【猫の掌編小説】|猫さんゴルフへ行く
「今日は、みんなでゴルフに行くでやんす!」
「お父しゃん、ゴルフできるでやんしゅか?」
子猫たちが尋ねた。
「もちろんでやんす」
一家がやって来たのは、「ニャンダフル・カンツリー倶楽部」。

第一ホールのティーグラウンドに立つと、猫はドライバーを取り出して素振りした。
「まずは、わたしがお手本を見せるでやんす!」
猫は構えた。

思い切りクラブを振ると、ボールは高く舞い上がり、フェアウェイの真ん中へ転がっていった。
「すごいでやんしゅ!」
子猫たちは大喜びだ。
「ニャイスショットでやんす!」

猫は自画自賛し、フィニッシュのポーズをとったまま余韻に浸った。
猫は、二打目のボールの前に立った。
グリーンまでは、あと120ヤード。
「ここから一気にグリーンへ乗せるでやんす」
猫は力を込め、アイアンを大きく振りかぶり、スイングした。
しかし.....
ズドォ〜〜〜ン!!!
クラブはボールのずっと手前に突き刺さった.....。

「ぐわわわっ、ダフったでやんす~」
「すごい音がしたでやんしゅ!」
「地面に穴が空いたでやんしゅ!」
「これは恥ずかしいでやんす〜」
そのとき、穴の中から声がした。
「すごい音でモグ!」
土の中から、モグラが飛び出してきた。
「お茶を飲んでいたら、天井に穴が開いたでモグ!」
「申し訳ないでやんす」

「これはゴルフではなく、工事モグ!」
「工事するつもりはないでやんす」
「地球に優しいゴルフをするモグ!」
猫は凹んだ.....
次のホール。
猫のティーショットのボールは、グリーン手前のバンカーへ落ちた。
「砂場に入ったでやんしゅ!」
「バンカーでやんす。ここから華麗に脱出するでやんす!」
猫は力いっぱいクラブを振り抜いた。
バフッ!
大量の砂とともに、ボールが高く舞い上がった。
「脱出成功でやんす!」
ところが、ボールは近くの木にあった鳥の巣へ、スポッと入ってしまった。
巣の中から、一羽の鳥が顔を出した。
「わたしの卵が一つ増えているでチュン!」

鳥はゴルフボールをくわえると、猫の頭に落とした。
コツン!
「ここはカップではないでチュン!」
「そ、それは先ほどもモグラさんに言われたでやんす……」
子猫たちは顔を見合わせた。
「お父しゃん、今日はゴルフ場のお友達を怒らせてばかりでやんしゅ!」
猫は再び凹んだ.....。
一方、たま子は順調にボールを運び、最後には長いパットまで決めてしまった。

夕方、ラウンドを終えた一家は、クラブハウスで秋刀魚定食を囲んだ。
「今日は、いいところを見せられなかったでやんす」
猫は落ち込んでいた。
「モグラさんと鳥さんにも迷惑をかけたでやんす」

「おとうしゃん、かっこよかったでやんしゅ」
「一緒にいるだけで楽しいでやんしゅ」
「みんな……そんな風に思ってくれていたでやんすか?」
「次はモグラさんのおうちを壊さないように、みんなで練習してまた来るでやんす!」
たま子は優しく言った。
「みんなの優しさが心に沁みるでやんす……! 」
猫は家族の優しい言葉で元気を取り戻した。

これまでのお隣の猫シリーズはこちら😺
おまけ😺
猫町新聞 号外📰
自称「賢者」の猫山賢斎氏、また秋刀魚を無断で食べる
昨日午後6時ごろ、猫町の民家で、自称・賢者の猫山賢斎氏が、庭の七輪で焼かれていた秋刀魚を勝手に食べ、猫町警察から注意を受ける騒ぎがあった。
目撃した猫さんによると、家族で夕食の準備をしていたところ、庭から聞き覚えのある声がしたという。
「うむ。この秋刀魚には、深い真理が宿っておる」
振り返ると、賢斎氏が七輪の前に座り、すでに一匹目の秋刀魚を食べていた。
猫さんが、「それ、あっしの秋刀魚でやんす!」と抗議すると、賢斎氏は落ち着いた様子で、「秋刀魚に所有という概念を持ち込むから、争いが生まれるのじゃ」と説明。
さらに、「執着を捨てなさい」と言いながら、二匹目にも手を伸ばしたという。
その後、通報を受けた猫町警察の巡査が到着。
「賢斎さん。前にも同じことで注意しましたよね」と尋ねられると、賢斎氏は、「同じ秋刀魚は二度と存在せぬ。ゆえに、これは初めての出来事じゃ」と主張した。
しかし巡査から、「そういう問題ではありません」と即座に否定され、厳重注意を受けた。
警察は、「賢者を名乗っていても、他人の秋刀魚を勝手に食べてはいけません」と改めて注意を呼びかけている。
なお、帰り際、賢斎氏は猫さんに、「今日の教えは、『秋刀魚は焼きたてが一番』じゃ」と言い残したという。
猫さんは取材に対し、「ただ秋刀魚を食べに来ただけでやんす」と呆れた様子で話している。

猫山賢斎氏。



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