
【おはなし】雨の日の傘 #拝啓文芸部
雨の日は、ちょっといや。
だって、傘をさすと、
空が見えなくなるから。
雲も見えない。
鳥も見えない。
あっちから友だちが来ても、
顔が見えない。
「おーい!」
って、手をふってくれてるかもしれないのに。
だから、わたしは
傘をちょっとななめにする。
すると、雨が
ぽたっ。
肩におちる。
「ちゃんとさしなさい」
って、お母さん。
でも、
ちゃんとさしたら、
見えないんだもん。
……でもね。
傘の中は、ちょっと好き。
ぽつぽつ。
ぽつぽつ。
雨が傘をたたく音がする。
ここだけ、
雨のおへやみたい。
外は雨なのに、
ここだけ雨じゃないみたい。
歩いているのに、
小さなおへやを持って歩いてるみたい。
だから、ときどき
傘をまっすぐにする。
すると、
空がなくなる。
木もなくなる。
人もなくなる。
見えるのは、
自分のくつと、
ぬれた道だけ。
なんだか、
ちょっとへんな感じ。
でも、
ちょっといい。
だれにも見られてないみたいだから。
鼻歌をうたってもいい。
変な顔をしてもいい。
雨の音を聞いているだけでもいい。
でも、やっぱり
友だちの顔は見たい。
だから、また
傘をちょっとななめにする。
ぽたっ。
肩がぬれる。
でも、
「おーい!」
って聞こえたら、
すぐに顔をあげる。
雨の日は、
ちょっといや。
でも、
傘の中は、
ちょっと好き。