見出し画像

【短編】『グラスの向こう、あなたは笑わない』~心がぎゅっとする📒✨ホステスのセツナイ恋事情👠

💖🍸「あの人が帰らない夜」

夜の帳が降りると、街は少しずつ艶を帯び始める。
ネオンの瞬きに誘われるように、女たちは化粧を濃くし、男たちは少しだけ背筋を伸ばす。
私は今夜もこの街で、何も望まないふりをして、グラスを磨いている。

カラン、と氷の音がした。
「ロックでいい?」
声をかけると、彼はうなずいただけだった。いつもの席、いつもの沈黙。
それが、彼との距離だった。

彼は、私の名前を呼ばない。
でも、「お疲れさま」の一言だけで、なぜか胸が騒ぐ。
その声が、やけに優しく響くから。

お客様とホステス。
それ以上でも以下でもない。
何百回と自分に言い聞かせてきたけれど、心は勝手に記憶を抱いてしまう。
初めて触れた指先、酔ってこぼれた弱音、ふとした笑顔。
全部、誰よりも覚えている。

彼には家庭がある。
それを知っていて、でも、好きになってしまった。
彼の指輪が目に入るたび、心は裂けるように痛む。
それでも、来てくれるだけで、会話がなくても、私は嬉しかった。

終電が過ぎた頃、彼はふと立ち上がった。
「今日はもう帰るよ」
そう言った彼の目は、少しだけ寂しげだった。
その一言に「一緒にいたい」と言えなかった私は、やっぱり、プロとして正しいホステスだったのだろうか。

「また来るよ」
そう言って扉を出た彼の背中は、どこかもう戻ってこない気がした。

静まり返った店内に、彼のグラスが残されている。
ロックの氷はもう溶けて、薄い水になっていた。
まるで、私の想いのように、形を失くしてしまったようで。

恋なんて、しなければよかった。
でも、心が勝手にあなたを選んでしまった。

赤く塗ったルージュの色が、少しかすれていることに気づいて、私はそっと口元を拭った。
今夜もまた、誰にも見せない涙を、夜のせいにして誤魔化す。

🌙 あとがきと浸れる一曲:

「“好き”を隠す場所」

ホステスとして夜を生きる彼女にとって、恋は「してはいけないもの」なのかもしれません。
でも、恋はときに名札も立場も超えてしまう。
この物語は、“名前を呼ばれないまま好きになってしまった”彼女の、
言葉にならない想いと沈黙の記憶を描いた、静かなラブストーリーです。


🎧 この物語に寄り添う、夜の一曲にシティポップがなぜ似合うのか?

シティポップは、どこか距離を感じさせる余白の音楽。
真夜中の帰り道、タクシーの窓、残ったグラスの水。
“満たされない美しさ”を肯定するようなサウンドが、
彼女の揺れる心をそっと包み込んでくれます。


💫 彼女の想いが音になったら

「呼ばれたかった名前」——
それは、ひとつだけ残された想いのかけら。
けれど彼も名前を呼んでしまったら、
止められなくなることが分かっていたのかもしれません
彼女は 呼ばれたかったーー
彼は・・・呼べなかったーーーーー
それぞれの想いがここに詰まっている

🎵 曲へのご案内

🎬 YouTubeで視聴する →シティポップと夜ふかしをする💖🚘🌃

👂 SpotifyやAppleMusicでも配信中


💭 あなたの「セツナイ恋」は、どこにありますか?

読んでくださったあなたの心にも、
誰にも言えなかった、でも確かにそこにあった“想い”があるなら——
ぜひ、そっとこの物語と音楽に重ねてみてください。


いいなと思ったら応援しよう!

Lofi Dreams NEMUKO よろしければ応援お願いします✨素敵な曲作りに使わせていただきます💖