
ルーバーと課長
塩ビ管、グレーチング、コンクリート二次製品
植生マット、こんなワードを聞いたことはあるでしょうか?
いわゆる土木資材と呼ばれるようなもので、細かく言うと使われる場所によっては、建築資材とも呼ばれます。現在、私は上記のような資材を製造するメーカーで営業職として勤めています。
そんな僕がメーカー営業職として入社し、
新卒1ヶ月目にあったお話しを紹介します。
ある日僕の席近くを通った社長が言いました。
「エアコンの風よけが外れかかっているから直しておいて」
実は僕も朝出勤した時に気付いていました。
事務所には、僕の真上よりも少し背中側に
天井エアコンがついています。
そのエアコンには風が直接人間に当たらないように風向きを変える調整板がついています。
後から調べて知りましたが、これはルーバーと言うらしいです。
これが少し外れかかっていました。
50cmくらいの横長で、正確には片方の固定が取れて、片側だけ少し垂れ下がっているような感じでした。ただ、完全には取れていません。
確かに気になりますが、そこまで気にする程垂れ下がってはいない状態でした。
僕は総務に行って、セロハンテープをもらい、
それを両面が接着面になるようにくるっと丸めて
風よけの背面に貼り付け、そのままエアコン側に押し付けました。
見た目はバッチリで、セロハンテープがはみ出さないよう少し気を遣ったことが功を奏して、見栄えもよく直ったように見えて、我ながらいい感じだなと思っていました。
翌日出勤すると、昨日の帰りに見た時よりも若干
垂れ下がっているように見えましたが、僕は気になる程ではなかったです。
夕方頃、社長が事務所へ戻ってきて、僕の席の近くへ来てこう言いました。
「これちょっと垂れてるように見えるなぁ」
ボソッと僕とその付近に聞こえるくらいの小さい声で一言ぼやいてから外出して行きました。
僕は社長の外出を見届け、自身が座っていた椅子の上に立ち、少し粘着力が弱いと感じたので、
セロハンテープを背面に追加した後で、もう一度エアコン側に向かって、風よけを押し付けました。見た目は昨日の帰りと変わらない感じになり、直ったように見えました。
翌朝出勤すると、すぐに社長が僕の席のところへまた来て、エアコンの風よけはどうやって直したのかと聞いてきました。
僕は自信満々にセロハンテープを丸めて風よけの裏に貼り付けて・・・とそんなに手順も無いので淡々と説明をしました。
なぜ自信満々に話したかというと、今朝は風よけが取れていなかったからです。セロハンテープを丸めて付けているので、若干たるんでいるように見えましたが、僕は気にならない程度でした。
そうです。
僕は褒められていると思っていました。
今思い出すとあの時の社長の顔は不満そうな表情をしてなぁと思います。
もちろん当時の僕は入社して日も浅く、社長の普段の顔を知る由もなく、そんなことに気づくわけはないです。
その会話が終わると同時に僕の目の前の席にいた課長が動き始めました。
最初はゴソゴソと何か探しているような感じだったと記憶しています。しばらくすると課長は社用車のキーを持ってどこかへ外出していきました。
そのまま課長は戻らず午前の営業時間が終わり、お昼休憩の時間になりました。
僕はお昼ご飯を食べ終わり、休憩室から事務所へ戻ると何だか事務所の空気が重たいぞ!?
お昼休憩中、電話番の方が一部事務所で待機しており、いつもなら和かに事務員さん同士でお喋りしています。しかし、その姿はありません。
と同時に踏み台に乗った課長が目に入ってきました。僕の席付近で天井エアコンに向かって作業をしています。
とっさに僕は「手伝います!」と言いました。
完全に風よけを直す作業をしていたからです。
その言葉は課長には届かず無視され、
もう一度課長に
「手伝います!何かやれることはないですか」
と言いました。
すると、課長は踏み台の上から僕を睨んだ後、
降りてきてこう言いました。
「手伝いますじゃねぇよ。」と一言。
率直に「口調荒くない!?怖っ!!」が感想です。
そう言い終わると、近くにあった工具を手に取り、また踏み台に乗って作業が始まりました。
何もできない僕はそう言われたあと、しばらくその作業を眺めていました。
席のすぐ後ろで作業してるし座れないからね。
時折、あの材料次に必要そうだなと何となく分かるものもあり、踏み台の上の課長へ手渡しすることを試みるものの、「触らなくていい。」と言われ撃沈しました。
あれはとてつもなく僕には長く感じましたが、
作業的には10分くらいだったと思います。
作業が終わると同時に昼休憩も終わりました。
正直どうすればいいか分からず、昼休憩から戻ってきた先輩社員に相談したのち、意を決して課長のもとへ行きました。行くなりすぐに、まずは謝りました。すると課長から、
「何に対して謝っているの?」と言われ、
先ほどの荒い口調ではなくなっていました。
とっさに僕は「課長に風よけを直す作業をさせてしまったことです」と正直に言いました。
んー、という表情になった課長を見て、
「不正解だったのか!やらかしてしまった…」
と心の中で思いました。
「君は一昨日社長に何て言われたのか、覚えているか?」課長は続けてこう聞いてきました。
一昨日から続く社長と僕の会話を全て聞いていたようです。
一問目不正解をかました僕は平常心ではない状態です。一言一句思い出そうとした結果、余計に思い出せない負のループに陥りました。
体感無限でしたが実際は数秒です。その数秒が
課長の中でタイムオーバーだったらしく、
「社長は直しておいてって言ったんだぞ。」
と少し強めの口調で僕に言いました。
その後に続けてこう言われました。
「直しておいてと言われたんだから責任持って直せよ。直せないなら直せるように動けよ。」
この言葉を瞬時には咀嚼できませんでした。
言い終わった課長はパソコンの画面を見始めたので、僕と課長の会話はそこで終わりました。
まぁまぁ熱の入った声量だったので、もちろん事務所内が凍りつき、一部始終を見ていた先輩を始め、同期、その他の人達から声をかけられました。皆一様に大丈夫?というような声かけでしたが、誰の言葉も僕には入ってきませんでした。
後日、課長は部長、社長に呼び出されたようで、少しばかり個別の話し合いがあったようでした。たぶんパワハラにあたる行為として厳重注意されたのではないかなと思います。詳しくは未だに分かりません。
その後数日は、なんとなく社内に気まずい空気が漂っていて、恐らく、新入社員が辞めてしまうんではないかというハラハラな不安感からなる独特の空気感だったのではないかと思います。
一方の僕は以下のようなことをずっとぐるぐる考えていました。
・正直なんで自分がやらきゃいけなかったんだ?
・他の部署がやるべき仕事だったのではないか?
・なんで誰も助けてくれなかったんだ?
・直し方知ってたなら最初から教えてよ!
いやー・・・・我ながら他責思考ですね。
確かに少し、、いや・・・だいぶ意地悪だなぁ
普通にパワハラだし。
というか周りの人も、もう少し序盤に声とか掛けてくれてもよかったんではないか??とは今でも思います。
ただ、これは自身に責任感が無かったことに気付く良いキッカケだったので結果的には良かったと思っています。
最初風よけを直しているときは、
・僕は気にならないとか
・気にするほどではないよなとか
・我ながら上手くできてるとか
自分目線ばかりで全然依頼人の視点から物事を考える事ができていませんでした。
社会人なんて、営業なんて基本依頼人目線で考えないといけないですよね!
ちょっと営業目線に偏りすぎているかとは思いますが、ざっくり僕はこう考えています。
この出来事は、顧客からの要望に応えるという
体験をできるいい機会だったと思います。
初めての顧客が社長だったというわけです。
たかが、風よけ直すくらいの薄いエピソードで
何を言っているんだと思われるかもしれませんが、少なくとも僕には刺さりました。
あと当時新卒で右も左も分からない中、年が二回りも離れた人に無視され、声を荒げられるっていう経験は少なく、悪い意味で刺激的だったので
記憶にも強く残っています。
ただ、この言葉は社会人として、また、営業職としてどう立ち回ればいいか迷った時、常に僕の根幹にあります。
学生と社会人の明確な違いは何か。
その一つが「責任感を持って行動できるか」
本当にこれだと僕は思います。
責任感を持って行動していれば、自ずと次の一手、次の一手と考えて行動することができます。
例えば、顧客から「来週までに資材が欲しいんだけど間に合うかな?」と言われた場合、回答当時は間に合うはずだったとしても、納期というものはズレるものです。期日間際に間に合わないと
判明するケースは少なくありません。
その際、当時の責任感のない僕であれば、
「短納期で依頼してくる顧客が悪い」とか、
「間に合わせられなかった工場が悪い」とだけ思って、責任転嫁をするばかりで、何も自身では行動しなかった事でしょう。
ただ、今であれば違います。
「工場の工程を組み換えれば間に合うのではないか?それであれば一度工場にお願いしに行ってみよう!」とか、どうしても間に合わないのであれば、代替品を提案するとか、間に合わないとしても自分で配達に行って直接顧客に謝りに行きますとか様々な対応策をとることができます。
あの出来事がなければ一生社会人になれないままでした。
心がけて行動するうちに、だんだんと社内にも社外にも味方が増えていっている実感もあります。そして、不思議なことに実績も付いてきます。
担当を持って5年経ちますが、一度も予算達成出来なかったことはありません。
これは単に自身のみでは無く、他の方の助けがあってこその結果だと心から思っています。
なぜみんな助けてくれるのか。
それは他責を捨てて、一度自責で物事を考える、そして自ら行動する姿勢を持つことで、周囲の人に「この人を応援したい」「力になりたい」と思ってもらえるからだと思います。
人は失敗しない人を助けるのではなく、課題から逃げずに向き合い、できることを探し続ける人を助けたくなるものだと思います。僕もそうです。まず自分にできることは何かを考え、自身1人では出来ず、時には助けが必要な時もあります。
行動したうえで他の方に助けを求める、その姿勢こそが信頼を生み、結果として多くの人の協力や支援を頂けるようになる。そう思っています。
まだまだ、社会人歴は浅くこれからの方が長いです。このままの考え方でいけるのか正直自分でも分かりません。色々試行錯誤して、挑戦し前に進んでいく事が大事であると思っています。
なんだか、少しごちゃっとしてきましたのでこの辺にしておこうと思います。
特に伝えたいとかではなく、あくまで参考にして頂いたり、今後の自身のメモとして残していければと思って書きました。
これだけは言っておきます。
僕はパワハラを容認しているわけではありませんよ!!あくまで僕は一例ですから、耐えられない人はどんどん訴えてもいいと思ってます!
僕は大声且つみんなの前で言われ、周囲も恐怖を感じていたようなので、今後心身に異常が出てきた場合は、この文章を持って会社を訴えようと思ってますから!!今の所はなさそうです。
最後に。
世の中には立場の低い者を叱り、その姿を上の立場の人間に見せることにより、自身の指導力を誇示しようとする不届き者もいるようです。
しかし、この課長に限っては自身の昇進のためだの、優位性に浸りたいなどという感情が一切なく、近くにいてもそれを感じたことは一度もないです。まさにお叱りを受けた当時も、そのような感情は感じられず、ただ私に何かを気付かせたいという思いからだったように感じていましたし、実際にそうだと思います。
今回書いた文章は愚痴でもなければ、この課長を非難したいなどということは一切なく、あくまで自身が経験して学んだことを書き記した文章として捉えて頂ければ幸いです。
それでは。