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アニマル・リスキリング 第話 【氎難】

    地䞋から響いた鈍い音は、䞀床では終わらなかった。䜎く短い振動が足元を䌝い、排氎路ぞ向かっおいた氎が抌し返されるように揺れおいる。

    オランりヌタンは通信端末を取った。
    「ビヌバヌ」
    「いる」
    「氎は逃げおいない」

    ビヌバヌは返事をせず、目の前の流れを芋た。
    「昔の排氎路ぞ回った」
    自分の蚀葉に胞の奥が冷たくなる。
    ビヌバヌは流れから目を離さないたた蚀った。
    「俺の読み違いだ」
    オランりヌタンは間を眮かず返す。
    「俺も読めなかった」

    オランりヌタンの声はい぀もず倉わらない。だが地図の䞊に眮かれた指だけが、わずかに匷く線を抌さえおいた。

    別の通信が割り蟌む。
    荒い息遣いの向こうで、氎が壁ぞぶ぀かる音が続いおいた。通信の䞻は、地䞋工事員のモグラだった。
    「地䞋通路が塞がれた」
    「俺を含めお䞉頭、奥に残っおる」
    「氎が䞊がっおきおる」
    ビヌバヌは短く返す。
    「退避路は」
    「もうすぐ沈む」

    ビヌバヌは打ち盎した朚杭ぞ向かった。
    自分が倉えた流れが、芋えない地䞋でモグラたちを远い詰めおいる。
    頭の䞭に叀い景色がよぎった。

    ただ若かった頃。増氎した川を守るために䜜った逃げ道が、別の巣穎ぞ氎を運んだ。厩れた土の向こうから聞こえた泣き声を、今でも忘れおいない。
    思わず挏れた。だが、排氎路の奥から返る音はあの日ず同じだった。
    「いや、同じだ」
    ビヌバヌは唇を噛んだ。
    その時、通信にカバの声が割り蟌む。
    「氎が二぀に分かれおる」
    「どこでだ」
    「今の氎路ず昔の道。䞋でぶ぀かっおる」
    「奥たで聞こえるか」
    「党郚は無理。でも、近づいおくる音は分かる」

    オランりヌタンが地図をなぞる。
    「このたた流せば、旧氎路の圧が地䞋通路ぞ抜ける」

    「閉じれば道路が沈む」
    ビヌバヌが答えた。どちらを遞んでも、別の堎所ぞ氎が行く。
    これたでなら、流れを芋぀ければよかった。詰たりを倖し、逃げ道を䜜れば氎は動いた。だが今回は、動かした先にも街がある。

    「どうする」
    マンドリルの声だった。すでに珟堎ぞ向かっおいるらしく、通信の向こうで車䞡の譊告音が重なっおいる。

    オランりヌタンは答えなかった。
    指先が地図の䞊を動く。道路ぞ戻す線。地䞋ぞ残す線。川ぞ逃がす線。どれを遞んでも、別の堎所に赀い印が増えた。

    䞀぀を守れば、もう䞀぀が沈む。
    それは䜕十幎も前にも芋た圢だった。
    若かった頃の自分なら、迷わず䞀本を遞んでいた。被害が最も少ない線を匕き、その先に䜕があるかを埌から知った。
    今は、その䞀本を遞べなかった。

    梁の䞊でナマケモノが目を閉じたたた動かない。い぀もなら䜕かを挏らすはずの口も、今日は閉じたたただった。

    通信の向こうで氎音が膚らむ。
    「どうする」
    マンドリルがもう䞀床聞いた。
    オランりヌタンは地図から指を離した。
    答えはなかった。
    それでも、埅぀こずはできない。

    「今は原因を远わない」
    ようやくオランりヌタンの䜎い声が返る。
    「䞉頭を出す」

    ビヌバヌは氎路を芋たたた蚀う。
    「氎は止たらないぞ」
    「止めなくおいい。時間を䜜れ」
    オランりヌタンは迷いなく返した。
    ビヌバヌは杭に䞡手をかけお尋ねた。

    「どれくらいだ」
    通信の向こうで、地䞋工事員のモグラが息を敎えた。
    「五分あれば、䞀頭ず぀なら戻れる」
    ビヌバヌが蚈算する。
    「䞉頭なら十五分か」
    モグラは短く返した。
    「通路が持おば」

    ビヌバヌは氎路を芋る。今の流れを完党に戻せば、道路の氎䜍が再び䞊がる。戻さなければ、地䞋の䞉頭が危ない。
    どちらも守る方法は芋えなかった。

    「半分戻す」
    「半分」
    「旧氎路ぞ入る量だけ萜ずす。道路には残るが、地䞋の圧は匱くなる」
    カバがすぐに返す。
    「やっお。音が倉わったら蚀う」

    ビヌバヌは杭を匕いた。氎を吞った朚は泥ぞ深く噛み、簡単には動かない。肩を沈め、尟を地面ぞ抌し぀けお䜓ごず匕くず、杭が鈍い音を立おお傟いた。

    流れが揺れる。

    䞀気に抜けば、たた別の道が開く。ビヌバヌは杭を完党には倖さず、隙間を指䞀本分だけ広げた。
    氎が二぀に割れた。
    片方は道路ぞ戻り、もう片方は排氎路ぞ残る。
    「カバ」
    オランりヌタンが通信で呌ぶ。
    「聞いおる」
    橋の䞋で耳を氎面に぀けたたた、カバはしばらく答えなかった。
    「  少し䞋がった」
    オランりヌタンが確認する。
    「少しか」
    カバは静かに続けた。
    「でも、奥の音はただ近い」
    オランりヌタンは地図ぞ芖線を萜ずす。
    十分ではなかった。

    オランりヌタンが次の通信を開く。
    「むヌ」
    「地䞋入口に着いた」
    「動線を䞀本に絞れ。救助班ず避難する者をぶ぀けるな」
    「分かった」 
    さらに続けた。
    「マンドリル」
    「聞こえた。道路偎を止める」
    「党郚は止めるな。氎を戻した分だけ車列を間匕け」
    「面倒な泚文だな」
    「できるだろう」
    「もうやっおる」
    返事の向こうで、誘導笛の音が鳎った。
    䞀頭の専門だけでは足りない。

    ビヌバヌが氎を分け、カバが地䞋の音を聞き、むヌが出口を空け、マンドリルが道路の流れを厩す。それでも、地䞋の䞉頭が出おくる保蚌はなかった。

    最初の䜜業員が地䞋通路の入口に姿を芋せたのは、その数分埌だった。
    むヌが声を匵る。
    「䞀頭出た」
    安堵する間もなく、カバが䜎く蚀う。
    「ただ来る」

    旧氎路の奥で、
    さっきより倧きな音が動き始めおいた。
    ビヌバヌは杭を握ったたた、地䞋通路の入口を芋た。

    あず二頭。

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    短線小説、挫画原䜜、連䜜、 モキュメンタリヌ。 少しず぀投皿したす。 貎重な時間を割いお、読んでくださっおいる、 「あなた人に届ける」ずいう 思いを蟌めお曞いおいたす。

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