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    <title>天羽薫</title>
    <description>No book, No Life.
好きなもの　猫　朝の空気　珈琲　遮光器土偶</description>
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    <lastBuildDate>Thu, 08 Oct 2026 11:32:56 +0900</lastBuildDate>
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      <title>闇月王（あんげつおう）＃17（第七章①）</title>
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      <description><![CDATA[<p name="b26498d9-70ec-4ec5-8c75-d9c46ad85db0" id="b26498d9-70ec-4ec5-8c75-d9c46ad85db0">「……もう行くの？」<br>クトゥランが起き上がると傍らで眠そうな声がした。<br>窓の外からは、小鳥の囀りに混じって遠く密林の獣が鳴き交わす声が微かに聞こえてくる。空は少し明るんできているが、太陽が昇るまではまだ時間がある。<br>寝台に掛かった天蓋の薄物が、まだ夜気の残る風にふわりと揺れた。</p><p name="c3c76d16-284b-4fba-b4a6-71f9b3c9757a" id="c3c76d16-284b-4fba-b4a6-71f9b3c9757a">「すみません……起こしてしまいました？」<br>んん、と半覚醒の声。小さく笑ったクトゥランが上衣を羽織る。<br>「あ」<br>腕を引かれて、エルランガの裸の胸に倒れこんだ。<br>「ね、もう一回……」<br>甘く強請る声に苦笑する。<br>「だめです……前にちゃんと説明したでしょう？」<br>言いながら身体を起こして、乱れた髪の毛を後に払った。<br><br>神官は愛し合うことは禁じられてはいない。<br>風凰神殿正神官のウラワリのように、結婚している者も普通にいる。ただ神に祈りを捧げる身は清浄さを要求される。交わりを持った場合は、夜が明ける前に禊をして身を清めなくてはいけない。<br>太陽が昇ってからの交わりは、その太陽が沈み再び昇るまで、禊をしても祈りを拒絶される。ましてや神を降ろすことなど出来ないから。夜明けの近いこの時間、エルランガの要求に応じていたら、今日の務めが出来ないことは明白だった。<br><br>「……神様が恋敵じゃ、分が悪いな」<br>顔を寄せられて、クトゥランがくちづける。<br>「そういえば、どうしてあなたの刺青には色が入っていないんです？」<br>上衣の裾から背中に回した指で、刻まれた太陽神の顔をなぞりながら、ずっと疑問に思っていたことをエルランガが尋ねる。神官の刺青は、黒い線で刻んだ文様に白と赤で彩色されるのが普通だった。<br>「入れたのですけれど、色が付かなかったんです」<br>クトゥランが苦笑を零す。<br>「ずいぶん痛い思いをしましたが、結局、線だけで色は入らなかった」<br>きっと、その事でもいろいろ言われたんだろうと思いながら、エルランガが耳朶に唇を落した。<br>「今度、いつ会えます？」<br>見上げてくるその額にかかった髪を、クトゥランが指先で梳き上げた。<br>「シンガラジャの後処理に人手を取られていますから、しばらくは忙しいと思います」<br><br>シンガラジャでは破壊された神殿の再建作業が始まっていた。神殿が復旧するまでは、仮神殿で神務を行わなくてはならない。加えて、北部で魔物が増えてきている件の調査も必要だった。<br>シンドックとヴァンシャ、それにウワラリが神官らを引き連れてシンガラジャへと赴いてから、およそひと月。正神官三人が不在となった分の負担は、ペジェンに残ったクトゥランとウルクにかかっていた。<br><br>「大神官でもないのに、忙しすぎ」<br>唇を尖らせてエルランガが言う。その指がクトゥランの喉元で揺れる琥珀の石をもてあそんだ。<br>「シンガラジャの後処理が終わるまでは仕方ありません。シンドック殿たちが帰ってくれば、私も日常の務めに戻れます」<br>「……アグンに戻ったりはしませんよね？」<br>急に不安げな顔になったエルランガが、クトゥランの指に自分の指を絡める。琥珀の瞳が微笑んだ。<br>「……あなたの側に居ますよ」<br>屈んだクトゥランが、もう一度くちづけを落とした。</p><br/><a href='https://note.com/long_hyena6457/n/nc44aeea8c563'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>天羽薫</note:creatorName>
      <pubDate>Sat, 18 Jul 2026 22:08:46 +0900</pubDate>
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      <title>闇月王（あんげつおう）＃16（第六章③）</title>
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      <description><![CDATA[<p name="00404284-9900-4a48-91f5-704e913d4a26" id="00404284-9900-4a48-91f5-704e913d4a26">「レンゴン様が襲われている！」<br>クトゥランがシンドックの休む部屋に駆け込んだ。<br>シンドックが飛び起きる。<br>「なんだと？」<br>「お渡ししていた太陽神の護符が、呪術をはじき返しました」<br>その言葉にシンドックの顔色が変わった。<br>「――大神殿を呼び出せ！」</p><p name="d619ecf0-1ce4-4633-bc43-c009d353840d" id="d619ecf0-1ce4-4633-bc43-c009d353840d">寺院の広間に神官達が集まった。僧侶達も、何事かと集まってくる。<br>水盤で大神殿を呼び出す。夜半ではあったが、側に待機していたのであろうウラワリがすぐに出た。<br>『なにごとですか』<br>「すぐに王宮へ向かって下さい！　レンゴン様に呪術が放たれました」<br>返事もそこそこに、血相を変えたウラワリが水盤から消えた。<br>「どこへ行く！」<br>広間から駆け出そうとしたクトゥランの手首を、シンドックが掴んだ。<br>「ペジェンに戻ります」<br>「今から早駆けで戻っても丸一日かかる。ウラワリ殿の連絡を待て」<br>シンドックの言うとおりではある。馬を急がせて戻った時には、もう全てが終わっているだろう――良くも、悪くも。<br><br>唇を噛んだクトゥランが、石座の前に趺坐する。<br>「何をするのです？」<br>ヴァンシャが訝しげに声を上げる。<br>「ペジェンに意識を飛ばします。太陽神の加護を頂いた護符は、私との親和性が高い。それを目標にすれば、多少の距離はあっても届きます」<br>ここからペジェンまでは、バリ島のほぼ縦半分にあたる道のりだ。多少という距離ではない。<br><br>「戦で力を使い果たしているのに、無理です！」<br>早くも太陽神の力を帯びて光り始めた石座。止めようと伸ばした副神官キサンの手が握りしめられる。<br>「シンドック殿？」<br>石座の前に座ったシンドックに、ヴァンシャが戸惑う。<br>「こうなったら、クトゥランに力を貸すしかあるまい。私も神を呼ぶ」<br>石座に蒼い光が揺らめきはじめる。<br>ヴァンシャとウルクが顔を見合わせた。ため息をひとつついて、ヴァンシャも石座の前に座った。<br>「――まったく」<br>上がってきた額をつるりと撫でて、ウルクもそれに倣う。<br>半ば唖然とした神官と僧侶が見守る中、正神官達が神を降ろし始めた。</p><br/><a href='https://note.com/long_hyena6457/n/nd079f2d94b06'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>天羽薫</note:creatorName>
      <pubDate>Sun, 12 Jul 2026 23:10:06 +0900</pubDate>
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      <title>闇月王（あんげつおう）＃15（第六章②）</title>
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      <description><![CDATA[<p name="da981d4d-abd7-49b4-ae0c-c1cd8fb1aa4c" id="da981d4d-abd7-49b4-ae0c-c1cd8fb1aa4c">「シンドック様、渓谷の出口で国王軍が反乱軍と遭遇したと、クルタから連絡が！」<br>四日目の早朝に動きがあった。クルタの顔が水盤に浮かぶ。<br>『天候が下っております、このまま雨に降られると、足場の悪い国王軍が不利になると思われます』<br>「ウルク殿、ヴァンシャ殿、天候を持たせられるか？　出来れば追い風に向きを調整しろ」<br>シンドックが水鱗神殿と地母神殿の正神官を振り向く。<br>頷いたウルクとヴァンシャが石座の前に座り、神降ろしの祈りを始めた。風凰神殿のウラワリほどではないにしろ、ウルクもヴァンシャも天候の操作はできる。ほどなく神々が降りてきて、目の前の石座に灰色に近い銀の光と淡い赤色の光が揺らめき始めた。ウルクとヴァンシャの瞳も神々と同じ色に輝いている。<br><br>「先陣がぶつかりあったようです」<br>「正面に反乱軍の指揮官を視認した模様」<br>次々と報告が入ってくる。シンドックがいらだたしげに顔を顰めた。<br>「クルタ、光景を送れるか」<br>『かしこまりました』<br>すぐに目の前の光景が壁泉に送られてくる。厚い雲に覆われた暗い空。吹く風が兵達の腰布の裾をはためかせている。神官達が居るのは軍の後方で、まだ戦の気配からは遠い。<br><br>「……風向きは制御できました」<br>半眼になったウルクの声。<br>「雨は――難しい。もう雲は雨を落とすばかりになっている」<br>「俺が力を貸そう。ここの指揮はお前が執れ」<br>指揮権をあっさりとクトゥランに渡し、シンドックが石座の前に座り神を呼び始めた。石座に深い蒼の光が浮かぶ。<br>大広間が見えない力で帯電し始める。空気が重くなり、微かにきな臭い匂いが篭った。神の力を間近に感じ、壁際に座する寺院の僧侶達の顔に怯えに似たものが浮かぶ。<br>「近くに雷雲がある……あれを使おう」<br>雷と相性の良いウルクが、雷雲を戦場の上空へと引き寄せる。シンドックとヴァンシャの力を併せて雷雲を成長させた。やがて黒雲の中に稲妻が閃き始める。反乱軍の密集している付近を狙って、雷を落とし始めた。<br>『敵軍が乱れ始めました』<br>戦地からの報告にクトゥランが頷く。<br><br>『呪術を感じました！』<br>不意に水盤から聞こえたクルタの声に、広間に緊張が走る。<br>『敵軍に呪術師がいます！　一人ではない……何人か居るようです。こちらの先頭集団が呪いにやられ、戦闘不能になる者が出ています。』<br>「呪術を反せますか？」<br>『弱める事は出来ますが、反すまでは……』<br>ぬかった、とクトゥランが唇を噛む。こちらの力を多少削いでも、正神官をつけるべきだったか。自分かシンドック、あるいはウラワリならば、戦場でもなんとか神を降ろせたかもしれないと思う。<br>「ヴァンシャ殿、呪術師を探してください」<br>頷いたヴァンシャの前にある石座の光が、さらに明るさを増した。</p><p name="e3205973-61e5-4787-bd70-8da3e153c729" id="e3205973-61e5-4787-bd70-8da3e153c729">『魔物が出ました！』<br>クルタの声が上ずる。広間に驚愕の声が上がる。<br>「魔物ですか？　この昼日中に？」<br>はい、と答える声が動揺している。<br>『今までに見たことのない、大きな魔物もいます』<br>クルタも前線に出たのだろう。壁泉に戦場が映し出される。戦場より少し離れた小高い丘の上らしい。<br>人の倍ほどもある大きさの魔物が数体、当たるを幸いに兵をなぎ倒している。ぎらりと光る大きな目、振り乱した髪、長い牙を持つ口からは咆哮。手が何本もある魔物もいる。<br>その足下には人と同じくらいの大きさの魔物達。人に似た形ではあるが獣面のもの、長い爪を持つもの、鱗や尾を持つ動物と交ざり合ったような魔物もいる。<br>日中であるからか魔物の動きは鈍く、攻撃してくる力もさほど強くはないのだが、魔物と戦ったことのない兵達は恐怖に逃げ惑うばかりだ。</p><br/><a href='https://note.com/long_hyena6457/n/nec09b1d5bf76'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>天羽薫</note:creatorName>
      <pubDate>Wed, 08 Jul 2026 23:44:15 +0900</pubDate>
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      <title>闇月王（あんげつおう）＃14（第六章①）</title>
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      <description><![CDATA[<p name="1be5f8f1-0844-4a7d-b1ae-461628297fc4" id="1be5f8f1-0844-4a7d-b1ae-461628297fc4">「北の領地シンガラジャで反乱が！」<br>王宮でのいつもの朝の会議。卓を囲んでいた国王達の前に、神殿からの急使が駆け込んできた。<br>「領主の私兵が背いたとのこと、シンガラジャの神殿から連絡がありました！」<br>「なんだと！アナクはどうした！」<br>国王がシンガラジャを治める領主の名を叫ぶ。<br>「それが、御一族は全て――」<br>使者が言葉を途切らせる。<br>「神殿もその後すぐ襲われたようです……連絡はもうつきません」<br>「出軍だ！兵を召集しろ！」<br>立ち上がった王が、会議に同席していた大神官を振り返る。<br>「戦に出るぞ。神官を寄越すか」<br>「もちろんでございます」<br>クディリが深くお辞儀をした。</p><p name="f9420fb3-82c8-469a-b6f5-2b00c7b68c14" id="f9420fb3-82c8-469a-b6f5-2b00c7b68c14">「北のシンガラジャで反乱が起きた。国王自ら兵を率いて出られる。神殿からも正神官を従軍させる」<br>大神殿の広間、集めた正神官の前でクディリが告げる。<br>「大神官様」<br>クトゥランが発言する。<br>「私達がお供しても、戦場に神を降ろす事など出来ません。清浄な場に降ろしてこそ、ある程度こちらの制御が利くのです。混沌の中に降ろしたところで暴走するだけです」<br>「そんなことは分かっておる」<br>クディリが苦々しげに言い返した。<br>「それでも正神官は出す。シンドック殿、ヴァンシャ殿、ウルク殿に従軍を命じる。クトゥラン殿、そなたもだ。指揮はシンドック殿に。」<br>五人の正神官の内の四人も戦に出すのかと、ヴァンシャとウルクが視線を交わした。それだけシンガラジャの反乱を重視しているのだろうが、ペジェンに一人しか残さないというのはどこか不安が残る。<br>言ったところで聞く耳を持つクディリではないから、誰も口には出さなかったが。</p><br/><a href='https://note.com/long_hyena6457/n/n60007e02bf66'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>天羽薫</note:creatorName>
      <pubDate>Wed, 08 Jul 2026 23:43:11 +0900</pubDate>
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      <title>闇月王（あんげつおう）＃13（第五章②）</title>
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      <description><![CDATA[<p name="1c085a1d-4be8-4ab2-99f2-62aa6759eea8" id="1c085a1d-4be8-4ab2-99f2-62aa6759eea8">「そこのお兄さん、占いはどうだい」　<br>折れた路地の薄暗がりで、小さな椅子に腰掛けた女が声をかけてくる。灰色のベールで顔の半ばを隠している中年の女だ。<br>「良く当たるよ。恋を占おうか」　<br>呪術師か、とセナが呟く。<br>恋、の言葉に思わずエルランガが足を止める。女が濃く塗った唇に笑みを浮かべた。エルランガの身なりが良いとみて、金払いに期待する表情になる。<br>「恋しい相手をお兄さんに夢中にさせようか？　それとも、恋敵がいるなら呪うかい？　ちょっとした病気にするでもいいし、お代次第でどんなふうにもしてやるよ――誰にも分からないようにね」<br><br>不意に潜めた声。濃く縁取りをした瞳がちかりと銀色に底光りして、エルランガがぎくりとする。<br>「手をお見せ」<br>女がぼろきれを甲に巻いた左手を伸ばしてきた。その手を払って、セナが前に出た。<br>「この辺じゃ見ない顔だな？　どこから来た？」　<br>フンと女が顔を背ける。<br>「金を払わないんなら話すことはないよ」　<br>立ち上がって路地の奥に消えていく、その背中を見送ったセナが眉を寄せた。</p><p name="c2a9ab20-d13d-4bda-9ae5-500dba33156a" id="c2a9ab20-d13d-4bda-9ae5-500dba33156a">「……呪術師って女もいるのか」<br>何かを振り落とすように、エルランガがぶるっと身体を震わせた。<br>「呪術っていっても幅広いからな」　<br>隣の女房に嫌みを言われたから呪って欲しい、子供の病気は誰からの呪いなのか調べてくれ。そんなささいな市井のやりとりから――命に関わるような恐ろしいものまで。<br>「ここんとこ、見ない顔の呪術師達が入り込んで来ているらしくてな。そいつらとの揉め事も多くて、町の者はちょっと神経をとがらせてる」<br>「……そうなんだ」　<br>町のことも、もっと知らなければとエルランガが思った。<br>「また、連れてきてくれるか？」<br>もちろん、とセナが破顔した。<br>「じゃあな、ここまで来れば後は独りで帰れるだろ」　<br>遠く王宮の門が見えたところで、セナが手を振った。</p><br/><a href='https://note.com/long_hyena6457/n/n12878c20db95'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>天羽薫</note:creatorName>
      <pubDate>Mon, 06 Jul 2026 22:43:35 +0900</pubDate>
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      <title>闇月王（あんげつおう）＃12（第五章①）</title>
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      <description><![CDATA[<p name="721d4016-bea5-47ec-abfa-d3f7ecee7481" id="721d4016-bea5-47ec-abfa-d3f7ecee7481">「エル、剣の練習か？」<br>小脇に長剣を抱えて、エルランガが王宮の東側にある近衛隊の錬兵場へと向かう。回廊ですれ違った兄王子レンゴンが声をかけてきた。<br>「はい。昨日セナにやられたから、今日はやりかえさないと」<br>「セナ？」<br>聞きなれない名前にレンゴンが問い返す。<br>「最近近衛隊に入ったんです。兄上は知らないかも。カリカの息子だって聞いたけど」<br>ああ、と兄が思い当たった顔になった。<br>「カリカの……するとあれが噂の養子か」<br>「養子？」</p><p name="e276f51e-aa5a-422e-8f8b-fa017ba1fb99" id="e276f51e-aa5a-422e-8f8b-fa017ba1fb99">カリカという女性は王族の傍系にも連なる有力な貴族のひとり。政治的な手腕もあり、宮廷の権謀に長けた女傑として知られている。代々女系の続く家で、口さがない者達は蔭でこっそりと魔女ランダと渾名で呼んでいた。<br><br>成人して直ぐに迎えた夫は間もなく病死し、その後は浮名を流しつつ長く独身を通していたが、つい先日再婚した。周囲を驚かせたのは、その相手が何の変哲も無い平民出の商人であったことだ。<br>容貌が良いわけでも特に資産があるわけでもない、五十を過ぎた初老の男。バリでは身分の高い女性が低い男性に嫁ぐ事はタブーに近かったから、ずいぶんと物笑いの種になった。<br><br>それが相手の商人に若い息子がいることが分かり、ああ、と訳知り顔に頷かれた。カリカは四十も半ばを過ぎ太りじしになってきたとはいえ、その容色は衰えず、また色好みも有名だったからだ。<br>確かその息子は、エルランガとそう変わらない年……いくらカリカが男好きと言っても、そこまではしまいとレンゴンは思っていたが。<br><br>「噂って、どんな？」<br>無邪気に聞いてくる弟に、兄が咳払いで誤魔化す。<br>「セナとやらは強いのか？」<br>うん、とエルランガ。<br>「強いよ。俺なんかやられっぱなし。今まで近衛隊では負けたことなかったから、悔しい。もっと頑張らないと」<br>「ムキになって怪我をするなよ？」<br>「しませんよ。だって俺は剣で兄上を助けるんだもの」<br>それは幼い頃からのエルランガの口癖。兄王子が笑みを零した。<br><br>レンゴンもここ最近はずいぶんと丈夫になって、寝込むこともほとんどなくなった。二十も半ばを過ぎてやっと国内の有力貴族の娘と縁組も決まり、次期国王である皇太子に指名されるのも時間の問題と見られていた。</p><br/><a href='https://note.com/long_hyena6457/n/nea336a278b28'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>天羽薫</note:creatorName>
      <pubDate>Mon, 06 Jul 2026 22:42:41 +0900</pubDate>
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      <title>闇月王（あんげつおう）＃11（第四章）</title>
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      <description><![CDATA[<p name="19f1c99b-6865-4572-a307-972500622287" id="19f1c99b-6865-4572-a307-972500622287">ある日の夕暮れ、アグンの山中。太陽神殿の神官の一人が密林の側を歩いていると、青く輝く蝶が目の前を横切った。蝶を目で追ったその時、どこからか赤ん坊の泣き声がした。<br>こんなところに赤子の居るはずもない。魔物だろうか？　と眉を寄せながら顔を廻らせると、声のする方に蝶がひらひらと飛んでいく。<br><br>警戒しながらも声を追うと、黄昏れの木々の中にそこだけ光が射しているように見える場所があった。恐る恐る近寄れば、柔らかな下草の中で裸の赤子が泣いていた。<br>思わず抱き上げると、その小さな額にあるのは、太陽神の印。<br>「……なんと……？」<br>訝しみながらも、印があるからには捨ててもおけず神殿に連れ帰った。</p><p name="98d47e95-3a11-4045-a269-e5de176cf5cf" id="98d47e95-3a11-4045-a269-e5de176cf5cf">「なんだ？　これは？」<br>連れてこられた赤子を、正神官が困惑の目で見下ろした。その額にあるのは、間違いなく太陽神の印だった。<br>「どういたしましょう？」<br>「どう、と言われても……」<br>神の印があるものを無下に扱うこともできず、赤子はそのまま神殿で育てられることになった。<br><br>その赤子がただの子供ではないことに、正神官が気づいたのはすぐだった。<br>赤子の上に、太陽神が訪れてくるのだ。<br>眠るその身体の上に、上げた手の小さな指先に。太陽の光が凝ったような金の粒子が時おり空から降ってくる。<br>それが太陽神だと言うことは、正神官にはすぐに分かった――そして恐れた。<br>正神官でもない者に太陽神の祝福があるなど、あってはならないことだ。もしかしたら、いずれこの子供に恩寵が移るのかもしれない。<br>――誰にも知られてはならない。<br>正神官は、その赤子を太陽の光が届かない神殿の地下に閉じ込めた。赤子の世話をするのは、下仕えの神官ひとり。</p><br/><a href='https://note.com/long_hyena6457/n/n99c570b54c80'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>天羽薫</note:creatorName>
      <pubDate>Mon, 06 Jul 2026 22:41:48 +0900</pubDate>
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      <title>闇月王（あんげつおう）＃10（第三章③）</title>
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      <description><![CDATA[<p name="993e20df-321a-4b99-b47e-c2cd8bb06eb4" id="993e20df-321a-4b99-b47e-c2cd8bb06eb4">「……お前のご主人は、どこだい？」　<br>夜、部屋に入ってきた青い蝶にエルランガが話しかけた。<br>ひらりひらりと纏わりつくように蝶が飛ぶ。窓の外を透かして見ても、今日は求める姿は見えない。　<br>伸ばした指先に降りた蝶が、そっと羽根を休めた。　<br>――クトゥラン。　<br>囁けば、ふるりと羽根を震わせた蝶が夜の闇の中に飛んで行った。</p><p name="0f3fb50d-f35e-4d17-8237-35afa6069555" id="0f3fb50d-f35e-4d17-8237-35afa6069555">「聞いたか、クトゥラン様のこと」<br>「ああ、大神官の葬儀に神降ろしが出来なくば、恩寵を他の者に移すとか」「それはつまり……」<br>「……そういうことよ」　<br>王宮での噂話がエルランガの耳にも入ってくる。　<br>恩寵を移すって、それって――。　<br>エルランガは平静ではいられなかった。</p><br/><a href='https://note.com/long_hyena6457/n/n237a6fb6abce'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>天羽薫</note:creatorName>
      <pubDate>Fri, 03 Jul 2026 23:33:07 +0900</pubDate>
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      <title>闇月王（あんげつおう）＃9（第三章②）</title>
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      <description><![CDATA[<p name="8022f740-eb8b-44eb-9694-06fee36844f8" id="8022f740-eb8b-44eb-9694-06fee36844f8">「……あ」<br>その夜、開かれたままのエルランガの部屋の窓から入ってきたのは、一羽の蝶。青い鱗粉がランプの炎に煌めく。<br>この蝶は――もしかして。<br>急いで窓際に立てば、月の光の中に立つ影があった。窓枠を開け放って声をかける。<br>「クトゥラン殿！」<br>「王子……今日は申し訳ありませんでした。奉納の舞で神を降ろせなかったのは、私の力が足りなかったせいです。お祝いの儀式に水を差してしまいました」　<br>歩み寄ってきたクトゥランの月光を映した瞳が揺れている。エルランガの顔の脇を通った蝶が、ふわりと外へ漂っていった。</p><p name="40337111-d145-472c-8765-da87228d7858" id="40337111-d145-472c-8765-da87228d7858">お詫びをしておきたくて、とそれだけ言うとクトゥランが背を向ける。「――待って！」　<br>窓をひらりと飛び越えて、エルランガが闇の中に降り立った。クトゥランの肩に手をかける。<br>「待ってください」　<br>振り向いた琥珀の瞳が、無表情に見返してくる。<br>「神の恩寵が……離れたのですか？」　<br>自分の言葉にエルランガの心臓がどきりと打つ。正神官の座を失ったら、この人はどうなるのだろう。そんな不安に顔を曇らせたエルランガに、まさかとクトゥランが軽く返した。<br>上がった指先が額の印に触れる。</p><br/><a href='https://note.com/long_hyena6457/n/nbd9ab1dc4a25'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>天羽薫</note:creatorName>
      <pubDate>Fri, 03 Jul 2026 23:31:43 +0900</pubDate>
      <link>https://note.com/long_hyena6457/n/nbd9ab1dc4a25</link>
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      <title>闇月王（あんげつおう）＃8（第三章①）</title>
      <media:thumbnail>https://assets.st-note.com/production/uploads/images/291018631/rectangle_large_type_2_1f989c394cc89feccba69f182d3361ac.jpeg?width=800</media:thumbnail>
      <description><![CDATA[<p name="86d27530-ef23-4e5d-b4b4-6b73dfcbcfd4" id="86d27530-ef23-4e5d-b4b4-6b73dfcbcfd4">「……ツツ」<br>刺青の刻まれた肩を軽く押えて、自室の長椅子に横たわったエルランガが呻いた。<br>男子の成人の証である刺青。彼の背には紺の線で彫られた王家の紋章であるバロンが牙を剥いていた。まだ色は入っていない。<br><br>「今日はここまでにしておきましょう」<br>針を拭って刺青師が立ち上がった。<br>「彫った線が落ちついたら、色を入れます」<br>痛みますかと聞かれて、少し、とエルランガが正直に答える。<br>「冷やすと楽ですが、清潔な布と水を使って下さいますように」<br>上腕に刻まれた文様を眺めながらエルランガが頷いた。<br>「刺青をすると、皮膚表面の神経が死んでしまいます。人によっては感覚がなくなることもあります。軽い傷がついても気づかない場合が多いので、お気をつけ下さい」<br>　<br>「綺麗に線が入りましたね」<br>刺青師と入れ替わるように部屋に入って来たヴァンシャが、エルランガの背に視線を流す。<br>「初めてお会いした時はまだ子供子供していたのに、もう成人ですか」<br>「これからもヴァンシャ殿にはよしなにお導きを」<br>口先だけは一人前だと、ヴァンシャがくすりと笑った。<br><br>「しばらく私共はこちらに伺えなくなるかもしれません。あなたの成人の儀式の準備もありますし」<br>「……次の大神官の選定もあるし？」<br>ヴァンシャが、ほう、という顔で見返してくる。<br>「大神官様の容態がお悪いと聞きました。それで最近神殿の方々が妙にばたばたしているのかなと。選定がもめているのですか？」<br>「候補は何人か上がっています。蒼海神殿副神官のクディリ殿、風凰神殿のウラワリ殿、水鱗神殿からも一人……それにクトゥラン殿」<br>意味ありげに間を置かれた名前に、エルランガがヴァンシャを見返した。<br><br>「クトゥラン殿ならば適任でしょう。正神官としての能力は誰よりも優れていると聞いています」<br>単純ですねと言われて、エルランガがむっとする。<br>「大神官は神殿全ての統括……神官としての能力よりも、政治的手腕が必要とされます。大神官となるのは正神官でなくても問題はない。実際今の大神官のラジャ様は正神官ではなかったですしね」<br>「クトゥラン殿が大神官の執務を代行していたことで、あの方の手腕に不足のないことは証明済みではないですか」<br>「王子は彼が大神官に相応しいとお考えですか」<br>その問いに含むものを感じたエルランガが、反対に問い返す。<br>「……あなたはどうなんです？」<br>「私は、あの方は大神官になるべきではないと思っています」<br>さらりと返された言葉。<br><br>「なぜです？」<br>「彼が人とは違うからです」<br>明快なその答えに、エルランガが怯む。<br>「……あなたがそんな偏見を持っていらっしゃるとは思いませんでした」<br>ヴァンシャが肩を竦めた。<br>「偏見はありませんよ。彼が何であれ、神が受け入れている以上神官として問題はない。問題はあの方が年を取らないことです。重要な地位に同じ者が長く留まることは、単純に好ましくない。それは宮廷でも同じでしょう？」<br>「……クトゥラン殿は、そんな方では……引き際くらい心得ていらっしゃる方です」<br>「ずいぶんあの方をご贔屓ですね」<br>「……そんなつもりでは」<br>エルランガが口篭る。<br>ヴァンシャの顔を掠めた色の意味を捉える暇もなく、次の瞬間には真顔になった黒い瞳に見据えられた。<br><br>「引き際と仰ったが、本来ならアグンに戻るべきところを、クトゥラン殿はもう十年近くペジェンに引き止められている。……あの方は、情に脆い」<br>「あ」<br>すい、と伸ばされたヴァンシャの指が、エルランガの顎を捉えた。端正な顔が間近に寄せられる。<br>「――あの方に触れてはいけません」<br>　囁かれて、え？　とエルランガが瞳を瞬く。<br><br>「あなたや私がいなくなった後も、クトゥラン殿はこの世界に留まり続けるでしょう。残していかなければならない者を、情で縛ってはいけない」<br>「――どういう意味ですか」<br>なんとなくむっとして、エルランガが挑戦的な目で見上げた。<br>「分からないならその方がいいでしょう」<br>薄く笑ったヴァンシャが指を離す。<br>「分かる時が来たら、思い出してください」</p><p name="a926c8d6-d867-45e2-84fa-ecfac8e3e0c6" id="a926c8d6-d867-45e2-84fa-ecfac8e3e0c6">そしてエルランガの成人を祝う儀式の当日。ペジェンは祭り一色になっていた。<br>町中の至る所に飾られた花々や、練り粉で作られた色鮮やかな細工物。そこここで鳴らされるガムランの音。祭りといえばつきものの闘鶏に興じる男たちの歓声。王宮から各神殿に奉納される供物を、頭に乗せて運ぶ正装した女達の華やかな行列。<br>屋台がぎっしりと沿道を埋め、焼いた肉や酒、スパイスの香りが風に乗る。<br>王宮の広場では五大神殿から神降ろしの舞が奉納される。それを一目見ようと、朝から民衆が押しかけていた。<br>空は晴れやかに高かった。</p><br/><a href='https://note.com/long_hyena6457/n/n585b0593d12a'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>天羽薫</note:creatorName>
      <pubDate>Fri, 03 Jul 2026 23:30:41 +0900</pubDate>
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      <title>闇月王（あんげつおう）＃7（第二章③）</title>
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      <description><![CDATA[<p name="cd87d319-b252-4fa2-94ed-e49a684ac3b7" id="cd87d319-b252-4fa2-94ed-e49a684ac3b7">王宮のいつもの部屋で待っていたクトゥランがノックの音に顔を上げる。入ってきたのは王妃付きの女官だ。<br><br>「今日よりはエルランガ様の教師は別の方をお願いすると、王妃様よりのご伝言でございます」<br>「それはまた急な……何故ですか」<br>眉を顰めたクトゥランが聞き返す。<br>「さ……私は」<br>答えずに、軽く頭を下げた女官が下がっていく。<br><br>王妃に嫌われていることは承知済みだが、エルランガに教育を施す事は国王の意向でもある。さてどうするかと思案していると、そっと開いたドアから滑り込んできたのは、当のエルランガだった。<br>「王子」<br>何かあったのですかと訊きかけた言葉を呑み込んだのは、エルランガの強張った表情に気づいて。<br>「……あなたが、父に側室を勧めたと……母上が」<br>いきなりの言葉に、クトゥランが目を見開く。<br>「そんな事、仰ってはいないですよね？」<br>ひたりと真っ直ぐに見つめてくる黒い瞳。<br><br>「確かに母上はあなたを嫌っているけれど……でもあなたはそんな風に意地悪をするような人じゃない。あなたが言ったのではないですよね？」<br>クトゥランが唇を引き結んだ。<br><br>もちろん国王に側室を勧めたのは、意趣返しなどというものではない。反対に王妃とエルランガの身を守るためだった。しかし当人を目の前にして言えるわけがない。<br>あなたを父王の手にかけさせないためです、とは。<br><br>「クトゥラン殿！」<br>無言のままのクトゥランにエルランガが苛立った声を上げた。<br>「違うって言ってください！」<br>クトゥランが視線を逸らす。エルランガがぎゅっと唇を噛んだ。<br>「……俺は、あなたが好きだったのに」<br>その言葉に、クトゥランがはっと顔を戻す。王子の顔に浮かんだ傷ついた表情に、身体のどこかがずきりと痛んだ。<br>くるりと背中を向けたエルランガが、部屋を走り出ていった。</p><p name="4515124b-d6d8-4ef7-b017-18298450d243" id="4515124b-d6d8-4ef7-b017-18298450d243">「クトゥラン」<br>王宮の出口へと回廊を辿るクトゥランの背に、声がかけられた。振り向けば国王が立っている。<br>「ラダから、お前をエルの教師から外すと言われた……誰ぞ余計な差し出口をした者がいるようだな」<br>無言でクトゥランが国王を見返す。<br>「ラダが何と言おうと、エルランガの教育はお前に任せる。いいな」<br>「陛下」<br>遮るように発せられた言葉に、国王が眉を顰める。<br><br>「教師は他の者をお探しください」<br>「なぜだ？」<br>「王子は、私の顔をもう見たくないようですから」<br>「……あれに嫌われたでもしたか？」<br>国王の声に、ほんの僅か、面白がるような響きが混ざる。<br>「人に厭われて堪えることがあるのだな――そなたでも」<br>クトゥランが眼差しを厳しくした。<br>「つまらないことを仰る」<br>感情を消した表情で去っていく後ろ姿を、物思わし気に国王が見送っていた。</p><br/><a href='https://note.com/long_hyena6457/n/n75bc2028abee'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>天羽薫</note:creatorName>
      <pubDate>Fri, 03 Jul 2026 12:49:27 +0900</pubDate>
      <link>https://note.com/long_hyena6457/n/n75bc2028abee</link>
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      <title>闇月王（あんげつおう）＃6（第二章②）</title>
      <media:thumbnail>https://assets.st-note.com/production/uploads/images/290886853/rectangle_large_type_2_1858f39c7dce5f29bf6ba53b926e6fbf.jpeg?width=800</media:thumbnail>
      <description><![CDATA[<p name="02c633a0-0a30-4ef5-b1da-d7394622fdf8" id="02c633a0-0a30-4ef5-b1da-d7394622fdf8">翌日は、クトゥランの言った通りの嵐となった。この分だと刈入れ間近であった稲は、泥を被ってしまうかもしれない。<br>「水鱗神殿や風凰神殿の人たちは、何もしないんですか？」<br>窓を叩く雨音にエルランガが眉を顰める。<br>「祈っているはずですよ」<br>「でも止まないじゃない……祈りが足りないんですか？」<br>クトゥランが苦笑した。<br>「彼らがやっている事は、嵐の力を少し削ぐか方向を逸らすように祈るだけです。暴風雨を完全に止ませることは、出来るとしても、してはならないことです」<br><br>テーブルの上にあった水差しから、水を器に注ぐ。<br>「この器がこの島、水が暴風雨の力だとします。風雨を止ませるには、この水を器から出さなくてはならない」<br>うん、とエルランガが頷く。<br>「これを空けたら、水はテーブルの上に零れますね……器を空にして、この島から暴風雨を除いても、その力それ自体がなくなるわけではない。風雨の力はテーブルの上……別の場所に移るだけです」<br><br>「海の上とかに動かせば？」<br>考え考えエルランガが言う。<br>「海の真ん中であれば影響がないと言い切れますか？　潮の流れが変わるかもしれない。海面の温度が下がって生き物に影響が出るかもしれない。自然の力を無理に歪ませることは、どんな反動が出るか予測がつかないだけにとても危険です。だから我々が出来る事……しても良いことは、この水を少しずつ零していくくらいなのです」<br>「神殿の人たちは、神様の力を使って何でもできるんだと思ってた」<br>案外つまんないねというエルランガに、クトゥランが小さく笑った。</p><p name="fac6955e-c9e8-41af-8102-3a7f005fd369" id="fac6955e-c9e8-41af-8102-3a7f005fd369">「はじめまして、エルランガ王子」<br>「……あ」<br>その日いつもの時間に王宮を訪れたのは、クトゥランではなかった。白一色の神官の装束に巻かれた腰帯の色は、金糸で縫い取りがされた深紅。<br>「地母神殿正神官のヴァンシャと申します」<br>揃えた前髪。うなじでひとつに束ねた癖のない真直ぐな黒髪には、地母神の印である石榴石をつけた頭巾。しなやかな痩躯の長身、切れ長の黒い瞳のその顔はまだ若い。二十台の半ばを過ぎたくらいだろうか。<br>その額には、地母神の印が赤く捺されている。<br><br>「あの……今日は、クトゥラン殿は？」<br>エルランガがおずおずと尋ねる。<br>「クトゥラン殿には大神官様のお仕事を兼務されております。今日はどうしても外せない用向きがあるとの事、代わりに私が参りました」<br>一見冷たくも見えるほど整った顔に、悪戯っぽい笑みがちらりと閃く。<br>「それにクトゥラン殿が珍しくご執心の方を、拝見しておきたくもありましたし」<br>「ごしゅう……なんですって？」<br>聞き返したエルランガに、いえ、とヴァンシャがまた微笑んだ。<br><br>「……クトゥラン殿はお忙しいんですね」<br>「そうですね。正神官のお仕事もありますし、本来ならば王宮の教育係などなさっている余裕はないですね」<br>ずばりと言われてエルランガがぐっと詰まる。<br>「……すみません」<br>形のいい薄い唇が笑みの形になる。<br>「その大事なお時間を割いてあなたにお教え致していること、ゆめお忘れなきように」<br>はい、と殊勝に頷くエルランガの前に、ヴァンシャが座った。<br>「それで今日は何をお教えしましょうか？」</p><br/><a href='https://note.com/long_hyena6457/n/n8c6d46fdebf6'>続きをみる</a>]]></description>
      <note:creatorImage>https://assets.st-note.com/production/uploads/images/290273005/profile_14395c1c209c561404424c29374ea37a.jpg?fit=bounds&amp;format=jpeg&amp;quality=85&amp;width=330</note:creatorImage>
      <note:creatorName>天羽薫</note:creatorName>
      <pubDate>Fri, 03 Jul 2026 11:45:03 +0900</pubDate>
      <link>https://note.com/long_hyena6457/n/n8c6d46fdebf6</link>
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      <title>闇月王（あんげつおう）＃5（第二章①）</title>
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      <description><![CDATA[<p name="5c8a6037-592d-4593-9843-f5d31bd2d293" id="5c8a6037-592d-4593-9843-f5d31bd2d293">次の日からクトゥランはエルランガの元にやって来た。<br>彼が教師となることは国王の命令であったから、王妃も否とは言えなかった。しかし後宮に入れる事だけは固く拒んだので、エルランガは王宮の一室で彼に会うことになった。<br><br>後宮ではいつも母や女官の目があった。<br>それが鬱陶しいとまでは幼いエルランガに自覚は無かったが、僅かな時間でもそこから出ることがどこか気持ちを軽くするのは分かったから。<br>あの腕白がいつまで大人しくしているものかという周囲の思惑を裏切って、エルランガはクトゥランの元で嬉々として学び続けた。</p><p name="b70afa1e-cf78-4789-9607-106199bc6786" id="b70afa1e-cf78-4789-9607-106199bc6786">「アグン山には、今日も雲がかかっていますね」<br>机に向かっていることに飽きたエルランガが、窓辺によって空を指差す。<br>熱帯樹の向こうには、遠く聖なる山の頂が見えている。クトゥランが彼の傍らに立って、同じように視線を遠くに投げた。<br>「山にはどうしていつも雲がかかっているか、ご存知ですか？」<br>クトゥランの言葉に、黒い瞳がぱちくりと見上げる。<br><br>「昔、山々には羽根があって、自由に空を飛んでいたんです。でもそれではちっとも地形が定まらない。川の神も稲の神も、自分達はどこに居たらいいのかと困っていました」<br>窓から青い蝶が風に乗って舞いこんできた。肩口に羽根を休めたそれに、クトゥランが目を細める。<br><br>「何とかして欲しいと頼まれた風の神が、その鋭い剣で山の羽根を切ってしまいました。それから山は地面の上から動かなくなりました。切られた羽は雲となって、ずっと山の側に漂っているのだそうです」<br>「そんなのお伽噺じゃないですか」<br>もう子供じゃない、とエルランガが唇を尖らせる。これは失礼しましたと言ったクトゥランの顔に、笑みが浮かんだ。<br>「少し外に出ましょうか？」</p><br/><a href='https://note.com/long_hyena6457/n/n326682d8dcb2'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>天羽薫</note:creatorName>
      <pubDate>Fri, 03 Jul 2026 11:43:40 +0900</pubDate>
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      <title>闇月王（あんげつおう）＃4（第一章④）</title>
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      <description><![CDATA[<p name="93dc9ad6-5dd3-496d-a6a2-3d9316abc832" id="93dc9ad6-5dd3-496d-a6a2-3d9316abc832">翌朝、エルランガと王妃は再び王宮に来た。あの後どちらも眠るどころではなく、目が赤い。<br>国王の脇にはクトゥランが立っている。一晩中事後処理に当たっていた彼も眠ってはいないはずなのに、涼しげな姿からは微塵も疲れは感じられない。<br>ただその指先に巻いてある血の滲んだ布が、夕べの出来事が確かにあったことを示していた。<br><br>「あの魔物を差し向けた者は分かりましたか」<br>王妃の問いに王が頷く。<br>「大臣のワヤンだ」<br>その精悍な顔が心痛に歪んだ。ワヤンは先代の国王から仕えている重臣の一人だった。<br>「夕べ私たちが着いた時には、呪術師は返された悪霊に半ば喰われていた。今輪の際にワヤンに頼まれたと話しおった」<br>「……ワヤン殿は、誰よりも敬虔な信者として知られておりました。神殿が禁じている呪術に、まさか手を出すわけが無いとは思ったのですが……」<br>クトゥランが言葉を添える。<br>「半信半疑のまま奴の屋敷に行って問い質すと……白状した」<br><br>「なぜ私達を？　私がジャワの者だからですか」<br>きつい口調で王妃が問い詰める。王が宥めるようにその肩に手を置いた。<br>「それよりも、お前がこの国の神々を軽んじていることを快く思っていなかったらしい。そういう者達が居ることぐらい分かってはいたが、まさかこのように直接なことを仕掛けてくるとは……」<br>王の言葉に王妃の顔が青ざめた。<br><br>「妃殿下」<br>クトゥランが口を切った。<br>「夕べの魔物は、あなたと王子を見つけていた。なぜか分かりますか？」<br>無言で王妃が首を振る。<br>「それはあなた方が全くの無防備だからです。神に守られていない……この国では、それは大変危険なことです」<br>俯いていた王妃がキッと顔を上げた。<br>「危険なのは、そなたではないのですか」<br>肩に置かれていた王の手を振り払って、王妃が言葉を続ける。<br><br>「そなたの話は聞いていました。もう百年以上も生きているのに、少しも年を取らないとか。馬鹿馬鹿しいただの噂、そんな事があるわけないと思っていました――でも、十年前に会った時からそなたは本当に変わっていない」<br>「ラダ――」<br>「どうなのです？　貴方は本当に年をとらないの？」<br>王の制止を遮って王妃が激しく言い募る。呆気に取られたエルランガが、母親とクトゥランを交互に見やった。<br><br>「――本当です」<br>静かにクトゥランが答えた。エルランガが息を呑む。<br>「ではあなたも魔物だわ！　そんなものを信用するなんて――」<br>「ラダ！」<br>ぱん、と乾いた音がした。頬を平手で軽く張られた王妃が国王を睨み返す。<br>「彼を侮辱する事は、許さない」<br>王が厳しい声を出した。<br>「……魔物だわ」<br>王妃が身体を震わせる。<br>「彼は太陽神が認めた正神官だ。悪しきものであれば、神が彼を受け入れるはずがない」<br>「わたくしは嫌です――絶対にイヤ」<br>「母上――」<br>手首を掴まれてエルランガが声を上げる。唇を引き結んだ王妃が彼を引きずるようにして、部屋を出て行った。</p><p name="541f4621-7c34-4242-b029-30531458e1da" id="541f4621-7c34-4242-b029-30531458e1da">「……すまない。嫌な思いをさせた」<br>二人が去った後、王がクトゥランを振り返った。<br>いえ、と薄く笑うその顔は、そういう扱いに慣れていると無言で語っている。<br>「今までは呪術師も黙認してきたが、王族を呪うなど言語道断。少なくともペジェンでは取り締まりを厳しくせねば」<br>「陰の中でしか生きられぬ者たちです。それに、占いやささやかな呪いは、民の生活になくてはならぬもの。あまり厳しいことはなさらぬよう」<br>「正神官のお前がそれを言うのか」<br>国王が苦笑した。<br><br>「今回関係した呪術師については、よくよく調べねばならん。……宮中もな」<br>王妃とエルランガを狙うものが、まだいるかもしれない。厳しい顔になった国王に、クトゥランの眉が曇る。その肩を国王が軽く叩いた。<br>「ともかく、そなたが山を降りてきていて助かった……大神官殿はそんなにお悪いのか？」<br>聖なる山アグンの太陽神殿に居たクトゥランを呼び戻したのは、大神官自らだった。秀麗な眉が、つと曇る。<br>「いえ、ただ珍しく長く臥せってしまわれたので、少し気弱になっておられるだけです……八十を超えたご高齢でもありますし」<br>「当面、大神官の職務をそなたが肩代わりすると聞いた」<br>「はい、しばらくはペジェンの副神殿におります」<br>「大神官の任は終身制……ご高齢になってくると、ご本人も周りも大変だな」<br>クトゥランが小さく笑みだけを返す。<br><br>その人指し指に巻かれた布に王が視線を落とす。手を取られたクトゥランが微かに目を見張った。<br>王の唇が指先に触れる。<br>「十年ぶりか……そなたを呼び戻してくれたこと、大神官殿に感謝しなくてはな」<br>「……ウダヤナ」<br>クトゥランの唇から思わず零れた自分の名前に、国王が目元で笑い返した。</p><br/><a href='https://note.com/long_hyena6457/n/n382156bef9ed'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>天羽薫</note:creatorName>
      <pubDate>Fri, 03 Jul 2026 11:42:27 +0900</pubDate>
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      <title>闇月王（あんげつおう）＃3（第一章③）</title>
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      <description><![CDATA[<p name="0a9ec0e2-5805-4953-8f9a-7dfc44a17f13" id="0a9ec0e2-5805-4953-8f9a-7dfc44a17f13">その日の深夜、エルランガの寝室を数人の神官を従えたクトゥランが訪れた。男たちは一様に白一色の装束。クトゥランと違うのは、頭巾に縫い取られている太陽神の紋章に黄水晶がないことだ。<br><br>室内には、既にエルランガと王、王妃とその侍女が居た。青い顔をして王妃の後ろに侍る女官に、クトゥランが眉を寄せた。<br>「お付きの方はお戻しになって頂けませんか？」<br>「こんな時間に侍女も連れずにいるなんて、そんなはしたない真似は出来ません」<br>王妃が一蹴する。<br>苦笑いをした王が、肩を竦めてクトゥランに目配せした。青年が軽く溜息をつく。<br>「ではその円の中に入って下さい。くれぐれも線を踏まないように」</p><p name="fc7fe90c-24c4-43c6-9191-661cdbfcddec" id="fc7fe90c-24c4-43c6-9191-661cdbfcddec">指し示した床を見れば、窓のある側とは反対の壁際に、色砂で大きな円が既に描かれていた。大人が数人座れるほどの大きさだ。クトゥランも含めた五人がその内側に入った。<br><br>床に屈んだ神官たちが、その円の外側にもうひとつ円を描く。そして内外の円の間を何やら複雑な文様で埋め始めた。さらに部屋のあちこちに小さな石を並べていく。<br>「……あれは何？」<br>好奇心に突き動かされて、エルランガが訊ねた。<br>「聖なる山、アグンの聖石です。海の力に対抗するために山の力をお借りするのです」<br><br>「クトゥラン様」<br>神官の一人が作業の終了を告げる。クトゥランが頷いた。<br>「あなた方は部屋の外で待っていてください。こちらから呼ぶまでは、何があっても入ってはいけません」<br>軽く頭を下げて神官たちが部屋を出て行く。<br>それを見送ったクトゥランが床に屈みこむ。口の中で何事かを唱えて指を砂に触れた。描かれた文様が一瞬だけ発光する。僅かに遅れて部屋のあちこちに置かれた聖石が、これもちかりと発光した。<br>侍女が大きく息を呑み、王妃の頬が引き攣った。<br><br>自分達が入っている円を大きく取り囲むように、発光した石が置かれている事にエルランガが気づく。<br>クトゥランが、傍らのエルランガを振り返った。<br>「じっとしていて下さいね」<br>こくりと頷く顔に笑い返して。青年は足元に置いてあった蝋燭の火を吹き消した。<br>　<br>閉めきられた窓。風が木々を揺らす音に混じって、密林の獣が鳴き交わす声が遠くから聞こえてくる。<br>不意にどこからか、ひやりとした風が吹き込んだ。――潮の匂いがした。<br><br>「王妃様……風が」<br>「しっ」<br>侍女の怯えた声を王が制した。海の匂いが強くなる。<br>エルランガの横に片膝で跪いたクトゥランが、その小さな手を握った。<br>「……怖いですか？」<br>落ちてきた闇の冷たさに、虚勢も張れずにエルランガが頷く。<br>「怖いものは怖くていい。それを認めることが、まず大事なのです」<br>窓に視線を固定したまま、神官が囁く。<br>「恐怖は相手が分からないことから生まれます。正しく理解しさえすれば、恐れる必要はない」<br>　――来た、とクトゥランが声を潜めた。</p><br/><a href='https://note.com/long_hyena6457/n/n1789b3804695'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>天羽薫</note:creatorName>
      <pubDate>Fri, 03 Jul 2026 11:40:49 +0900</pubDate>
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      <title>闇月王（あんげつおう）＃2（第一章②）</title>
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      <description><![CDATA[<p name="6e47eee0-d43e-4e7f-87c8-10c5a60ea557" id="6e47eee0-d43e-4e7f-87c8-10c5a60ea557">戻った部屋では、待ちくたびれた教師がうんざりとした顔をしていた。<br>髪に白いものが混じった初老の教師は、突き出し気味の腹を腰帯で締めている。いつも通りのお説教が始まって、エルランガは視線を落とした。こうなってはもう逃げられっこないから、黙って教師の話を聞くふりをする。</p><p name="3e2e9a03-5dbf-4043-8f67-b5b9f7d09754" id="3e2e9a03-5dbf-4043-8f67-b5b9f7d09754">そのうちに、思考はさっき出会った青年の上に落ちていく。<br><br>――太陽神。<br>この国にあまた居る神々の内でも、特に力の強い五柱の神のひとつ。<br>太陽の神、光を司る女神。金色の髪と四本の腕を持ち、白い大きな鳥に乗って天空を駆けると言われている。それぐらいしか自分は知らない。<br>侍女が言っていた「違う世界」ってどういうことだろう？　神様に仕えているって意味なんだろうか。<br><br>この国は王国ではあるが、実際は国王と大神官との共同統治。身分制度を基盤として物質面での支配をしているのが国王ならば、どんな小さな村にも存在する寺院を介して、民を精神面で支えているのが神殿だった。<br><br>この島国には数多くの神と精霊がいる。草木や稲、川や湖、小さな獣や石に至るまで、全てに宿っていると信じられているそれらは、村や町の社や祠に祀られている。<br><br>そういった小さな神々や精霊とは別に、五大神と呼ばれる遥かに力ある五柱の神々が、この国には存在していた。五大神を祀る神殿――太陽神殿、水鱗神殿、蒼海神殿、地母神殿、それに風凰神殿――は、それらを統括する大神殿と共にこの国を宗教面から支配していた。</p><br/><a href='https://note.com/long_hyena6457/n/na317436f0ec4'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>天羽薫</note:creatorName>
      <pubDate>Fri, 03 Jul 2026 11:39:30 +0900</pubDate>
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      <title>闇月王（あんげつおう）＃1（第一章①）</title>
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      <description><![CDATA[<hr name="35361425-0321-4123-bbbe-40a3cfaa2362" id="35361425-0321-4123-bbbe-40a3cfaa2362"><h3 name="779e6df9-1364-4cc8-8295-e962eafedd5c" id="779e6df9-1364-4cc8-8295-e962eafedd5c">あらすじ</h3><br/><a href='https://note.com/long_hyena6457/n/n29cdbac4cc46'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>天羽薫</note:creatorName>
      <pubDate>Fri, 03 Jul 2026 11:35:22 +0900</pubDate>
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