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「若ハゲ」という残酷な運命に抗ってみた

    始まりは突然に

     すべての始まりは、一昨年(2023年)の冬、旅行中に泊まったホテルの大浴場の洗い場でシャンプーをしていた時だった。泡をシャワーで洗い流してさっぱりしたのち、ふと鏡に映った自分の額が目に入った時、あれ?と、微かな違和感を抱く。生え際、こんなに寂しかったっけ・・・。いや、そんなハズないよな・・・。

     当時は鏡などという気の利いたものなどないボロアパートに住んでいたし、元々自分の顔は見たくもないので、普段の生活で自分の顔というか髪の状態をあまりまじまじと確認というか観察する機会がなかったのである。

     とりあえずこの時は、まぁ今日はちょっと頭皮の調子が悪いだけだ(?)と言い聞かせ、部屋に戻って酒を飲んで一旦忘れることにしたが、以降、スーパー銭湯などに行くたびに「あれ、やっぱりおかしい・・・」と感じるようになり、いわゆる「若ハゲ」の状態に陥っているのではないか、という疑念を持つようになった。

    今日銭湯で鏡に映った自分の顔をしげしげと見てたら、やっぱり生え際がだんだん後退してる気がする、気のせいじゃない
    若ハゲなんてもう人生オワリだよな?
    これじゃ女に好かれるわけない

    — 孤独猿 (@Lonely_Monkey_y) February 24, 2024

    ⇩は四国旅行の時のツイートである

    今日吊り橋渡った後に温泉入って身体洗ってたら、やっぱり鏡見るたび若ハゲがどんどんひどくなってる気がする…😱

    これじゃ女どころか誰からも好かれんやんけ、早く駆除してくれ

    — 孤独猿 (@Lonely_Monkey_y) July 14, 2024

    大浴場の鏡でみっともない生え際が嫌でも目に入り、鬱病を発症しながらホテルの部屋に帰着

    — 孤独猿 (@Lonely_Monkey_y) September 6, 2024

     その薄々とした●●●●●疑いが確信に変わったのは、昨年の夏、ある知人と数年ぶりに再会したとき、開口一番「髪、薄くなった?」との指摘を受けたことである。僕は一瞬沈黙したのち、「アッ・・・なんていうか、苦労してるからかなァエヘヘヘヘ」とか言って誤魔化そうとしてみたが、内心は全く穏やかではなかった。やっぱりそうだったのか・・・。

    久々に会った知人に「あれ、髪薄くなった?」って言われてから外出時に帽子は必須のアイテムとなった

    — 孤独猿 (@Lonely_Monkey_y) October 20, 2024

     こうして他人から指摘されて初めて「あっ、これは本当にやばいかも」と自分のハゲの現状に危機感を持つようになったのだが、そういう人間関係、つまり些細なことでも指摘してくれるような気の置けない友人が1人でもいれば、もっと早く治療に踏み切れていただろう。ずっと独りでいる生活だと、自分を客観視することは非常に困難だ。年中孤独なライフスタイルのデメリットがこういうところに出ている。

    仕事中に1年数ヶ月前の自分の横顔の写真を見る機会があったんだけど、髪の生え際がとんでもなくスカスカだったので思わず笑ってしまった
    そりゃ女性社員から冷たい目で見られるわけだ

    — 孤独猿 (@Lonely_Monkey_y) February 27, 2025

    20代 生え際 後退 止める 🔍検索

    — 孤独猿 (@Lonely_Monkey_y) July 14, 2024

    若ハゲの現状を重く受け止め、塞ぎ込む男

     さて、その知人からの指摘が結果的に僕のお尻に火をつける形となったわけだが、とはいえやはり面と向かって薄毛を指摘されたことはかなりショックで、しばらくは精神的にも落ち込む日々が続いた。ちなみに恥を承知でその当時の生え際の状態を晒すと、こんな感じであった。

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    シャワーを浴びた後に髪をかき上げるとこんな感じ。綺麗なM字カーブが出来ている。いや綺麗ではなく、汚いのだ。ついでにおでこの肌荒れも汚い。すべてが汚い

     なぜ俺が若ハゲに?なぜこんなにも神は残酷なのか?と思わずにはいられなかった。元々さらにチビ、一重エラ張りのブサイク、コミュ障、多汗症、剛毛(おでこから下)、運動音痴、などなど両手で数えるには足りないほどの負の要素に加え、このたびの若ハゲ発覚でとどめを刺されてしまった。もう人権があるとかないとかいうレベルの話ではない。

     ハゲというのは、ブサイクと並ぶ、「あらゆる人に間違いなく嫌われる重大な負の要素」だと思っている。誰もかれもから問答無用で見下される。年寄り、滑稽、不潔、みっともない、そんなマイナスな形容詞が次々と頭に浮かぶ。

     言わずもがな、特に女性には親の仇のように忌み嫌われる。僕は男なのでなぜ女性がハゲを嫌うのか言語化することはできないが、ある記事では「本能的に忌み嫌う」「生理的に無理」と書かれていた。大変残酷で厳しい言葉だが、女性のお気持ちというのは恋愛という文脈に限らず現代社会において非常に重要な価値基準だ。きっと会社の同僚の女性全員にもそう思われていることだろう。まぁどうせハゲていようがいまいが元々嫌われているのだろうから同じことだが。

    今使ってる社員証の顔写真、1年前ぐらいの一番ハゲてた時に撮ったやつなんだよね
    カバンから取り出すたび死にたくなる
    全社員から見下されてるんだろうなァ…あああああああああああああああああああ

    — 孤独猿 (@Lonely_Monkey_y) April 24, 2025

     まぁ男である以上遅かれ早かれハゲることになるとは思っていたが、正直、まだ20代でこんなことになるとは思っていなかった。見通しが甘かった。僕は若ハゲ発覚以後、会社の同僚、街ですれ違った人、スーパーのレジの店員、ありとあらゆる場面で対面する男性の生え際がどうなっているのかを気にしたり、ハゲているかどうかをチェックしたりするようになった。40代くらいのオジサンでも健康的な生え際の状態を保っている人も多くいて、そのたび溜め息をこぼしたものだ。

    若ハゲの原因を考える男

     ひとしきり落ち込んだら、今度は一体なぜ(自分に限って)こんなことになったのかを考え始めた。色々ネットで調べていると、当たり前だが若ハゲには複合的な原因があるようだ。よく言われるのは、食生活を含めた生活習慣やストレスだ。ちょうど職場の環境が変わったこともあり、適応するのに四苦八苦していたことの影響かもしれない。

     だが、僕が一番しっくりきたのは「親からの遺伝」だ。実家に帰った折にふと父親の昔の写真を眺めてみると、僕が生まれた30代半ば頃にはどうやら既に全てを諦めてスキンヘッドにしていたようだ。所詮血は争えないのだ・・・と思いながら溜め息をついてアルバムを閉じた。それが僕にとって若ハゲというのは生物学的に避けられない残酷な運命なのだと理解した瞬間だった。

     なお、ネットでさらに調べてみると、遺伝学的にはどうやら父親ではなく母方の祖父の影響が強いなどという説も見かけたが、まぁここで犯人捜しをしたところで髪が生えてくるわけではない。というわけで、こんな不毛●●な議論にも飽きてしまったので、若ハゲの治療という次のステップに進むことにしたのだった。

    やうやう寂しくなりゆく生え際

    — 孤独猿 (@Lonely_Monkey_y) September 4, 2024

    治療薬の購入

     さて、現実を受け入れるのにしばらく時間がかかってしまい、若ハゲに対処するためにどうにかやっと重い腰を上げたのは夏の盛りの頃だった。YouTubeの広告なんかでAGAクリニックの存在は漠然と知っていたが、まさか自分がそのお世話になるとは夢にも思っていなかった。同じ若ハゲ仲間であるXのフォロワーさんにも情報をいただいた結果、診察は手軽さとコスパを重視して某オンラインクリニックで受けることにした。

     準備事項は、あらかじめ問診票への回答とハゲ具合の写真を撮って送っておくくらいで、あとは予約した時間に自宅のPCからログインすれば、5分ほどで画面の向こうに担当医師らしき人物が現れた。医師とはいっても大学生といっても過言ではないくらいの、パーマをかけたどこにでもいるような若い男だ。まぁアルバイトか何かかもしれない。オンラインなのだからそのあたりは適当なのだろう。

     問診も2~3分で済んだ。薬のプランの確認や、他に飲んでいる薬があるかというような単純な質問だけだった気がする。あとは副作用の説明は割としっかりされた。僕は海外製の薬にしたので万一何かあった際の薬害補償は受けられない。何かあったら運が悪かったと思って諦めるしかないようだ。不安な方は、少し値段は高くなるが国内製を選んだ方がよいと思う。

     そんな感じで問診を受けたのち、別のオペレーターに代わり、支払い方法などの事務手続き関係の流れや留意事項を伝えられたところで診察は終了。全体で10分もかからなかっただろうと思う。無事、あとは処方された薬が自宅に到着するのを待つだけとなった。

    ハゲの薬がキタ😡 pic.twitter.com/DDlNWEYo0B

    — 孤独猿 (@Lonely_Monkey_y) August 22, 2024

     今回頼んだ薬に入っているのはフィナステリドとミノキシジルという成分で、要するに前者は守り(ハゲ予防)、後者は攻め(発毛促進)の効果がある。症状次第でフィナステリドだけという選択もできるようだが、僕はかなり危機感を持っていたので、思い切って両方セットのプランにしたのだった。

    思わぬ副作用

     ハゲの薬は飲み始めて数か月~半年は様子を見なければ効果が出ないということは聞いていたので、しばらくはあまり期待せずに1日1錠の錠剤をひたすらに飲み続けるだけの地味な日々が続く。飲み忘れないよういつも枕元に置いていたので、モーニングルーティン的に継続することができた。

     しかし、飲み始めて数週間~1ヶ月ほど経った頃だろうか、ハゲ改善の効果が出るより先に、副作用に見舞われてしまった。それが性欲減退である。いつも朝起きた時に生じる例の現象が起きなくなったり、持続力が無くなってきたりといった違和感を感じることが、知らず知らずのうちに多くなってきたのである。

     診察の際、担当医師からは5%くらいの副作用が発生する可能性を伝えられていて、具体的には性欲の減少やED、抑うつ状態、肝機能低下、動悸、多毛症といった症状だ。どれも厄介なものばかりだが、やはりこの悲惨な生え際の状態の改善という喫緊の課題の方を優先し、副作用は一旦見て見ぬふりをした。確率も低いので「まさかねぇ…」と甘く見ていたが、本当にそのまさかが現実に起こってしまったのである。

    なんとなーく性欲が落ちてきたなと思う。最近よく起こる気分の落ち込みが関係してるのか、それともハゲの薬の副作用なのかは分からないけど。

    もちろん無駄に性欲があっても持て余すだけだから別に良いんだけど、オスというか生物としての終焉が近づきつつあるのを感じて虚しくなる。

    — 孤独猿 (@Lonely_Monkey_y) September 12, 2024

     性欲が減った経験のある方ならわかると思うが、上記ポストのように、食欲や睡眠欲と同じような根源的な欲求がいざ消え失せてみると、戸惑いや強烈な違和感とともに、「あるはずのものがない」というか、日々の生活に「張り合いが無い」というか、寂しさや欠乏感といった言葉では片付けられない感情に襲われるようになった。何よりも、「お前は生物としてはもう終わりなのだ」と、自分から悟るだけではなく、街で見かける若いお盛んなカップル共にもすれ違いざまに見下されているような気がして、気持ちは沈む一方だった。

     さらに運の悪いことに、この頃はちょうどアプリで出会った女性と3回目のデートまで済ませて満更でもない雰囲気になっており、僕の方からもう少し「押す」ことができれば、人生初の彼女ができるかもしれないという重要な局面のはずだった。にもかかわらず、大きな原動力である性欲が消えてしまったため、まるで船が航海の途中に推進力を失い沈没してしまうみたいに、僕はそこで何もできなくなってしまった。そして彼女との関係性は消滅した。

     もちろん、性欲が減って良いこともある。日常生活の色々な場面で余計な劣情を催したり、時間やお金を失うこともない。性欲という邪魔なものが無くなれば生活を一気に合理化することができる。さらに、僕のような、女性にモテず社会から疎外されている男の性欲は時には犯罪と結び付けられ、危険因子と見做される。それが消滅することは、社会にとってハッピーなことなんだろうなと考えたりもした。

    今飲んでるハゲの薬の副作用で性欲が減退するらしいんですが、これがメリットしかない
    非モテチー牛の性欲は本人にとっても社会にとっても不要どころか害悪でしかないから

    — 孤独猿 (@Lonely_Monkey_y) September 9, 2024

     とはいえやっぱり、結論的には、性欲が無くなることによるデメリットの方を多く感じた。「非モテのくせに生物としての本能を失くして一丁前に嘆いてるようだが、お前みたいなのに性欲なんてあっても何の役にも立たないだろう」と皆さんは思われるだろう。でも本能が無くなると実存の危機を感じるのでキツいですね。レーゾンデートルの喪失です。自己中で偉そうな事言ってすみません。

     あとは性欲の減退以外だと、体毛が濃くなるという面倒な現象にも悩まされた。薬を服用し始める前に一時期全身脱毛に通っており、元々ボーボーだった首から下の体毛はそれなりに改善していたのにも関わらず、その努力を全部無下にしてやるぞと言わんばかりに、僕の腕や太ももには日々煩わしいムダ毛がニョキニョキと生え揃っていった。まったく、こいつらを自分の意思で簡単に頭頂部に移植できればいいのに。なんでこう、色々とうまくいかないのか。自分の身体なのに。

    ハゲの改善状況(ビフォアフター)

     さて、こんな風に毎日ちゃんと薬を飲み、副作用に苛まれる1年間を過ごしたのだから、ハゲ具合が改善していないとさすがにおかしい。ということで、薬を飲み始める前(2024年7月)と、現在(2025年7月)のビフォアフターがこちら。

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    シャワー後に髪をかき上げた状態という同じ条件でのビフォアフターです

     なんということでしょう!!とか言うほど劇的に変わっているかどうかは別として、とりあえず悩んでいたM字は目立たなくなってきており、普段、髪のスカスカ具合を気にして余計なストレスを感じる場面は少なくなったことを実感している。

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    元々こんな悲惨な状態だったのが・・・
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    薬の服用を始めて3ヶ月くらい。まだM字にはなっているが、ポツポツと生え際に髪が生えているように見える
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    半年経った状態がこちら。結構改善してなくなくなくない??
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    そして現在の状態。まぁこれなら同僚の女にも内心馬鹿にされずに済むのでは

    今後の展望

     さて、今後の展望であるが、これで治ったというわけではなく、実態としては、あくまでハゲの進行を遅らせているに過ぎない。今は生え際後退の攻撃力に薬の守備力でなんとか抗えているという状態だが、いつか薬では防御し切れない時が来る(もうすぐそこに迫っているかもしれない)。

     その時を少しでも遅らせるために、ハゲの薬の契約をもう1年継続することにした。副作用への不安ももちろんあるが、ハゲの進行への不安の方が今は勝っている(というか、ハゲの薬が切れそうになると、例のクリニックがメール、ショートメール、ラインなど色々な方法で「早く次の薬買え!さもなくばハゲるぞ!」と不安を煽ってくるので、それに気圧されたような形だが)。

    ため息をつきながら新しいハゲの薬を受領 pic.twitter.com/c38HML9iGg

    — 孤独猿 (@Lonely_Monkey_y) August 9, 2025

     いつか、そう遠くない未来、薬が効かなくなるか、もしくは諸般の事情で薬の服用を止めた結果、みっともなくハゲ散らかす時が来るだろう。その時は諦めるしかないと思う。職場や取引先の女性社員から内心軽蔑されることもたくさんあるだろう。すれ違う人に嘲笑の目を向けられることもあるだろう。耐えるしかない。まぁそういう時は親父みたいにスキンヘッドにするのも悪くないか。

     「このハゲーーー!」と罵倒されても、「はげ、はげ、はげは嫌い」と道行く小学生に歌われても、ラリアットを叩き込みたくなる気持ちをぐっとこらえ、じっと耐え忍ぶしかない。それがハゲという残酷な運命を背負った男の宿命なのだから。(おわり)

     
     
    独りで生き、独りで死んでいくだけの男の独り言。長文多め。たまにオリジナル曲の歌詞や旅行記も投稿します。「孤独に腐る」→「孤独猿」で覚えていただけたら。キモくてすみません

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