
西海市崎戸町百話#002〜本郷という地名
園崎咲人ーー第二話 本郷という地名:西海市崎戸本郷
「本郷」。
どこの町にもありそうな地名だ。
だから最初は特別な意味があるとは思っていなかった。
ところが、崎戸を訪れるうちに、この二文字が気になり始めた。
私の世代にとって、「本郷」と聞いて最初に思い浮かぶのは、仮面ライダー1号の本郷猛かもしれない。
子どもの頃は、そんな連想しかなかった。
しかし、崎戸を歩くようになって、この「本郷」という名前には、もっと深い意味があるのではないかと思うようになった。
本郷とは、もともとの村、本来の集落、中心となる土地を意味することが多い。
現在、旧崎戸町と聞くと、多くの人は炭鉱で栄えた蛎ノ浦島を思い浮かべるだろう。
一方で、「本郷」という地名は崎戸島に残っている。
崎戸歴史民族資料館の案内には、「貞享元年(1684)から三年間、納屋場を蠣浦よりこの地に移した」と記されていた。
その一文を見た時、私は立ち止まった。
「蠣浦より、この地へ」
少なくとも当時は、蠣浦と本郷が別の集落として意識され、本郷には地域を支える役割があったことがうかがえる。
もちろん、この記録だけで歴史を断定することはできない。
それでも私は思う。
地名は、人よりも長生きだ。
人が去っても、時代が変わっても、名前だけは静かに、その土地の始まりを語り続けている。
園崎咲人