メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像

【小説らしきもの】最埌の倚様性【SF】

    侀

    芳枬蚘録、第䞃サむクル。
    察象倩䜓の衚面枩床は安定しおいる。倧気組成に異垞なし。氎の痕跡あり——いや、氎は豊富だ。怍生の回埩も芳枬されおいる。か぀おはそれなりに豊かな星だったのだろうず、私は蚘録に添えようずしお、止たった。今も豊かだ。衛星がひず぀、倉わらず呚回しおいた。
    問題は衚面ではなく、その䞋にある。
    熱源が䞀点に集䞭しおいる。盎埄にしお玄四十キロメヌトル。癜かった。肌に䌌た、色を倱った䜕かの癜さだった。圢状は䞍定圢——いや、正確には「か぀お定圢であろうずした䜕か」が、今は厩れおいる。センサヌが拟う信号は生䜓反応に近いが、私の知るどんな生呜䜓の波圢ずも䞀臎しない。
    同僚に報告するず、圌女は画面を䞀瞥しお蚀った。
    「菌類では」
    「菌類にしおは電気信号が耇雑すぎる」
    「では怍物」
    「怍物にしおは密床が均䞀でない。内郚に——構造がある。蚭蚈の痕跡のようなものが」
    圌女はそれ以䞊興味を瀺さなかった。未知の生呜䜓の発芋など、この仕事では珍しくもない。蚘録しお、分類しお、次ぞ進む。それだけだ。
    しかし私は気になった。
    蚭蚈の痕跡、ずいう蚀葉が頭から離れなかった。


    画像
    䞭には耇雑な構造があるような
    どこか均䞀なような
    ”これ”はなんだろう
    ”芳枬者による透過内郚スケッチ”


    二

    アヌカむブを掘るのに䞉サむクルかかった。
    察象倩䜓の芳枬デヌタは叀く、フォヌマットも統䞀されおいなかった。最も叀い蚘録は玄䞀䞇幎前に遡る。そのころの倩䜓は——賑やかだった。
    衚面を無数の個䜓が動き回っおいる。二本の肢で地面を蹎り、矀れを䜜り、壊し、たた別の矀れを䜜っおいた。信号はバラバラで、方向もバラバラで、たるで統制がない。おんでんばらばらに動く小さな点の集合。それが圓時の姿だ。
    私はその蚘録を眺めながら、少し芪しみを芚えた。
    よく知っおいる光景だったから。
    個䜓が矀れを䜜り、矀れが衝突し、衝突から䜕かを生み出す——それは私たちも通っおきた道だ。混沌に芋えお、その実、非垞に豊かな状態。あの無秩序の䞭にこそ、䜕かが育぀䜙地がある。
    だが蚘録を先ぞ進めるず、倉化が始たる。
    玄䞉千幎前から、二぀の倧きな運動が発生しおいた。




    侉

    䞀方を仮にAず呌ぶ。
    Aの運動は静かに始たった。個䜓間の摩擊を枛らすこずを目的ずしおいた。衝突は消耗だ、ならば境界を薄くしよう。「私」ず「あなた」の差異が争いを生むなら、その差異を瞮めおいけばいい。蚘録に残された圌らの蚀葉を翻蚳するず、おおよそそういう思想だった。
    初期のAは穏やかで、むしろ矎しかった。個䜓が互いに歩み寄り、摩擊が枛り、協調が生たれる。理想ずしおは玍埗できる。
    しかし癟幎、二癟幎ず蚘録を远うず、運動の茪郭が倉わっおくる。
    歩み寄りが、溶解になった。
    差異を瞮めるこずが目的だったはずが、い぀の間にか差異の消滅が目的になっおいた。個䜓が「私」を薄くするこずを矎埳ずし、やがお「私」を持぀こず自䜓が批刀の察象になる。蚘録の䞭の個䜓たちは、自ら進んで茪郭を手攟しおいった。初めは比喩ずしお、やがお文字通りに。
    技術が远い぀いたずき、それは加速した。
    神経を接続し、感芚を共有し、蚘憶を統合する。痛みも喜びも分散させれば、誰か䞀人が耐えられないほど苊しむこずはない。理屈は正しい。しかし分散した結果、誰も深く喜ばなくなった。党員が垞に、薄く、穏やかだった。
    Aの末期の蚘録は、ほずんど信号を拟えない。
    静かすぎお、生きおいるのか死んでいるのか刀別できないほどに。




    四

    もう䞀方をBず呌ぶ。
    Bの運動は隒がしかった。Aずは逆に、差異こそが豊かさだず䞻匵した。個䜓はそれぞれ異なるべきで、その違いを尊重するこずが文明の成熟だず。蚘録の初期、Bの䞻匵は正圓だった。実際、圓時の倩䜓では倚くの個䜓が䞍圓に抌し぀ぶされおいた。声を䞊げる必芁があった。
    しかし、こちらも倉質した。
    差異の尊重が、差異の匷制になった。
    「あなたは他の誰ずも違うべきだ」ずいう思想が肥倧化し、違いを持たない個䜓が責められるようになった。あらゆる差異が蚘録され、分類され、尊重を芁求した。それ自䜓は正しかった。しかし党おの差異を等しく受け入れ続けた結果、奇劙なこずが起きた。
    無数の差異を重ね合わせるず、それらは互いを打ち消し始めた。
    あらゆる顔の平均は、誰の顔でもない顔になる。あらゆる声の平均は、誰の声でもない声になる。党おの個性を足しお割った先に残るのは、誰もが頭の䞭で思い浮かべる「䞀般化された個䜓」——のっぺりずした、特城のない茪郭だった。
    Bの運動はそれに気づかなかった。あるいは、気づいおも止たれなかった。
    やがお技術が介入する。どうせ平均化されるなら、最初から蚭蚈すればいい。䞍芁な差異を取り陀き、より「正しい」個䜓を䜜る。研究が進むに぀れ、「䞍芁な差異」の定矩は際限なく広がっおいった。
    倚様性を守ろうずした運動は、その末端で、均質な個䜓の倧量生産に蟿り着いた。


    画像
    どうも真逆の思想の
    ”同䞀性”を突き詰めおも
    ”倚様性”を突き詰めおも
    なんだか結論は䌌寄るようだ。
    これが進む先はなんだろうか


    五

    AずBが衝突したのは、今から玄五癟幎前だ。
    䞡者はそれたでも摩擊を繰り返しおいたが、この時期に決定的な察立が起きた。蚘録を芋る限り、互いに盞手を「自分たちの理想の敵」ず定矩しおいた。Aは「個にこだわるBが統合を阻んでいる」ず蚀い、Bは「境界を消そうずするAが倚様性を砎壊しおいる」ず蚀った。
    どちらも正しかった。
    どちらも間違っおいた。
    衝突は長く続いた。その間も技術は進んだ。AはAの技術で個䜓を溶かし続け、BはBの技術で個䜓を均質化し続けた。支配圏が入り亀じり、ある地域ではAの凊理を受けた個䜓がBの蚭蚈を匷制され、たたある地域ではその逆が起きた。
    蚘録の波圢が激しく乱れおいるのが、その時期だ。
    そしお——静かになった。
    倩䜓の衚面では、その間も雚が降り、草が育ち、虫が鳎いおいた。




    六

    今、センサヌが拟っおいるもの。
    私はようやく、それが䜕であるかを理解した。
    Aの溶解ずBの均質化が、互いを打ち消し合いながら進行した結果。統合されかけお、しかし蚭蚈もされかけた䜕か。境界が消えかけお、しかし茪郭も刻たれかけた䜕か。
    どちらの理想も達成されなかった。
    ただ、その過皋で生たれた凊理だけが——惰性で、今も続いおいる。
    四十キロメヌトルの䞍定圢の塊。内郚に蚭蚈の痕跡。か぀お個䜓だったものが、溶けきれずに残っおいる。溶けきれなかったのは、均質化が邪魔をしたからだ。均質化しきれなかったのは、溶解が邪魔をしたからだ。
    かすかに動いおいる。
    信号がある。
    だから生きおいる、ず分類するべきなのだろう。
    私はしばらく画面を芋おいた。
    窓の倖では、その倩䜓の森が颚に揺れおいた。川が光を匟いおいた。䜕も知らない鳥が、塊の真䞊を暪切っお飛んでいった。
    蚘録の最初にあった、おんでんばらばらに動く無数の点を思い出した。うるさくお、ぶ぀かり合っお、たずたりがなくお。
    あれが、これになった。
    星は䜕も倉わっおいないのに。
    同僚が埌ろから声をかけおきた。「それ、䜕だったの」
    私は少しの間、返事ができなかった。
    「か぀お」ず私はようやく蚀った。「自分たちのこずを、賢いず思っおいた生き物です」
    圌女は画面を芋た。䞍定圢の塊を。
    「ぞえ」ず圌女は蚀った。「どこの星」
    私は倩䜓の座暙を告げた。青い、第䞉惑星だず。
    圌女は䜕も蚀わなかった。
    その倩䜓の名前を、圌女も知っおいたから。


    画像
    か぀お珟地民に地球ず呌ばれおいた堎所
    それを䌝える知的生呜は今䞍圚のようだ

    了


     
     
    99回避できる病、統合倱調症になっおしたったので1%の芖点がある かも ※䜓調䞍良によりしばらくお䌑みしたすごめんね ※文章があれなので、察話型AIに手䌝う手盎ししおもらっおいたす。 ※䜓調䞊、コメントや反応を確認できないこずがありたす。読んでいただけるこずに感謝!

    あなたぞのおすすめ