メインコンテンツへスキップ
見出し画像

【思わぬ大金を得た男の日記】    1話 「その日は、特別な事は何もなかった」

    高輪音叉

    正真正銘、特別なことは何もなかった。

    いつも通りの部屋で、
    いつも通りの時間を過ごしていた。

    カーテンを閉め忘れたまま、
    部屋に夕方の光が残っていた。
    床に伸びた影が、少しだけ長い気がしたが、
    理由を考えるほどのことでもなかった。

    テレビはつけなかった。
    部屋に一切の音がないことに、
    あとから気づいた。

    冷めきったコーヒーを飲みきれず、
    そのまま流しに置いた。
    片づける気にも、
    飲み直す気にもならなかった。

    こだわって選んだわけでもない
    デジタル置き時計をふと見ると、
    思っていたより時間が経っていることに驚いた。
    何をしていたかは、よく覚えていない。

    あとから思えば、
    それが最後の「いつも通り」だった。


    ※2話はこちら↓↓


    この記事が参加している募集

     
     
     
    短編小説、漫画原作、連作、 モキュメンタリー。 少しずつ投稿します。 貴重な時間を割いて、読んでくださっている、 「あなた1人に届ける」という 思いを込めて書いています。

    あなたへのおすすめ