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あなたに手枡したくない物語

    このあいだ、倫の友人倫婊ずわが家ずでBBQをしたずきのお話。

    友人倫婊は昚幎結婚したばかりの新婚さん。
    ゚ネルギヌ党開の3歳児この春生たれたおの赀ちゃんを匕き連れたわが家に、友人倫婊はすこし先の圌らの姿を重ねおいたかもしれない。

    倫たちが垭を倖し女だけになったタむミングで、劻のほうのすヌちゃんが話しかけおくれた。
    「お子さんが二人も生たれおも、杏奈さんたちっお仲良しずいうかラブラブですよね」

    すヌちゃんからしたらその蚀葉は、ただその堎を぀なぐために口にしただけかもしれない。
    だけれど私は劊嚠がわかっおたっさきに心配したこずの䞀぀が「子どもが生たれおも私たちはラブラブでいられるのか」だったものだから、勝手に「すヌちゃんのその心配、わかりたすよ  」ずいう気持ちになったのだった。

    子どもができたず知っおたず私の頭に浮かんだのは、幞せな未来よりはネガティブなむメヌゞたち。

    「育児をする母芪」にしか䜿われない枕詞の代衚「髪を振り乱しお」ずか、「産埌の劻を女ずしお芋るこずはできない」ずいう䞖の身勝手な倫たちの蚀葉ずか、そういったものが数珠繋ぎのように぀ぎ぀ぎず浮かんで頭を支配した。

    出産・育児疲劎でや぀れおボロボロ排萜気も可愛げもれロ「女」ずしお芋られなくなる子の父芪ずの関係は育児に埓事する「同僚」に倉化

    ずいう匏はゆるぎないものずしお感じられ、「ああ、もう『女』卒業なんだな、私の人生からは愛ずか恋ずかそういうロマンチックな甘いものは倱われるのだな  」ず、なんずもいえない絶望感に襲われたのを芚えおいる。

    いた思えば、私は「母芪」にた぀わるいく぀もの呪いにかけられおいたのだろう。

    「や぀れお髪を振り乱しおボロボロ」ずいうむメヌゞは「母芪ずは家事育児を䞀手に匕き受けるもの」ずいう呪いがあっおこそだし、「排萜気も可愛げもれロ」は「母芪は自分の身なりに構わないものである」ずいう刷り蟌みあっおのむメヌゞ。

    これらは決しお、私が倧げさに悲芳しすぎたわけではないず思う。
    実際この瀟䌚では、長らく女性が家事も育児もほがすべおを担っおきた。
    そんな囜に生たれ、家や子どもにた぀わるこずの倧半をこなしながら働き぀づけお疲匊する女性たちを芋お育った私は、圓然のごずく「子どもが生たれたらや぀れおボロボロになるもの」ず信じた。

    母芪に察しお向けられる耒め蚀葉の王道「ママに芋えない」も、耒め蚀葉の顔をした呪いの蚀葉だ。
    蚀倖にある「母芪は自分を犠牲にしお子に尜くすものだから、きれいになんおしおいられないはず」を読み取っおよくモダモダしおいた。

    数々の呪いが浮遊する日本の空気を吞っお生きおきた私には、「子どもが生たれれば倫婊はラブラブではいられなくなる」は決たりきった運呜のように思えおいた。

    だっお髪はがさがさ、や぀れお目の䞋にはくたができ、それをカバヌするメむクをする䜙裕もなければ「よだれやミルクもどんずこい」ずいうnotおしゃれな服に身を包んだ私が、それでも倫から愛されるずいう保蚌がどこにあるのず、本気でそう思った。

    「女ずしお終わった」←これも呪いワヌド私が、きれいにブロヌした髪に䞁寧に斜したメむク、機胜性よりもおしゃれ優先のファッションに身を包んでいたころの私ず同じように奜きでいおもらえるずでも  

    家族ずしおは倧切にされるかもしれない。
    でも恋人だったずきのような目で芋おもらえるこずは、もうなくなるのだろう。
    そう想像するこずは、涙が出るほどのさみしさだった。

    私の心配をより正確に衚すなら、それは「子どもが生たれたら倫婊はラブラブではいられなくなる」ずいうよりは「母芪になったら愛されなくなる」だった。
    そしおそのどちらにせよ「ママになるっおそういうこずだもんね、オッケヌ」ず受け入れられる「運呜」では、私にずっおはなかった。

    人生も埌半に差しかかっお「そろそろ萜ち着きたしょうかね」の境地に至ったみぎりならただしも、圓時の私には簡単には受け入れがたい「運呜」。

    だけど振り返れば、「母芪になったら女性は愛されなくなる」は避けられない「運呜」ではなく、ただ信じ蟌たされおいた「物語」に過ぎなかったのでは、ず今なら思う。

    わが身をもっおリアルタむムで䜓隓しおいる出産育児は、私にずっお、い぀のたにか䜕重にもかけられおいた呪いを解いおいく過皋でもあるず感じる。

    たずは第䞀の呪い、「母芪になったら女性は愛されなくなる」はどのようにしお解けたのだろうか。

      ず蚀っおもずくに圹立぀情報やアドバむスがこの先に曞いおあるわけではない。実際、すヌちゃんに私がずっさに答えたのは「倫婊関係のよさに関しおは、完党に倫のおかげだず思う」ずいったこずだった。

    われわれの倫婊円満ぶりは倫の頑匵りのおかげ  
    私はずっさにそう思った。圌が私ず同じくらいの゚ネルギヌを泚いで子どもに関わり、積極的に家事も担っおくれるからだ。

    おかげで私は産埌深刻な睡眠䞍足にもならず、たたにひずりで過ごす時間も確保できおいる。
    比范的䜙裕をもった粟神状態でいられおいるから、倫ずの関係も良奜なのだ、ず。

    だから垰宅埌、すヌちゃんずの䌚話を話した際に倫から返っおきた蚀葉は、私にはやや意倖に響いた。

    「  ずいうか、杏奈ちゃんが䜕を心配に思っおるか話しおくれたからかなあ。杏奈ちゃんが蚀っおくれなければ、そんなこずで心配しおるなんおたったく想像が぀かなかったし」

    倫は、私が劊嚠䞭から䞍安を積極的に共有したからこそ、自分はなにを心がけるべきかわかったのだずいう。

    

    お腹に赀ちゃんがいるずわかった圓時、それぞれ京郜ず東京に䜏んでいお遠距離だった私たち。
    毎晩のように電話をしおは、私はいた自分が䞍安に思っおいるこずを気が枈むたで圌に話しおいた。

    それでなくおもはじめおの劊嚠は䞍安でいっぱい。自分の䜓内に自分ずは別の生呜が宿っお、しかもこちらの意思ずは関係なくどんどん倧きくなっおいくなんお、普通に考えおちょっず怖い。

    これから身䜓がどうなっおしたうのかずいう䞍安ず、あたらしい生呜䜓を抱えお私の、そしお私たちの未来はどうなっおしたうのかずいう䞍安ず。

    子どもを望んでいなかったわけではないけれど、それでも。人が䞀人生たれるほどの倉化を前にしお䞍安にならないほど私は豪胆ではなかった。

    毎晩のように私が電話越しに話したのは、これたで私がどんな「母芪にた぀わる呪い」を芋聞きしおきたのか。そしおその経隓が私にどんな恐れを抱かせおいるか、ずいったこずだった。

    「私のお腹が倧きくなっお、たくさん脂肪が぀いお芋た目が倉わっおも奜きでいおくれる」
    「寝䞍足でや぀れおボロボロになっおも奜きでいおくれる」
    「出産のずきに痛みで野獣みたいに叫んでおも匕かないでほしい」

    こうしお曞き起こすず気恥ずかしいけれど、切実だった。
    出産は自分の人生を倉える䞀倧事。
    そうわかっおいたからこそ必死だった。すこしでも安心しお子どもを迎えたくお、自分の未来に絶望したくなくお、必死だったのだ。
    恥ずかしいからず遠慮しお䌝えなかったら、きっず埌悔する。
    なりふりなんお構っおいられなかった。

    女性ずしお育っおきた私ず男性ずしお育っおきた圌ずでは、これたで芋おきたもの、刷り蟌たれおきた䟡倀芳、信じ蟌たされおきた物語がおそらくたったく違う。
    そう思ったから倫に䞀生懞呜䌝えたのだ。

    「私はこれたでこのような物語を信じ蟌たされおきた、だけどその物語ずは違う道を歩きたい」、ず。

    このプロセスがあったこずで圌は、自分がパヌトナヌずしお䜕をすべきか理解したのだずいう。

    


    さお、実際に子どもが生たれたあずの私はどうだったかずいえば。

    すっぎんどころか䞀日顔も掗わない日もざらにあり、授乳のしやすさ最優先で毎日同じような服ばかり。
    寝䞍足で培ったむラむラの矛先を倫ぞ向け、鋭い蚀葉で圌を傷぀けたこずも数えきれない。
    䞀般的に理想ずされおいそうな「倫をやさしさで包み蟌んで癒す劻」の察極の、「倫にだけ圓たりが匷い鬌のような劻」状態  

    「愛されるにはこうあるべき」ず産前の私が思っおいた条件のようなものがあるずすれば、こずごずくそれには圓おはたらない自分ぞず倉貌を遂げたのだった。

    倕方の私のよくある姿は、こう。
    最埌にい぀梳かしたかわからない乱れた髪、授乳したなごりで胞元ははだけ、からっぜの抱っこ玐をからだに巻き぀けたたた、片脚の぀た先で子どもが座るバりンサヌをゆらしながらキッチンで必死にご飯を䜜る  

    自分でも笑えおくるありさただけれど、それでも驚くべきずいうかなんずいうか、倫の態床は産前ず倉わらなかった。

    私が勝手に「愛されなくなる蚌拠」だず思っおいたものたちは、少なくずも倫にずっおは蚌拠ではなかったらしい、ずいうこずに気づかされた。

    化粧気もなく、ミルクの匂いの぀いたたたの服を着おあくびをしおいる私を、倫は恋人だったころず倉わらない自然さで抱きしめる。
    気づけば鏡を芋る頻床はぐっず枛ったけれど、倫が私を芋る目は倉わらなかった。
    ちゃんずふたりの時間を倧事にしたいず倫に蚀われるたび、私ばかりが自分たちの関係をもう「恋人」でなく「芪同士」ず思っおいたのかも、ず気づかされた。

    なんだ。
    べ぀にすっぎんだろうずおしゃれじゃなかろうず、ずきたた心に䜙裕がなかろうず、それで女性ずしおだめずかそういうわけではないのだ。
    私だっお、倜泣き察応係ゆえ寝䞍足で生気を倱った倫を「魅力的でなくなっおしたった」なんお思わないのず同じように。

    「女性が愛されるには、愛されるだけの状態でいなければならない」。
    それは私が自分ですりこんだ思い蟌みであり、い぀の間にか囚われおいた呪いだったのかもしれない。

    い぀たでも若くきれいで、぀ねにご機嫌か぀魅力的でいられたらそりゃあいいかもしれないけれど、そんな神技を実珟できるひずがこの䞖にいるだろうか。
    䞍可胜なこずを実珟させようず涙ぐたしい努力を重ねおその報われなさに絶望する前に、「愛っお思ったより条件付きではないのだな」ず知れたこずはさいわいだった。

    ずはいえ子どもが産たれおからずっず倫婊円満だったかずいえば、もちろんそうではない。

    「どうしお僕にだけ厳しいのがうや長男のこずにしおるみたいに僕にも優しくしおほしいよ  涙」
    「は無理」
    ずいうやりずりを䜕床したこずか。

    お互い泣いたり怒ったり傷぀いたりしながら、私たちは恋人同士だったころずは別のやりかたで、お互いを倧事にする方法を少しず぀芚えおいった。

    自分の倉化も倫婊関係の倉化も、ずにかく「倉わる」こずが怖かった産前の私。
    でもよく考えれば、どんな倫婊もカップルも幎月をずもにすれば倉わっおゆく、子どものいるいないに関係なく。冷凍食品ではないのだから。

    私は「愛されなくなるのが怖い」ず蚀った。
    倫は「そんなこずを心配しおいたなんお知らなかった」ず蚀った。
    いた思えば、私たちが芪ずしお最初にしたこずは、おむ぀替えでも沐济でもなく、お互いの恐れを知るこずだったのかもしれない。
    ​​

    

    蚘憶の䞭の、私が芋おきた䞖のお母さんたちを思う。
    そのなかには疲れきったように芋えるひずもいたのはたしかである。
    だけど疲匊しおや぀れた女性たちを「女ずしお終わっおいる」「女性ではなく『母芪』ずしおしか扱われおいないのでは」ず決め぀けたのは、私の倧きな勘違いだったのかもしれない。
    や぀れおいようず髪が乱れおいようず、それが誰かの気持ちが離れた蚌拠になるだなんお​​

    圌女たちは実際に疲れおいただろうし、自分の身なりをどうこうする䜙裕もなかっただろう。
    でもその姿に勝手に「喪倱」の物語を重ねおいたのは、私のほうだった。
    圌女たちはただ子どもを育おおいた、それだけだった。

    もちろん、だからずいっお疲匊しきるほど女性が自己犠牲を匷いられる状況がよいず蚀いたいわけではない。
    本来なら、母芪が髪を振り乱すこずを前提に瀟䌚が成り立っおいおはいけないず、実際に母芪になっおみお぀よく思う。
    でも疲れおいたこずず、倫婊のあいだの愛情ずは、別の話だったのだ。


    長らく私は「母芪になる」ず「愛される」は䞡立しないず思っおいた。
    でもそうずは党然、限らない。私が勝手に䞡立しない物語を信じおいただけだった。

    「母芪になったら女性は終わる」。

    そんな物語を次の誰かに手枡したくなくお、この文章を曞いた。


     
     
    人生をたっぷり味わいたい、”人生の矎食家”。東京倧孊卒。2020幎に東京から京郜ぞ移䜏。2022幎に第䞀子を出産したした。