メインコンテンツへスキップ
見出し画像

積読美術館(おまけ)

    待つ時間。

    三十年前、モンマルトルの似顔絵描きのもとへ、毎週ひとりの女が通っていた。

    ある日、女は描いてもらった似顔絵の裏に一行を書き、封筒に入れてセーヌ川へ流した。

    「届いたら、また来るわ」

    翌週から、女は来なくなった。

    手紙は、すぐには届かなかった。

    川岸で拾われた。

    一冊の本に挟まれた。

    その本は海を渡り、ある図書館の地下3階に並べられた。

    誰にも借りられないまま、年月が流れた。

    やがて廃棄された。

    ゴミ置き場で男が拾い、ページを開く。

    古い封筒が落ちた。

    ……

    ……

    数週間後。

    午前零時、パリで最後まで灯りのついているカフェに、

    一人の老人が座っていた。

    老人のもとへ、封筒が届いた。

    老人は、震える手でそれを開いた。

    三十年前の似顔絵。

    裏には、

    あの日から変わらない一行。

    「まだ、待っていますか?」


    『【第66回】3つのお題に空想のひらめきを』×『お題で書きはじめるnote企画』×『毎週ショートショートnote』

    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

    (※現場の違和感を、YouTubeショートでも発信しています。)

    (※MBAの授業内容をまとめています。)

    #3つのお題に空想のひらめきを
    #シロクマ文芸部
    #毎週ショートショートnote
    #積読美術館
    #ショートショートnote
    #現場と経営のあいだ

     
     
     
    大学施設管理の現場責任者。現場で生まれる小さな違和感を、組織が判断できる言葉へ翻訳します。現場知、情報共有、責任と権限、予防保全を中心に考えます。組織や社会構造のズレは、ときどきショートショートにも。

    あなたへのおすすめ