
想いの累層24
―
目が覚めているのだろうか、夢の中なのだろうか、自分が何処にいるのか分からない。
(今、何してるんだっけ。あれ、仕事はどうした?)
遠くで、気を失っているのか死んでいるのか、横たわった数名の近くには人が立っている。
「もうやめろ。俺の代で終わらせる。お前も罪を償え」
その声、親父の声で我に返った。少しの間気を失っていたようだ。何故ここにいるのだろうか、翔に話している。
「離れろ!兎に角離れんだ。田ノ神も土地を離れる。航、もう此処さ来んな」
夢心地が覚め周りの景色がはっきりした。親父の目ははっきりと僕を捉えていた。翔と親父の近くへ足を運んだ時
「そんなんじゃ駄目だぁ!」
翔は取り乱したように大声を上げ藪の生い茂っている沢の方へ駆けていった。
足を止めた僕に、今度は親父が近づいてきた。
「ジジイもやっと納得したんだ。家をこの辺から無くす。山の力が及ぼない、どごが遠くで…暮らす」
そういった後、僕の肩を引き寄せ記憶の中では初めて抱きしめられ、強く締め付ける腕のなかでも親父に抱いていた嫌悪感は微塵も無かった。そっと体を戻し、親父は覚悟を決めたように
「田ノ神では、山の力なのか、悪が満ちてくると与三郎おんちゃん、今は航と翔が受け止める力さ持ってるがら、力の体現者さなってんだ」
ぜぇぜぇ言いながら神主も階段を上ってきた。持っていたペットボトルの水を一口飲んだ後
「古から田ノ神家では、血が濃いのもあっで土地の力を感じる人間が多ぐ居たんです。与三郎さんも影響をうげで、あんな事起ごしてしまってぇ」
ねそべり山では、山の力によって影響を受けた人物の殺人や周辺での事故といったことが歴史的に繰り返され、時代の移り変わりとともにエスカレートしてきた。
「だげんとも、勝さんは後世に遺したくないって、決断されだんです」