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港町では、いつの間にか自治会の一員になっていた|第11話

    港町編集室

    港町では毎週水曜日に、

    回覧板が回ってきます。

    ある日、

    一枚の紙が挟まっていました。

    「あっ、おではんぎゃね。
    今年は○日んだ。ふーん」

    妻が言いました。

    私は、

    その紙を黙って見つめます。

    「おではんぎゃねぇ…」

    正月を迎えると、

    珍しく港町にも雪が降りました。

    しんしんと降る雪の中、

    集会所へ向かいます。

    路地を歩いていると、

    一人、

    また一人。

    同じ方向へ向かう人が増えていきます。

    軽く会釈をしながら、

    重い扉を開けると、

    ストーブを囲みながら、

    笑い声が響きます。

    私は暖をとる間もなく、

    いつもの窓際へ座りました。

    やがて重鎮が立ち上がり、

    「いくど」

    その声にあわせ、

    私も。

    一軒、

    また一軒。

    みんなで家を回り始めます。

    「おではんぎゃ」の始まりです。

    新参者の私は、

    町内の各家の玄関を開ける当番です。

    「おめんとこの息子、

    もう高校だっぺ?」

    「早ぇな」

    笑い声が続きます。

    私は次の家の戸を開けます。

    やがて、

    我が家の前へ着きました。

    少し声を張ります。

    「おではんぎゃです」

    すると。

    「はぁい」

    私は帽子につもった雪を、

    そっと払いました。

    集会所へ戻ると、

    酒が振る舞われます。

    会計報告も、

    どこかへ消えていきます。

    酒が回り始めた頃、

    「次はおめだな」

    みんなが私を見ていました。

    一瞬の間の後、

    「よろしくな」

    「大丈夫だっぺ」

    また、

    笑い声が響きだします。

    私は、

    とりあえず笑っていました。

    帰ろうと思っていた時です。

    「この後、なんかあんのか?」

    私が拍子抜けしていると、

    「飲みいくぞ」

    ふっと肩を叩かれました。

    外へ出ると、

    雪はますます積もる一方です。

    「こっちだ」

    誰かが言いました。

    また一人、

    路地へ消えていきます。

    雪は、

    まだ降り続いていました。



    港町には、
    まだ書いていない話があります。

    この町で起きた出来事は、
    すべて「港町編集室」に綴っています。

    気が向いたら、また港へ来てください。


     
     
     
    役職定年を前に、 人生を編集するエッセイ『港町編集室』を書いています。 毎週土曜日更新。 地方で働きながら、 人との出会い、 土地の言葉、 人生後半の時間を綴っています。 初めての方は、 第1話から読めるマガジンへどうぞ。 土地には、まだ名前のない時間がある。

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