めると すっかり朝になっていた
    祖母がいて 父がいて 母がいて 姉がいて
    いつもと何一つ変わらない朝
    「今日はよく晴れているわ」と祖母が言う

    明るい白白とした朝の光が差し込んでくる



    #創作大賞2025 #オールカテゴリ部門

     
     
    詩を書くことは生きること 絵も描きます 掲載画像のほとんどは、わたしが描いたものです

    あなたへのおすすめ