『旅時々取材~パレスチナ、イスラエルレポート~』連載編③

①アンマン入国 ♯3
私への質問をしながら、他の係官達は旅券を宝石鑑定で使用する様な虫眼鏡で覗き込んだり、部屋の電気を消して旅券に小さい機械(ブラックライト)をかざし反射を何度も確認したりして調べ続けていた。私は「でっち上げ」の理由でもつくられ、入国できなくなる事が一番心配だった。
運が悪ければイスラエルに「入国」出来ない可能性は少なからずあるとは覚悟していたけれども、ジョルダンに入国で出来ないという想定はしてなかった。ここで返されたら、飛行機の往復のみで終わってしまう…。最悪だ。
でも、もう一方で、この間私の唯一の持ち物である「小型リュックとデジタルビデオカメラ」の中身も調べられていない事から、「偽装旅券のみを疑っているんだ」とわかってきた。すると気分が大分落ち着いてきた。というよりこれなら入国できないわけはないだろうと逆に少し安心してきた。
そのうち、隣の欧米系係官同士が「あいつ(私)は問題ないな。残りの2人が本当に日本人なのか、あいつ(私)に日本語で会話をしてもらおうか」と英語で会話をしているのが聞こえてきた。すかさず僕は、何くわぬ顔をして「今、あなた〝こう〟言ったでしょう!」と言うと、「そうだ。これからあの2人をこの部屋に呼ぶから、日本語で会話をしてほしい」と。ついでに、「我々は、彼らの旅券が偽造だと疑っている。最近は中国人の偽造旅券が多い。彼らが日本人でなければ、日本語での会話が上手く出来ないはずだ」と。
「私の事も勝手に疑っておいて、謝罪もなく最後は協力させるのか。それに、君達は日本語ができないのに、そんな検査方法でわかるのか?」と少し憤慨したが、とにかく早く入国するには、最後までつきあうしかないと思い了解した。
若者2人自分達のバックを持ちながら部屋に入ってきた。まずは、係官が英語で同じように「荷物はそれだけか。入国目的は」等の質問を彼らにし、私が日本語に訳して彼らに伝え、又英語で係官達に伝える。
「荷物はこれだけです。旅行者です、ジョルダンの次はエジプトに向う予定です」等。この会話を係官全員で聞いている。その内、私服のジョルダン人係官の一人と腹の出た欧米系係官が何やら問答し始めた。アラビア語と英語での会話だから、私にも内容がすべてわかったわけではなかったが、見ていて理解出来た。
そう、そのジョルダン係官は私達を入国審査で「待て」と言った彼だった。彼はしきりに「そんなはずはない。やつらはあやしい」みたいな事を言っている。が欧米系の係官は「いや残念ながら皆白だ。問題ない」と言っている。ここで僕は又カチーンと来た。なる程、「自分が見つけた怪しい人物が白であっては困る」という事か。すると、その腹の出た係官が僕らの方を見て、「問題なかった。入国できる。すまなかった」と。もちろんもう一方のジョルダン係官は謝りもせず僕らの方を見もしない。
もうこれで入国できると安心した私は、特段1・2時間の差で今日の自分の予定に大きな影響がない事はわかりながらも、わざと大きな声で「あ~あ、貴重な時間を無駄にした」と皆に伝わる様に言うと、
別の欧米系の係官が「何時に到着したの?」と。
「9時20分!大切な自分の時間を2時間も費やした!」
彼だけ申し訳なさそうに「すまなかった。いい旅を過してください」と丁寧に答えてくれた。

何はともあれ、無事ジョルダンに入国できただけでよかったと僕は自分を納得させた。
結果として、この経験がその後のイスラエル「入国」等で本当に役に立ったのはその後の話しである。
①「アンマン入国」編、了。
②次回以降は「アンマン・ダウンタウン編」「イスラエル編」「西岸地区編」へと続く。
飯澤淳(Iizawa Jun) :フリーランスライター