
エッセイ(5)この丘を越えると
子供の頃 この丘を越えると
向こうには砂浜があった
今 丘の向こうは
大きな埠頭となっている
豪華客船が停泊するような
大きな港だ
夏休み
おばあちゃんの家に来ると
母と多分妹も一緒に
向こうの砂浜へと行った
海水浴場になっているわけでは
ないから
周りに人の気配はなく
遠浅なのか
急に深くなるのかも分からない
だから 波打ち際で
ぱちゃぱちゃ 遊ぶだけだった
浮き輪まで準備していったのに
出番はないままだった
そんなことを
夏の遠い記憶として
覚えている
いま
近くに海水浴場はあるけど
泳ぎに行きはしない
すぐ近くに
風力発電の風車が
ぶんぶん回っているところで
波と戯れる氣になれないから
はるか遠い昔の思い出
また記憶に戻る
こわごわ入った波間は
泡のごとく
消えゆくような
ぼんやりとして
セピア色がかった風景となっている
陽炎が立つような暑い日
母は暑い暑いと言いながら
天ぷらを揚げていたっけ
その当時としては珍しい
この地の最高気温を
記録した日だった
久しぶりに30度を越える気温の中
外を歩いたら
脳裏に浮かぶ思い出
暑さと自然に対して
どう接したらいいかわからず
戸惑っていた小さな自分がそこに居た