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米加のライセンスフリー無線比較

    序 国境線の上を電波は歩く

    米国とカナダのライセンスフリー無線を眺めると、まず目につくのは、その相似性である。呼び名、官庁、法形式、細部の周波数表は異なる。それでも、制度の骨格はよく似ている。どちらも、低出力で、周波数を共用し、認証済み機器を使わせ、他の無線局に対する干渉保護を原則として与えない。この四つの要素、すなわち「低出力・共用・認証済み機器・干渉保護なし」が、米加ライセンスフリー無線の共通した設計思想である。[1][2]

    米国では、47 CFR Part 15(連邦規則集第47編第15部:無線周波機器規則)が、個別免許なしで運用される意図的・非意図的・偶発的放射機器の技術条件を定める。[1] カナダでは、ISED, Innovation, Science and Economic Development Canada(行政機関:カナダ革新・科学・経済開発省)の licence-exempt radio apparatus(免許免除無線装置)、たとえば RSS, Radio Standards Specifications(技術基準:無線標準仕様)によって、低出力の消費者向け・商業向け無線機器を認証制度で管理する。[2][3]

    ここでの規制の主眼は、「誰に免許を与えるか」よりも、「どのような機器なら市場に出してよいか」に置かれている。つまり、無線局を一局ずつ国家が名簿管理する発想から、機器の技術的性質を入口で制御する発想への移行である。Wi-Fi(無線LAN)、Bluetooth(近距離無線通信)、FRS, Family Radio Service(家族用無線サービス)、CB, Citizens Band Radio Service(市民バンド無線サービス)、各種テレメトリ機器は、この発想の上に置かれている。

    免許不要という語感は自由を連想させるが、制度の実体はむしろ「認証された小さな自由」である。自由は、あらかじめ低出力化され、帯域幅を絞られ、アンテナや変調方式を制限されたうえで、利用者に渡される。

    一 なぜ似るのか――地理、市場、国際秩序

    米加の制度が似る原因の第一は、地理である。両国は長大な陸上国境を共有する。国境線は地図上では明瞭であるが、VHF, Very High Frequency(超短波)、UHF, Ultra High Frequency(極超短波)、携帯電話、公共安全無線、業務無線の電波は、その線を気にしない。したがって両国は、国境付近の周波数割当や無線局指定について調整しなければならない。カナダ・米国間の General Coordination Agreement(一般調整協定)は、国境沿いの地上無線局および地球局に関する周波数の割当・指定を対象としている。[4]

    第二は、市場である。ライセンスフリー機器は、一般消費者向け、商業向け、大量流通向けの製品である。メーカーから見れば、米国向けとカナダ向けで、別のチップ、別のアンテナ、別の出力設計、別の周波数表を用意するのは重い。FCC ID(FCC機器認証番号)と ISED certification number(ISED認証番号)を併記できる北米共通製品の方が合理的である。特に FRS/GMRS 系ハンディ、CB、Wi-Fi、Bluetooth では、この市場圧力が制度の似姿を支えている。

    第三は、国際的な周波数分配である。米国とカナダはいずれも ITU Region 2(国際電気通信連合第二地域)に属し、ITU, International Telecommunication Union(国際電気通信連合)の周波数分配を前提として国内割当を組み立てる。カナダの Canadian Table of Frequency Allocations(周波数割当表:カナダ周波数割当表)は、World Radiocommunication Conference(世界無線通信会議)の結果を反映しつつ、国内事情を加味している。[5] 米国の周波数割当も、国際分配と連動する。

    したがって米加の相似性は、国境干渉対策、北米市場、ITU Region 2 という三つの力の重なりである。ざっくり言えば、米加のライセンスフリー無線は、隣国だから似せざるを得ない面があり、同じ北米市場で機器を売るために似せた方がよい面があり、国際周波数分配の枠組みによって似やすい面がある。

    二 統治機構の違い――FCC と ISED

    ここで、規制官庁の構造に触れておく必要がある。米国側の中心は FCC, Federal Communications Commission(独立行政委員会:連邦通信委員会)である。FCC は独立行政委員会として、規則制定、免許、機器認証、執行を担う。47 CFR Part 15(連邦規則集第47編第15部:無線周波機器規則)や 47 CFR Part 95(連邦規則集第47編第95部:個人無線サービス規則)は、この FCC 規則体系の中に置かれている。

    これに対し、カナダ側のカウンターパートは ISED, Innovation, Science and Economic Development Canada(行政機関:カナダ革新・科学・経済開発省)である。旧称 Industry Canada(カナダ産業省)の系譜に属し、現在は Spectrum Management and Telecommunications(周波数管理・電気通信部門)が、周波数管理、機器認証、無線局免許、技術基準を扱う。[6] ただし ISED は米国FCCのような独立委員会ではなく、省庁機構の一部である。Radiocommunication Act(法律:無線通信法)は、無線免許、周波数免許、技術基準、機器認証、干渉排除などの権限を大臣に与えている。[7]

    この違いは、法形式にも現れる。米国では、比較的多くの内容が 47 CFR(連邦規則集第47編)の各 Part(部)に集約される。Part 15、Part 95 と言えば、制度の輪郭をかなり追うことができる。カナダでは、同じ内容が複数の文書に分かれる。

    ・Radiocommunication Act(法律:無線通信法)
    ・Radiocommunication Regulations(省令:無線通信規則)
    ・RSS, Radio Standards Specifications(技術基準:無線標準仕様)
    ・RIC, Radiocommunication Information Circular(通達・解説文書:無線通信情報通達)
    ・SP, Spectrum Utilization Policy(政策文書:周波数利用政策)
    ・SRSP, Standard Radio System Plan(技術計画:標準無線システム計画)
    ・Canadian Table of Frequency Allocations(周波数割当表:カナダ周波数割当表)

    このため、米国の Part 95 に対応するカナダ版 Part 95 を探しても見つからない。CB なら RSS-236(技術基準:26.960–27.410 MHz帯一般無線サービス機器)と RIC-18(通達・解説文書:一般無線サービス)、FRS/GMRS なら RSS-210 Annex E(技術基準:無線標準仕様第210号附属書E)と SP 462/467 MHz(政策文書:462/467 MHz帯周波数利用政策)、MURS 的用途なら GMRS-M(移動型一般移動無線サービス)、LPRS 的用途なら RSS-210 の 216–217 MHz 枠、というように、制度は文書群として現れる。

    CRTC, Canadian Radio-television and Telecommunications Commission(独立行政機関:カナダ・ラジオテレビ電気通信委員会)との区別も重要である。CRTC は名称だけ見ると FCC に似る。しかし、ライセンスフリー無線、周波数、送信機、アンテナ、機器認証、技術基準を扱う中心は ISED である。CRTC は放送制度、通信事業、番組・サービス・競争政策などに重心を持つ。無線技術行政の比較では、FCC の相手方は ISED と見るのが正確である。

    三 CB無線――北米一体性が最も見える制度

    27 MHz 帯の CB 無線は、米加比較の中でも最も相似性が強い。米国では CBRS, CB Radio Service(市民バンド無線サービス)と呼ばれ、47 CFR Part 95 Subpart D(連邦規則集第47編第95部D款:市民バンド無線サービス)に置かれる。カナダでは GRS, General Radio Service(一般無線サービス)と呼ばれ、RSS-236(技術基準:26.960–27.410 MHz帯一般無線サービス機器)および RIC-18(通達・解説文書:一般無線サービス)が中心になる。[8][9][10]

    両国の CB は、26.965 MHz から 27.405 MHz までの 40 チャンネルを用いる。出力も近く、AM, Amplitude Modulation(振幅変調)および FM, Frequency Modulation(周波数変調)系は 4 W、SSB, Single Side Band(単側波帯)は 12 W PEP, Peak Envelope Power(尖頭包絡線電力)が基本である。[8][9]

    ここでは、制度の相似性がかなり直截に見える。

    ・米国 CBRS とカナダ GRS は、ともに 27 MHz 帯 40 チャンネルを使う。
    ・AM/FM 4 W、SSB 12 W PEP という出力構造もそろう。
    ・個別免許を要求しない。
    ・認証済み機器を前提にする。
    ・外部パワーアンプや改造には厳しい。
    ・Ch 9 など、緊急・道路利用者支援の文化も共有する。

    CB は、米加の制度が同じ方向を向いた例である。国境を越える電波の現実と、北米道路交通の実務が、制度の近似を強く押し出している。トラック交通、道路情報、緊急通信、国境をまたぐ生活圏が、27 MHz 帯40チャンネルという共通の器の上に乗っている。

    四 CB/GRSの米加相互運用――交信、持ち込み、国境

    CB/GRS をめぐる議論では、三つの問題を分ける必要がある。第一に、米国CBRS局とカナダGRS局が互いに交信できるか。第二に、相手国へ機器を持ち込んで運用できるか。第三に、遠距離交信や外国局通信をどう扱うか。この三つを混ぜると、制度の読みがぼやける。

    まず、米国側から見ると、相互交信はかなり明確である。米国CBRSでは foreign stations(外国局)との通信が原則として禁止されるが、カナダの General Radio Service stations(一般無線サービス局)は例外とされている。[8] したがって、米国CBRS局がカナダGRS局と交信することは、米国側規則の文言上、明示的に許容される。

    カナダ側から見ても、米国とのCB/GRS相互運用は制度上想定されている。RIC-18(通達・解説文書:一般無線サービス)は、適用法令に従う限り、GRS局をカナダおよび米国で運用できると説明している。[10] これは、カナダGRS局が米国内でも運用され得ることを正面から認める文言である。したがって、カナダ側についても、米国とのGRS/CB相互運用を許容していると読むのが自然である。

    ここで大切なのは、この結論を「持ち込み運用」からだけ引き出す必要はないという点である。たしかに、カナダGRS局を米国でも運用できるという記述は、機器の持ち込み運用にも関係する。しかし、それだけではない。GRSがカナダおよび米国で運用される制度として説明され、米国側CBRSがカナダGRS局を外国局通信禁止の例外としている以上、米加CB/GRSは、片務的な例外ではなく、両国制度が噛み合った北米型の相互運用と見るべきである。

    ただし、相互交信の許容と、相手国での持ち込み運用の合法性は同じではない。

    米国の FCC certification(FCC認証)だけで、カナダ国内の ISED certification(ISED認証)を満たすとは限らない。逆に、ISED認証だけで、米国国内のFCC認証を満たすとも限らない。したがって、相手国で運用する場合には、その国の機器認証・技術基準に適合する必要がある。FCC ID(FCC機器認証番号)と ISED certification number(ISED認証番号)を併記した北米向けCB機であれば、安全度は高い。改造機、高出力機、10m改造機、外部リニアアンプ併用機は、米加いずれでも危険な領域に入る。

    この節の要点は、次のようにまとめられる。

    ・米国CBRSは、外国局通信禁止の例外としてカナダGRS局との通信を明示的に認める。
    ・カナダGRSは、カナダおよび米国での運用を明示しており、米国との相互運用を制度上想定している。
    ・したがって、米加CB/GRSの相互交信は、両国制度が噛み合った形で許容される。
    ・しかし、相手国での持ち込み運用には、その国の機器認証・技術基準が別途かかる。
    ・交信できることと、どの機器でも持ち込んでよいことは別である。

    五 CBの sky wave――遠距離交信と外国局通信を分ける

    27 MHz 帯 CB には、常に sky wave(電離層反射波)、すなわち電離層反射による遠距離伝搬の問題がつきまとう。CB 用語では skip(スキップ)と呼ばれることも多い。太陽活動や季節、時刻によって、数百キロどころか大陸規模で信号が飛ぶことがある。法制度は、この物理現象をどのように扱うかを迫られてきた。

    米国では、2017年の Part 95 改革以前、CBRS に 250 km、155.3 miles を超える CB 局との通信または通信の試みを禁じる規定が置かれていた。これは、CB を短距離・地域内通信の共用サービスとして維持し、遠距離交信によるチャンネル混雑を抑えるための規制であった。

    しかし FCC は、2017年改革でこの距離制限を削除した。FCC は、27 MHz 帯では太陽条件により sky wave によって数百マイルの通信が可能となることを認めたうえで、CBRS 利用者による sky wave 利用が harmful interference(有害な干渉)のリスクを増大させているという説得的証拠は記録上ないと判断した。その結果、出力制限は維持しつつ、長距離通信制限を撤廃した。[11]

    この変更の意味は大きい。2017年以降の米国 CBRS では、距離だけを理由として遠距離交信を違法化する発想が後退した。一方で、CB が高出力 DX(遠距離通信)サービスに変わったわけではない。残る制約は多い。

    ・AM/FM は 4 W、SSB は 12 W PEP まで。
    ・外部 RF, Radio Frequency(無線周波)パワーアンプは禁止。
    ・認証済み CBRS 送信機を使う必要がある。
    ・チャンネル外運用は禁止。
    ・会話時間や妨害禁止などの通常規律は残る。
    ・外国局との通信禁止も残る。ただしカナダ GRS 局は例外である。

    ここで重要なのは、「遠距離」と「外国」が別概念であるという点である。米国CBRSでは、2017年改革により、sky wave による遠距離通信を距離だけで排除する規制は削除された。しかし、国際通信を一般に解禁したものではない。米国CBRSにおいては、「遠距離」はかなり許容されたが、「外国」は一般解禁されていない。

    カナダ側の構造は、米国と少し違う。カナダGRSは、米国との交信そのものを排除していない。むしろ RIC-18 は、GRS局をカナダおよび米国で運用できると説明しており、米国とのCB/GRS相互運用を制度上想定している。[10] しかし同じ RIC-18 は、GRS局を「自局の通常カバレッジ範囲を超えるGRS局との通信、または通信の試み」に使ってはならないとも説明している。[10]

    したがって、カナダ側の理解はこうである。カナダGRSは、米国との通常のCB/GRS交信を許容する。一方で、通常カバレッジ範囲を超える遠距離交信を目的化する運用には抑制的である。RIC-18 は “sky wave” や “skip” という語で直接禁止するのではなく、「通常カバレッジ範囲外のGRS局との通信または通信の試み」を禁じる形で、遠距離通信を抑えている。

    この区別は、米国海外領土との交信でよく見える。47 CFR §95.307(連邦規則集第47編第95.307条:認められる局の所在地)は、Personal Radio Service stations(個人無線サービス局)の運用可能場所として、米国50州、DC, District of Columbia(コロンビア特別区)、Puerto Rico(プエルトリコ)、U.S. Virgin Islands(米領バージン諸島)、American Samoa(米領サモア)、Guam(グアム)、Commonwealth of the Northern Mariana Islands(北マリアナ諸島自治領)などを列挙している。[12] したがって、米国本土と北マリアナ諸島、グアム、プエルトリコ、米領サモアなどの合法 CBRS 局が sky wave で交信した場合、それは外国局との通信ではない。

    旧日本委任統治領を米国が引き継いだ TTPI, Trust Territory of the Pacific Islands(太平洋諸島信託統治領)の後継地域を見ると、さらに輪郭がはっきりする。TTPI には Northern Mariana Islands(北マリアナ諸島)、Federated States of Micronesia(ミクロネシア連邦)、Marshall Islands(マーシャル諸島)、Palau(パラオ)が含まれていた。[13] しかし現在、米国領として Part 95 上の米国局所在地に含まれるのは北マリアナ諸島だけである。ミクロネシア連邦、マーシャル諸島、パラオは FAS, Freely Associated States(自由連合国)であり、米国領ではない。[14] したがって、米国CBRSから見れば、これら三国の局は外国局である。

    整理すると、CBRS の sky wave 交信においては、次のように分かれる。

    ・北マリアナ諸島は交信可能な米国領域である。
    ・グアムも交信可能な米国領域であるが、旧TTPIの構成地域ではない。
    ・ミクロネシア連邦、マーシャル諸島、パラオは旧TTPIの後継地域であっても、現在は外国である。
    ・カナダ GRS 局は、米国CBRSにおける外国局通信禁止の明文例外である。
    ・カナダ側も、GRS局のカナダおよび米国での運用を明示し、米加相互運用を想定している。
    ・日本、フィリピン、メキシコ、欧州などの局は、電波が届いても米国CBRS上の通常交信相手にはならない。

    2017年改革は sky wave を許容する方向へ米国CBRSを動かしたが、国際通信を一般解禁したものではない。米国領か、カナダGRS局か、外国局かという法的地位の区別はなお残る。カナダ側も、米国との相互運用を認めながら、通常カバレッジ外を狙う遠距離通信には抑制的である。CBにおける米加の相似性は強いが、sky wave の扱いでは、米国の2017年改革とカナダの短距離サービス観が微妙な差を作っている。

    六 FRS/GMRS――低出力ハンディ圏と米国型高出力GMRSの分岐

    FRS と GMRS は、一緒に扱う必要がある。両者は 462/467 MHz 帯を共有し、一般向けハンディ機の世界では密接に絡み合っているからである。

    まず機器の姿から見ると、違いはかなり分かりやすい。FRS は、キャンプ場、スキー場、遊園地、ショッピングモール、駐車場などで使う手のひらサイズのトランシーバーである。家族や友人が近距離で「いまどこ」「そっちへ行く」と話すための小型無線機、と考えればよい。

    これに対し、米国 GMRS, General Mobile Radio Service(一般移動無線サービス)は、手持ち機だけでなく、車に積む車載無線機、家や小屋に置く基地局、屋根やポールに立てる外部アンテナ、山や高所に置く repeater(中継局)まで含む。つまり、FRS が「小型トランシーバー単体」の世界だとすれば、米国 GMRS は「家族・地域・アウトドア向けの小規模な UHF 無線網」である。

    リピーターを使う場面を想像すると、差はいっそう明瞭になる。たとえば、Aさんが谷間のキャンプ場にいて、Bさんが数十キロ離れた町にいる。直接は電波が届きにくい。しかし山の上に GMRS リピーターがあれば、Aさんの無線機は 467 MHz 側でリピーターへ送信し、山上リピーターがそれを受信し、462 MHz 側で再送信する。Bさんはその再送信を受信する。FRS には基本的にこのリピーター運用がない。ここが、米国 GMRS を「少し本格的なUHFトランシーバー・システム」と感じさせる最大の理由である。

    米国では、2017年の FCC Personal Radio Service Reform(個人無線サービス改革)が分水嶺になった。[11] 改革前、市場には FRS/GMRS 兼用のように見えるハンディ機が大量に出回っていた。利用者の多くは GMRS 免許を意識せず、低出力トランシーバーとして使っていた。FCC はこの現実に合わせ、低出力・固定アンテナ・22 チャンネルの機器を FRS 側に寄せ、GMRS を免許制の上位サービスとして整理した。

    米国 FRS, Family Radio Service(家族用無線サービス)は、現在 22 チャンネルで、Ch 8–14 が 0.5 W ERP, Effective Radiated Power(実効放射電力)、その他が 2 W ERP である。アンテナは取り外し不能であり、短距離音声通信と限定的データ通信のための低出力ハンディ制度として設計されている。[15] すべての FRS チャンネルは GMRS にも共用される。ここまでは、低出力ハンディ機の世界である。

    米国 GMRS は、技術的に一段大きい。GMRS には 30 チャンネルが割り当てられる。内訳は、462 MHz main channels(462 MHz主チャンネル)、467 MHz main channels(467 MHz主チャンネル)、462 MHz interstitial channels(462 MHz間隙チャンネル)、467 MHz interstitial channels(467 MHz間隙チャンネル)である。[16] 特に 467 MHz メインチャンネルは、リピーター経由通信の入力側として使われる。ここで、装置像が FRS から大きく変わる。

    米国 GMRS の出力も、FRS と比べてかなり大きい。462/467 MHz メインチャンネルでは、mobile stations(移動局)、base stations(基地局)、repeater stations(中継局)が最大 50 W まで認められる。fixed stations(固定局)は最大 15 W、462 MHz インタースティシャルは 5 W ERP、467 MHz インタースティシャルはハンドヘルドに限って 0.5 W ERP である。[16] さらに GMRS では、リピーター局の automatic control(自動制御)、リピーター・基地局・固定局の remote control(遠隔制御)が認められる。[16]

    したがって、米国 GMRS は低出力トランシーバーの延長に収まらない。車載機、基地局、外部アンテナ、リピーターを含む、小規模な UHF 移動無線網である。制度上も、GMRS は個別免許制であり、18歳以上の個人が免許を取得し、その家族が一定範囲で運用できる。[16]

    日本の感覚に引き寄せて言えば、FRS は特定小電力トランシーバーに近い雰囲気を持つ。米国 GMRS は、デジタル簡易無線登録局や簡易業務無線を、個人・家族向けに寄せたような姿を想像すると分かりやすい。ただし完全な対応物ではない。米国 GMRS は業務無線そのものではなく、Personal Radio Service(個人無線サービス)の一つであり、主として個人・家族の活動を支える制度である。

    カナダ側は、この米国型 GMRS とは違う。カナダの GMRS は、FRS から切り離された高出力サービスというより、FRS と重なり合う低出力・単信中心のトランシーバー制度として理解する方がよい。RSS-210 Annex E(技術基準:無線標準仕様第210号附属書E)は、FRS/GMRS 機器について 22 の単信チャンネルを掲げ、出力を Ch 8–14 で 0.5 W ERP、その他で 2 W ERP に制限している。[3] これは、米国 GMRS よりも米国 FRS に近い。

    カナダ GMRS と FRS の関係は、周波数の重なりで見ると分かりやすい。カナダ GMRS は 462 MHz 帯の 15 単信周波数で運用され、そのうち 7 周波数を FRS と共有する。[17] したがって、カナダ GMRS 機は他の GMRS 機と交信するだけでなく、共有周波数上では FRS 機とも交信できる。つまり、カナダGMRSは「GMRS同士で話す無線」でもあり、「一部チャンネルではFRSとも話せる無線」でもある。

    FRS と GMRS が共有する代表的な 7 周波数は、次のとおりである。

    ・462.5625 MHz
    ・462.5875 MHz
    ・462.6125 MHz
    ・462.6375 MHz
    ・462.6625 MHz
    ・462.6875 MHz
    ・462.7125 MHz

    これらは FRS 側では一般にチャンネル1から7に相当する。したがって、同じチャンネルに合わせれば、FRS 機と GMRS 機は互いに聞こえ、交信できる。これに対し、カナダ GMRS には FRS と共有しない 462 MHz 帯の GMRS 用単信周波数もあり、そこでは主に GMRS 機同士の交信になる。

    さらにカナダの SP 462/467 MHz(政策文書:462/467 MHz帯周波数利用政策)は、GMRS について 462 MHz 帯の 15 単信周波数を使うものとし、2004年時点で将来のリピーター入力用として予約されていた 467 MHz 帯 8 波を、のちに GMRS には提供しないと整理した。[17] ここが決定的である。米国 GMRS は 467 MHz 入力・462 MHz 出力のリピーター運用を制度内に持つ。カナダ GMRS は、FRS と一部チャンネルを共有しつつ、GMRS 同士でも交信する低出力・単信中心の免許不要機器として整理される。

    このため、実体として最も近いのは、米国 GMRS とカナダ GMRS ではなく、米国 FRS とカナダ FRS/GMRS 機器である。名称の一致に引っ張られると、制度の読みを誤る。FRS/GMRS 比較の核心は、低出力ハンディ圏と高出力リピーター圏の分岐にある。

    国境越え通信についても、CB ほど明快ではない。FRS/GMRS 系の周波数は重なるので、国境付近で電波として通じる可能性は高い。しかし、米国 GMRS には外国局との通常通信に制約がある。[16] さらに、米国の高出力 GMRS 機、リピーター対応機、脱着アンテナ機をカナダへ持ち込んで同じように運用することは、カナダの低出力・免許不要型の FRS/GMRS 制度に合いにくい。

    2017年改革は、二つの方向に効いた。米国 FRS はカナダの低出力 FRS/GMRS 機器に近づいた。一方で、米国 GMRS は免許制・高出力・リピーター可能な上位サービスとして明確化され、カナダ側から遠ざかった。ここに、FRS/GMRS 比較の面白さがある。

    七 MURS――米国にあり、カナダは別の逃がし方をした

    MURS, Multi-Use Radio Service(多用途無線サービス)は、米国 Part 95 Subpart J(連邦規則集第47編第95部J款:多用途無線サービス)に置かれる。151.820、151.880、151.940、154.570、154.600 MHz の 5 チャンネルを用い、最大 2 W の VHF 免許不要サービスである。個人・業務活動に使え、音声、データ、画像、telecommand(遠隔指令)、telemetry(遠隔測定)などを扱える。[18]

    MURS は、米国では便利な中間的制度である。FRS より業務用途やデータ用途に広く、GMRS のような免許制・リピーター型の制度でもない。VHF であることから、屋外や構内の簡易連絡にも向く。

    カナダは、この米国型 MURS をそのまま導入しなかった。ISED の SP 462/467 MHz(政策文書:462/467 MHz帯周波数利用政策)は、米国 MURS の導入を踏まえてカナダでも検討したが、該当する VHF 周波数がカナダでは警察・消防を含む既存免許人に使われていたため、同じ形では採用しなかったと説明している。[17]

    その代替として作られたのが GMRS-M, General Mobile Radio Service-Mobile(移動型一般移動無線サービス)である。カナダは、MURS 的な用途を 462 MHz 帯の特定周波数に寄せ、犬追跡、ペット封じ込め、インターホン、その他の低出力用途を許容する方向を取った。[17]

    したがって MURS の比較は、相似性よりも分岐の例である。

    ・米国 MURS は、151/154 MHz 帯の VHF 免許不要サービスである。
    ・カナダには、同じ VHF MURS は置かれていない。
    ・カナダは、既存公共安全利用との衝突を避けるため、GMRS-M という 462 MHz 帯の代替枠を作った。
    ・MURS は、国境が近いから制度が必ず似るわけではないことを示す。

    ここでは、地理的近接性よりも国内の既存周波数利用が勝った。米加比較は、似ている部分だけを見ると制度の読みを誤る。MURS は、その良い反例である。

    八 LPRS――特殊用途の低出力制度として近い

    LPRS, Low Power Radio Service(低出力無線サービス)は、米国 Part 95 Subpart G(連邦規則集第47編第95部G款:低出力無線サービス)に置かれる。216–217 MHz 帯を使う短距離の低出力サービスで、聴覚支援、医療関連通信、法執行機関による追跡、AMTS, Automated Maritime Telecommunications System(自動海上電気通信システム)のネットワーク制御などに用いられる。[19]

    LPRS は、CB や FRS のような一般的な双方向会話用トランシーバーではない。米国規則では、双方向音声通信は禁止され、用途は聴覚支援、翻訳、教育環境での音声支援、医療、追跡などに限定される。[19] 出力は通常 100 mW ERP 以下で、非常に小さい。

    カナダ側にも、RSS-210 の中に 216–217 MHz 帯の近い枠がある。用途は、聴覚支援、medical telemetry(医療テレメトリ)、物品追跡、法執行機器などである。送信は one-way voice(一方向音声)および two-way data(双方向データ)に限定され、出力はピーク 100 mW 以下、EIRP, Equivalent Isotropically Radiated Power(等価等方放射電力)160 mW 以下とされる。[3]

    したがって LPRS は、MURS と対照的である。

    ・米国 LPRS とカナダ 216–217 MHz 枠は、周波数帯が近い。
    ・用途も、聴覚支援、医療、追跡、法執行関連で似ている。
    ・どちらも、一般的な双方向音声会話の制度ではない。
    ・低出力・特殊用途・認証機器という点で相似性が高い。

    LPRS は、北米市場で大量流通する会話用無線というより、公共性と特殊用途を帯びた微小出力装置の制度である。ここでは、米加の制度は比較的きれいに対応する。

    九 総括――似るところ、分かれるところ

    米加のライセンスフリー無線は、全体としてよく似ている。低出力、共用、認証機器、干渉保護なしという制度設計は、米国 Part 15 とカナダ licence-exempt 機器の双方に通底する。これは、国境干渉を避ける地理的必要、北米市場における機器共通化、ITU Region 2 の周波数分配という三つの要因によって支えられている。

    しかし、サービスごとに見ると濃淡がある。

    ・CB は、米加で最もよく似ている。27 MHz 帯 40 チャンネル、出力、変調方式、免許不要性、国境を越えた通信の扱いまで、北米一体性が強い。

    ・米国CBRSは、外国局通信を原則禁止しながら、カナダGRS局との交信を明文で例外として認める。

    ・カナダGRSも、カナダおよび米国での運用を明示しており、米加CB/GRSの相互運用を制度上想定している。

    ・ただし、相互交信の許容と、相手国での持ち込み運用の合法性は別である。相手国で運用するには、その国の機器認証・技術基準に適合する必要がある。

    ・CB の sky wave は、2017年以降の米国で扱いが変わった。250 km 超通信禁止は削除され、合法機器・合法出力の範囲で距離だけを理由に排除する規制は後退した。ただし外国局通信禁止は残り、カナダ GRS 局が例外となる。

    ・カナダGRSは、米国との交信を制度上想定しながら、通常カバレッジ範囲外のGRS局との通信または通信の試みを禁じ、遠距離通信の目的化には抑制的である。

    ・旧太平洋諸島信託統治領の後継地域では、北マリアナ諸島だけが米国領として CBRS 上の米国局所在地に含まれる。ミクロネシア連邦、マーシャル諸島、パラオは自由連合国であり、CBRS 上は外国局である。

    ・FRS/GMRS は、低出力ハンディ機の世界では米加が接近した。特に米国 FRS とカナダ FRS/GMRS 機器はかなり近い。

    ・カナダ GMRS は、FRS と一部チャンネルを共有するため、共有周波数上では FRS 機とも交信できる。また、462 MHz 帯の GMRS 用単信周波数では GMRS 機同士でも交信する。

    ・GMRS は、名称に注意が要る。米国 GMRS は免許制・高出力・リピーター可能な上位サービスであり、車載機、外部アンテナ、山上リピーターまで含む小規模な UHF 無線網である。カナダ GMRS は、低出力・免許不要・単信中心で、FRS と重なり合う機器制度に近い。

    ・MURS は、米国にはあるが、カナダには同じ VHF 制度がない。カナダは既存利用との衝突を避け、GMRS-M で代替した。

    ・LPRS は、216–217 MHz 帯の特殊用途低出力制度として、米加でかなり近い。

    この比較から見えてくるのは、北米の無線秩序が一枚岩ではないということである。似ているのは、偶然ではない。違うのも、偶然ではない。似るところでは、国境、消費市場、国際分配が制度を近づける。分かれるところでは、国内の既存利用、規制官庁の構造、免許政策、公共安全の事情が制度を引き離す。

    ライセンスフリー無線は、自由な無線というより、地政学的に調整された小さな自由である。米加の国境線上では、その小さな自由がよく見える。CB は国境をまたぐ道路交通の声を運び、FRS は低出力ハンディ機の共通圏を作り、GMRS は同じ名前の下で制度思想の差を露呈し、MURS は国内周波数利用の制約を示し、LPRS は特殊用途の低出力秩序として対応する。

    米加のライセンスフリー無線比較は、周波数表の比較にとどまらない。それは、国境、行政組織、市場、技術標準、国際法秩序が、数ワット以下の小さな送信機の中にどのように折り畳まれているかを見る作業である。

    註

    [1] 47 CFR Part 15, Radio Frequency Devices.
    URL: https://www.ecfr.gov/current/title-47/chapter-I/subchapter-A/part-15

    [2] ISED, Low-power Licence-exempt Radiocommunication Devices FAQ.
    URL: https://ised-isde.canada.ca/site/spectrum-management-telecommunications/en/consumer-information/low-power-licence-exempt-radiocommunication-devices-frequently-asked-questions

    [3] ISED, RSS-210, Licence-Exempt Radio Apparatus: Category I Equipment.
    URL: https://ised-isde.canada.ca/site/spectrum-management-telecommunications/en/devices-and-equipment/radio-equipment-standards/radio-standards-specifications-rss/rss-210-licence-exempt-radio-apparatus-category-i-equipment

    [4] ISED, General Coordination Agreement between Canada and the United States of America on the Use of Radio Frequency Spectrum by Terrestrial Radiocommunication Stations and Earth Stations.
    URL: https://ised-isde.canada.ca/site/spectrum-management-telecommunications/en/official-publications/legislation-regulations-and-treaties/terrestrial-radiocom-agreements-and-arrangements-traa/canada-united-states/general-coordination-agreement-between-canada-and-united-states-america-use

    [5] ISED, Canadian Table of Frequency Allocations (2022).
    URL: https://ised-isde.canada.ca/site/spectrum-management-telecommunications/en/learn-more/key-documents/consultations/canadian-table-frequency-allocations-sf10759

    [6] ISED, Spectrum Management and Telecommunications.
    URL: https://ised-isde.canada.ca/site/spectrum-management-telecommunications/en/licences-and-certificates

    [7] Radiocommunication Act, R.S.C., 1985, c. R-2.
    URL: https://laws-lois.justice.gc.ca/eng/acts/r-2/page-1.html

    [8] 47 CFR Part 95, Subpart D, CB Radio Service.
    URL: https://www.ecfr.gov/current/title-47/chapter-I/subchapter-D/part-95/subpart-D

    [9] ISED, RSS-236, General Radio Service Equipment Operating in the Band 26.960–27.410 MHz.
    URL: https://ised-isde.canada.ca/site/spectrum-management-telecommunications/en/devices-and-equipment/radio-equipment-standards/radio-standards-specifications-rss/rss-236-general-radio-service-equipment-operating-band-26960-27410-mhz-citizens-band

    [10] ISED, RIC-18, General Radio Service.
    URL: https://ised-isde.canada.ca/site/spectrum-management-telecommunications/en/licences-and-certificates/radiocom-information-circulars-ric/ric-18-general-radio-service-grs

    [11] FCC, Report and Order, Personal Radio Service Reform, FCC 17-57.
    URL: https://docs.fcc.gov/public/attachments/FCC-17-57A1.pdf

    [12] 47 CFR §95.307, Authorized station locations.
    URL: https://www.ecfr.gov/current/title-47/chapter-I/subchapter-D/part-95/subpart-A/section-95.307

    [13] National Archives, Proclamation 5564, Trust Territory of the Pacific Islands.
    URL: https://www.archives.gov/federal-register/codification/proclamations/05564.html

    [14] U.S. Department of the Interior, Office of Insular Affairs, Compacts of Free Association.
    URL: https://www.doi.gov/oia/compacts-of-free-association

    [15] 47 CFR Part 95, Subpart B, Family Radio Service.
    URL: https://www.ecfr.gov/current/title-47/chapter-I/subchapter-D/part-95/subpart-B

    [16] 47 CFR Part 95, Subpart E, General Mobile Radio Service.
    URL: https://www.ecfr.gov/current/title-47/chapter-I/subchapter-D/part-95/subpart-E

    [17] ISED, SP-462/467 MHz, Spectrum Utilization Policy to Permit Licence-Exempt Devices in the Land Mobile Frequency Sub-bands 462/467 MHz.
    URL: https://ised-isde.canada.ca/site/spectrum-management-telecommunications/sites/default/files/attachments/2022/SP-462.467MHz-issue2.pdf

    [18] 47 CFR Part 95, Subpart J, Multi-Use Radio Service.
    URL: https://www.ecfr.gov/current/title-47/chapter-I/subchapter-D/part-95/subpart-J

    [19] 47 CFR Part 95, Subpart G, Low Power Radio Service.
    URL: https://www.ecfr.gov/current/title-47/chapter-I/subchapter-D/part-95/subpart-G


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