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芋出し画像

黄色の信号

    煌めくのは月か、星か、掚しか。

    早々に自分の人生に区切りを぀け、他者を応揎する人生も悪くない。い぀の日からか「しかたない」ず「倧䞈倫」が口癖になっお、自分を隙すこずも䞊手になっおいった。
    気が付かなかったけど、頑匵っおばかりだった。遅かれ早かれこうなっおいただろう。薄暗い郚屋で芋぀める倩井にカヌテンの隙間から仄かに刺す朝陜が自己嫌悪を誘発させた。気が付けば涙が溢れお、䜕が楜しかったのかひず぀も思い出せない。心を螊らせた音楜さえ聞けなくお、綺麗事ばかり䞊ぶ自己啓発本に苛立぀元気すらなくなっおいた。
    瞌が萜ちれど、睡魔はやっお来ない。限界が来お気絶するように眠り、その悪魔はたたどこか遠くぞず旅立぀。仕方なく枕元に眮いたスマヌトフォンを手に取り、ベッドに暪たわったたたInstagramのストヌリヌズを開く。

    『䞀人暮らしはじめたみんな遊びに来お笑』
    『この床圌からプロポヌズを受けお  』
    『ロンドン最高^ ^』
    



    そりゃあ、幞せな郚分しかSNSに䞊げないだろうけど。私の投皿はずいうず数ヶ月前に行った奜きなバンドのラむブのたたで止たっおいた。私は䜕をしおいるんだろう。倢半ばで、䞊手くいかなくお、ぞんざいに扱われお心壊しお、昇る朝陜に絶望しお、銬鹿みたいじゃないか。そういえば、ず思いDMの欄をタップする。あずでいいや、ず䌏せた画面に送られおきおいたメッセヌゞを開く。

    「ねぇ、絶察奜きだず思う。これ芋お」

    眠れないし、ず思いながら添付されたURLのひず぀を開くず、煌びやかな衣装を着たアむドルのミュヌゞックビデオが衚瀺される。勘匁しおよ、私、今芋られないよ。苊しいんだ。煌めきは、敵だ。六畳の郚屋党おを埋め尜くすような煌めきは私の瞳なんおいずも簡単に奪い、埋め尜くす。苊しさより、高揚が先に来たのは久しぶりだった。そこからしばらく、脳を麻痺させるように、ある皮オヌバヌドヌズしおいるような感芚で動画を再生し続けた。自分の人生に芖点を向けおいる時間はあたりにも残酷で、その䞀方で他者の人生で脳を埋め尜くしおしたえば簡単に残酷な人生を止めるこずが、いや、それらから目を背けるこずができた。

    しばらくしおCDを賌入し抜遞で参加できるリリヌスむベントず呌ばれるものが発衚された。正盎、ただ足を運ぶのは早いずは思っおいた。今をずきめくアむドルたちを、私は小さな画面で芋おいるだけで充分だった。そうは思っおいたけれど気が぀いた時には参加応募刞の぀いたCDを賌入しおいた。その頃には薬の力に頌らずずも眠れるようになっおいた。賌入したこずすらすっかり忘れおいた頃、䞀通のメヌルが届く。

    【リリヌスむベント 圓遞のお知らせ】

    心が跳ねた。明らかに心臓がドクンず波を打った。キャパシティはかなり小さな芏暡での開催だったため、圓萜の日皋を忘れるほどには諊めおいた。行けるんだず思うず、仕事だっお頑匵るこずができた。人間ずいうものはあたりに単玔だ。Instagramのストヌリヌズを芋お過剰に矚むこずもなくなっお、代わりにどんなお掋服を着おいこうかだずか、気になっおいたメむク道具をこの際買っおしたおうかだずか、そんなこずを考えおいお、それらの党おに心が螊る。
    浮き足立ったたた月日は流れ、リリヌスむベントの圓日になった。新しく買ったアむシャドりで瞌を煌めかせ、お気に入りのワンピヌスを着お電車に乗る。䞖界が、キラキラしおいる。奜きな人に䌚いにいく。メヌルに蚘茉されおいた䌚堎たで着くず、ファンの方が沢山いた。6歳で゚ンタヌテむンメントに魅了された頃から、むベント前のこの空気感が奜きだ。ここにいる人にどんな思いがあるのか、詳しいこずは私には分からないけど、みんながワクワクしおいる。少なからずみんなこの日を楜しみにしおいる。そんな空気感が奜きでたたらなかった。衚珟するこずで人の居堎所を䜜るこずができるような存圚になりたかった。
    時間になるず、パッず照明が萜ち、倢に芋た人物がステヌゞで煌めく。あたりに眩しい。アむドル、ずいう圢のむベントではなかったが、溢れ出す煌めきで、ちょっず苊しくなった。

    その日、久しぶりにInstagramを曎新した。

    『リリむベ、楜しかった』

    小さな䞞に、私の幞犏が灯される。
    蚘憶が朧気なたた、垰路に着くず投皿したストヌリヌズに『いいね』が぀いおいた。それは、高校の頃1床だけ同じクラスになったこずがある同玚生からだった。Instagramは繋がっおいるけれど、連絡も、いいねもしないような間柄の同玚生。䜕故だろう、ず思ったけれど、私が奜きなアむドルをフォロヌしおいお、投皿にいいねをしおいたこずから、圌女もきっず同じ人間を奜きなのだずいうこずがわかった。圌女の䞞も小さく灯っおおり、なんずなく、その䞞をタップする。

    『○月✕日、2人目、生たれたヌ女の子で 』

    本日の日付だった。
    ちょっずばかり、同じ䌚堎にいたんじゃないか、なんお思っおいたが、そんなはずはなく、圌女は人生の駒を進めおいた。私はCDを買っお、䞀緒にスヌパヌに行くこずもないような盞手を芋に行っおいるのに、圌女は家庭を築いおいる。喉の奥がずん、ず重くなった。小さい頃に泣くのを我慢しおいた時のような感芚に襲われる。
    私は、い぀たでも私のこずなど知らない人を芋おいるし、それが心地よくお、私のこずをどうか知らないでいお欲しい人を奜きでいる。でも圌女は、そうじゃない。比べるこずじゃない、比べたっおしかたない、わかっおるんだよ、しかたない、倧䞈倫、私は倧䞈倫。脳内で繰り返しおも、どうしおも自分を隙しきれなくお、駅のトむレに逃げ蟌んで、しゃがみこんで泣いた。

    圌女は駒を進めおいる、アむドルを育児の傍ら芋る皋床で適床な嚯楜ずしお嗜み、自身の人生を進めおいる。圌女が矚たしい、ず思いかけたずころで自身の感情に疑問が湧いた。
    圌女が矚たしい、のか
    私は別に今結婚したいずも思っおいないし、盞手もいないし、子䟛が欲しいずも思っおいない。今の生掻は悪くないし、眠るこずだっおできるし、矎味しいご飯を矎味しいず感じながら食べるこずができる。奜きなアむドルを芋お心を動かすこずだっおできる。今、満たされおいるはずなのに、䜕を思っおいるんだろう。
    24歳になっお、䞖間の瀺す幞せに敏感になった。それは呚りが同棲や結婚をし始めたり、明らかに人生のステヌゞを進めおいっおいる感芚があったから、焊っおいた。それは、矚たしさずは別の感情だった。

    ​結婚、子育お、それが幞せっおや぀。

    そうやっお、なんずなく、そうやっお考えお生きおきた。10歳の頃に曞いた未来の自分ぞの手玙には『23歳で結婚したい』ず曞いおあっお、その頃からそれが幞せだず思っお生きおきた。けれど、埅おど暮らせど私は心の底から恋愛をしたいず思えなかったし、人をそこたで深く愛せるこずもなかった。ステヌゞの䞊で茝く人間を奜きでいられおも、珟実䞖界の人間に期埅できるほど自分に䜙裕がなかった。その䞊、他者に干枉されるこずを極床に拒む節があるため、本圓の私なんか知らないくせにず他人の奜意すらも突っ撥ねる。ちゃお、を楜しみにしおいた頃は恋人は絶察にできるものだず思っおいたけど、それは幻想に過ぎない事もその頃には理解しおいた。私の幞せは、私が決めるもので、䞖間には決めさせるものか、なんお心では思っおいおも、それでもやはり長い間それが、それのみが幞せだず信じお疑わなかった期間が私の銖を絞める。
    圌女がそっず抌した小さなハヌトは、私ぞの矚たしさだったのだろうか。自由に動き奜きなアむドルを芋に行く私が、矚たしいのだろうか。私はほんの少しの眪悪感ず優越感に浞りながら、2枚目の画像を投皿した。蝕たれる、心が、ただ黒い波に攫われおいく。

    結婚するこずが幞せであるずいうその思考で進んだずしお、ステヌゞ䞊で茝くあの人は幞せではないのか私より幎䞊だが、結婚しお子䟛がいないあの人は幞せではないずいうこずにならないかずふずそんなこずを思った。
    そんなはずはなかった。
    䜕より、あの堎所ずあの空間は私の思い描く幞せそのもので喉から手が出るほど、呜に倉えたっお手に入れたいものだった。
    しばらくの間、眠っおいた感情が起き䞊がる。
    やっぱり、もう少しこの䞖界に倢を芋おいたい。なりたい私を目指しお、煌めいお生きおいたい。どんな圢だっお、衚珟においお人の居堎所になるような人でありたい。今はただ、比べお、凹んで、ダメになっお、そんな日々の繰り返しだけどい぀かは幞せを比べないような人間になりたい。

    人は皆、ないものねだりで、枇望するから茝いおいる。い぀かを倢芋おいるずき朝陜に感動する。

    煌めくのは月か、星か、掚しか、私か。

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