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父には、別の僕が見えていた

※人物・場所・時期の一部は、特定を避けるために再構成しています。

大人になってから、父に子どものころの話をしたことがある。

姉と二人で家にいることが、当時の僕にはしんどかった。

そんな話をした。

父は僕の話を聞いて、そんなはずはない、と言った。

姉がいつも一緒にいたことで、お前は安心できたはずだ。

そういう趣旨のことを言われた。

僕は、姉が悪かったと認めさせたかったわけではない。

父の子育てを責めたかったわけでもない。

ただ、子どものころの自分がどう感じていたのかを話したかった。

けれど父から返ってきたのは、「そんなはずはない」という言葉だった。

僕には、自分が感じたことまで否定されたように聞こえた。

そうだったのか。

まずは、そう聞いてほしかった。

父には、父から見えていた僕がいた。

姉と同じ家にいて、同じ部屋で過ごしている。

家では明るく、元気で、よく喋る。

父には、姉が一緒にいることで、僕は安心しているように見えたのかもしれない。

一方で僕は、姉との関係の中で、自分には発言権がないと感じることがあった。

姉の都合が優先され、言うことを聞かなければならないと思っていた。

姉との時間が、いつも苦しかったわけではない。

仲良く過ごした時間もあった。

姉が一緒にいたから助かったことも、きっとあったと思う。

それでも、しんどいと感じていた僕もいた。

父から見えていた僕と、僕の中にいた僕は、同じ子どもなのに違っていた。

考えてみれば、家にいた僕と外にいた俺さえ、まるで別人のように振る舞っていた。

見てほしいのに、知られたくない。

僕は自分から隠していたのに、どうして分かってくれないのかと思っていた。

それでも、大人になってようやく言葉にした気持ちへ、「そんなはずはない」と返されたことは苦しかった。

父の中には、姉といて安心していた僕がいる。

僕の中には、姉といるのがしんどかった僕がいる。

あの家には、どちらの僕がいたのだろう。

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