
FCCによるCB無線規制の再編と緩和
― Docket 20120から現行制度まで ―
はじめに
米国のCB無線(CB Radio Service)は、現在、FCC(Federal Communications Commission)の下で、個人・業務・自発的公共奉仕活動のための短距離双方向音声通信サービスとして位置づけられている。現行規則では、CBは個別免許を要しない制度であり、40チャンネルを共有して利用する[1]。
しかし、この制度像は当初から存在していたものではない。CB無線の制度転換の中心にあったのが、1974年に始まり1975年から本格化したFCCの Docket 20120 である。この手続は、単なる自由化措置ではなく、急増した利用者、深刻な混雑、違反運用、干渉問題に対応するため、CB制度全体を再設計する包括的見直しであった[2][3]。
1. Docket 20120の位置づけ
Docket 20120を策定・決定した主体はFCCである。政府資料によれば、FCCは1974年7月31日にNPRM(Notice of Proposed Rule Making)を公表し、1975年8月7日にFirst Report and Order、1976年7月27日にSecond Report and Orderを出した[3]。一方、GAOは1974年7月23日のNPRMに言及しており、開始日の表現には資料差がある。そのため、少なくとも1974年7月下旬に開始したことは確認できるが、23日か31日かの厳密な整理は、今回確認した資料のみでは断定しない[2][3]。
この再検討が必要となった背景について、GAOは、1975会計年度にFCCが31,000件のCB違反苦情を受け、CB関連苦情が無線妨害苦情の55%を占めていたと報告している[2]。さらにGAOは、FCCが当時の状況を事実上「蔓延した違反」と「混乱した状態」と認識していたことを記している[2]。したがって、Docket 20120は、CBを単に緩和するための措置ではなく、制度の実効性回復と実利用への適合を目的とする包括的な再編手続であったと理解すべきである[2][3]。
2. 1975年改正の内容
GAOによれば、FCCは1975年8月7日のFirst Report and Orderで、CBの運用規則を実態に合わせて改めた[2]。確認できる範囲では、主な変更点は以下のとおりである。第一に、雑談や機器性能に関する会話が禁止事項リストから外された。第二に、5分送信後に必要とされていた5分間の待機時間が1分に短縮された。第三に、intra/interstationのチャンネル区分が廃止された[2]。これらは、利用実態にそぐわなくなっていた運用上の厳格規制を緩和する措置であった[2]。
もっとも、1975年改正は全面的な自由化ではなかった。GAOは同時に、Channel 11を呼出用チャンネルとして扱ったこと、および受信用アンテナにも高さ制限を及ぼしたことを記録している[2]。したがって、1975年改正は、運用面では緩和、秩序維持面では整理と制限強化を含む複合的改正であった[2]。
3. 1976年の40チャンネル化
Docket 20120に基づく見直しは1975年で終わらなかった。政府資料によれば、FCCは1976年7月27日のSecond Report and Orderで、Class D CBのチャンネル数を40に拡張した[3]。これは現行CB制度の基本構造そのものである。あわせて、27.085 MHzのcalling-only指定も削除された[3]。現行規則上、27.085 MHzはチャンネル11に相当する[1]。
ただし、1976年の措置も一方的な緩和ではなかった。同時期の政府資料には、高調波抑圧要件の強化、周波数拡張用add-on deviceの禁止、シリアル番号刻印義務など、機器面での引き締めが記録されている[3]。したがって、1976年改正は、利用面では拡張、技術面では規制強化という二面性を有していた[3]。
4. 1983年の免許制度廃止
CB制度上、最も大きな緩和は1983年の個別局免許廃止である。現行eCFRでは、CBは個別免許を必要としないサービスとして制度設計されている[1]。また、FCCの後年文書は、PR Docket No. 82-799, Report and Order, 48 Fed. Reg. 24884 (June 3, 1983) を、CBとR/C Radio Serviceの個別局免許廃止を行った決定として明示している[4]。加えて、1996年版CFRのCB Subpart Dは “SOURCE: 48 FR 24894, June 3, 1983” としたうえで、CB Rule 4 に “You do not need an individual license to operate a CB station.” と明記しており、1983年6月3日付改正で個別局免許不要化が条文化されていたことが確認できる[8][10]。
したがって、制度史上、CBの大衆化を決定づけた変化は、1975年の運用緩和だけでなく、1983年の免許不要化に求めるのが適切である[1][4][8][10]。
5. 2017年の再編と「250 kmルール」の削除
FCCは2017年、Part 95全体の再編の中で、CB規則の大幅な整理を実施した。この際、長年存在していた、いわゆる「250 kmルール」が削除された[5]。旧規則では、250 kilometers(155.3 miles)を超える距離にあるCB局と通信してはならず、またその通信を試みてもならないとされていた[6]。
重要なのは、この旧規則が単なる長距離通信禁止ではなく、“communicate with, or attempt to communicate with” という文言により、通信の試行自体をも禁止していた点である[6]。これに対し、現行のCB禁止行為規定には、距離上限条項は存在しない[1]。したがって、現在のCB制度には法定通信距離上限はない[1][5][6]。
もっとも、距離制限条項が削除されたからといって、CBが制度上遠距離通信用サービスへ転換したわけではない。現行FCC規則は、CBをなお短距離双方向音声通信サービスとして位置づけており、出力、帯域幅、アンテナ高、外部パワーアンプ禁止などを通じて、依然として短距離共有サービスとして維持している[1][5][6]。
2017年改正ではこのほか、シリアル番号刻印義務などの旧式な規制も整理された。FCC自身が、こうした規則は過去には意味があったとしても、現代では負担が利益を上回ると説明している[5]。
6. 2021年のFM追加許可
2021年、FCCはCBにFM音声を追加で認めた。FCC 21-90は、CB送信機がAMに加えてFM voice emissionsを送信できるようにするため §95.971(a) を改正すると明示している[7]。
ただし、この点には重要な留保がある。現行 §95.971(a) は、CB送信機について、AM音声またはSSB音声を送信できなければならず、加えてFM音声を送信してもよいと定める[1]。したがって、FCCが認めているのはAMまたはSSBを備えた機器へのFM追加であり、FM専用の単体CBトランシーバーではない[1][7]。さらに現行規則では、AMおよびFMの出力上限は4W、SSBは12W PEPであり、AM/FMの許容帯域幅は8 kHzである[1][7]。
7. カナダとの通信
現行規則では、CB局は原則として外国局と通信してはならない。ただし、例外としてカナダのGeneral Radio Service stationsとの通信は認められている[1]。これは現行CB禁止行為規定に明示されている[1]。
この例外がいつから存在したかについては、今回確認できた資料では、遅くとも1996年版CFRには明文化されていることが確認できる[8]。また、その条文は1983年の連邦官報改正を出典として掲げている[8]。したがって、少なくとも1983年までには明文化されていたといえる。他方で、それ以前が初出かどうかは不明である[8]。ゆえに、この点について最も慎重な表現は、**「少なくとも1983年までには明文化されていたが、初出時期は不明」**となる[8]。
8. アンテナ規制の整理
アンテナについては、1975年のDocket 20120で「緩和」が行われたとする理解は、今回確認できた資料とは整合しない。GAOは、1975年改正で受信用アンテナにも高さ制限を適用したこと、さらにCB無指向性送信アンテナの一部について高さ制限を設けたことを記している[2]。したがって、1975年に確認できるのは、アンテナ規制の緩和ではなく、規制対象の整理・拡張である[2]。
現行規則では、CB送信アンテナは、地上18.3メートル(60フィート)以下、または建物・樹木の最高点より6.1メートル(20フィート)高いまでの、いずれか高い方までに制限される[1]。さらに、CBアンテナは航空航行安全に関する一般規則にも服する。現行 §95.317 は、Personal Radio Servicesのアンテナ構造物はPart 17に従うとし、特に空港付近では高さ条件に応じて追加制約が生じ得ることを示している[9]。
したがって、CBに「空港から何km以内は禁止」という独自の専用条項があることは確認できないが、空港周辺では一般の航空障害規則により追加的制約が生じ得る、と整理するのが正確である[1][9]。
おわりに
以上のとおり、FCCによるCB無線規制の変遷は、1974年開始のDocket 20120を起点として、1975年の運用緩和、1976年の40チャンネル化、1983年の個別免許廃止、2017年の250 kmルール削除と旧式規則整理、そして2021年のFM追加へと連続的に進んできた[2][3][5][7]。
その結果、現在のCBは、個別免許不要の40チャンネル短距離共有音声サービスとして制度化されている[1]。ただし、通信距離の法定上限は現行規則には存在しない一方で、出力・アンテナ高・帯域幅・外部アンプには依然として制限がある[1]。また、カナダGRS局との通信は明示的に許可されているが、その例外の初出時期は不明である[1][8]。さらに、アンテナ規制について1975年に緩和があったとは確認できず、むしろ規制の整理・拡張が確認される[2]。これが、確認可能な公式資料に基づく最も慎重で正確な整理である[1][2][5]。
参考文献
[1] Federal Communications Commission, 47 CFR Part 95 Subpart D — CB Radio Service(現行eCFR).
[2] U.S. Government Accountability Office, GGD-75-88, Actions Taken or Needed To Curb Widespread Abuse of the Citizens Band Radio Service(1975).
[3] U.S. International Trade Commission, Citizens Band (CB) Radio Transceivers, Pub. 852(1977).
[4] Federal Communications Commission, FCC 96-145; citing Amendment of Parts 1 and 95 of the Commission’s Rules to Eliminate Individual Station Licenses in the Radio Control (R/C) Radio Service and the Citizens Band (CB) Radio Service, PR Docket No. 82-799, Report and Order, 48 Fed. Reg. 24884 (June 3, 1983).
[5] Federal Communications Commission, Review of the Commission’s Part 95 Personal Radio Services Rules, FCC 17-57(2017).
[6] U.S. Government Publishing Office, 47 CFR Part 95(2015 edition).
[7] Federal Communications Commission, FCC 21-90(2021).
[8] U.S. Government Publishing Office, 47 CFR Part 95 Subpart D(1996 edition).
[9] Federal Communications Commission, 47 CFR §95.317(現行eCFR).
[10] U.S. Government Publishing Office, 47 CFR Part 95(2000 edition); CB Rule 4 “Do I need a license? You do not need an individual license to operate a CB station,” citing 48 FR 24894, June 3, 1983.
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