
ズッキーニをエロい目で見た話
とある日の、午前10時を過ぎた頃。
特に買うものも決めないまま、
近所のスーパーをあてもなく歩いていた。
ふと、野菜売り場の前を通りかかる。
「なんて綺麗なズッキーニだ……」
それは、一目惚れだった。
早速買い求め、家路につく。
道すがら、横断歩道の向こうで
子連れの家族が楽しげに
会話を弾ませているのが見えた。
その賑やかな様子が、どこか微笑ましかった。
家に帰り着くと、
お線香の和のアロマの香りが静かに漂っている。
写真立ての中の彼女に向かって、
「ただいま」
買ってきた袋から、あのズッキーニを取り出す。
キッチンに立ち、まじまじと見つめると、
彩りも艶も本当に魅力的だった。
「許されるならば、その肌を撫でさせて、ずっと……」
思わずそんな感情が湧き上がるほど、
その美しく艶やかな姿は、
どこか君によく似ていた。
色形が綺麗なそのズッキーニに
すっかり心を奪われ、
私はフライパンにオリーブオイルを注ぐ。
すっかりその魅力の虜になり、
病みつきになってしまった私は、
想い出と共にそれを味わおうとしていた。
LOVE♡ズッキーニ / Lo-+ feat. 知声
魅惑のズッキーニを炒めていると
ふいに油が跳ねた。
後ろから呆れた声が聞こえた
「私がズッキーニ?冗談じゃないわ」
振り返ると誰もいなかった。
ただ、かすかな線香の香りが部屋を漂っている。
「勝手に重ねたりしないで。……そこに私は居ないんだから」
幻聴だとわかっている。
けれど、強がりで少し生意気なその口調は、間違いなく君のものだった。
フライパンの中で熱を帯びていく鮮やかな色と艶。
目を奪われたのは事実だ。
でも、本当に焦がれていたのは、
アスファルトの白い線上で歩幅を合わせて共に歩いた、
あの日の君の姿だったのかもしれない。
「どうぞお好きに。前だけ向いといてよ、ダーリン」
ため息交じりの声が、背中を押すように降ってくる。
I'm a ズッキーニ / Lo-+ feat. 音街ウナ
最後は一番綺麗な自分のままでいたいと笑った君は、
きっと今も、私が立ち止まることを望んでいない。
想い出の中で彼女が今日も笑う。
「おかえり」