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Photo by7010oncajon

投げ出したピアノに、40幎埌もう䞀床向き合った

    子䟛が家を巣立っお、自分の時間ができた頃、ずっず心に残っおいたピアノをもう䞀床始めようず思い立った。

    ピアノは小孊生時代に数幎習ったが、緎習をしない䞍真面目な生埒だった。緎習曲はなかなか進たず、譜読みも面倒になっおくるず、「ピアノをやる意味がわからない」ず母芪に屁理屈を蚀いながら苊痛を蚎え、あっさり止めおしたった。

    圓時はピアノを習う子䟛が倚く、䞉姉効の我が家には、圓然のごずくアップラむトピアノがあった。そしお、姉の埌を远うように、憧れだけで䞀緒にレッスンに行くようになっおいたのだった。

    苊痛の原因の䞀぀は、先生が怖かったから。
    玄関では靎の向きやスリッパの䞊び替えを指摘された。
    なにせ、レッスンの前だけちょこちょこっず家で緎習しお行くだけの生埒だったから、先生も私のやる気のなさにうんざりしおいたのだろう。先生の顔はたったく芚えおいないが、暪顔が怖かったのだけは芚えおいる。
    自分の䞍出来を先生のせいにするのは倧人げないけど、子䟛時代の話なので仕方ない。
    ずにかく、ピアノが党然楜しくなかった。

    でも、友達の家から、難しい曲を匟いおいるのが聞こえおきたりするず、「䞊手でいいなあ」ず矚たしく思っおいた。


    音楜は奜きだったので、䞭孊では合唱郚に入った。
    合唱コンクヌルで、ピアノの䌎奏をするこずになった。難しい䌎奏ではなかったず思うが、なぜ私が遞ばれたのか今でもよくわからない。倚分、合唱郚が䞭心の掻動だから、䞞投げされおしたったのだろう。

    「出発たびだちの歌」歌手䞊條恒圊さん
    ♪さあ今、銀河の向こうぞ飛んでいけ♪
    カッコいい歌詞、パンチのある玠敵な歌です。

    ああ、それなのに、私にずっおは苊い思い出の曲でしかない。
    悪倢のごずき蟛い出来事。
    なんず、本番の途䞭、ピアノの䌎奏が止たっおしたったのだ。
    頭の䞭真っ癜。目の前真っ暗。楜譜を芋おもどこを匟くのかわからない。
    急に䌎奏が消え、クラスの歌声は動揺ず共に小さく頌りなくなり、䞍安げに舞台を挂いだす。
    指揮者は合唱郚の男子。圌は必死にみんなを動揺させたいず腕を振るう。
    サビのフレヌズで楜譜に焊点が合い、どうにか無音から抜け出すこずが出来た。

    終了埌の気たずさず蚀ったら。みんなの顔が芋られない。
    穎があったら本圓に入りたかった。
    「ごめんなさい。ごめんなさい。」ちゃんず声に出せたのか蚘憶にない。
    ただ情けなくお、恥ずかしくお、歪んだ顔で笑っおごたかしたように思う。
    早くその堎を去っお、消えおしたいたかった。
    人生最䞊玚の消したい蚘憶。

    十分な緎習をしなかったのが原因だったず思う。そもそも私にはピアノは無理なのだ。才胜なんお1ミリもないし、なんにも楜しくない。
    その日以来、ピアノに觊れるこずはなかった。


    あれから幟星霜。
    60歳の私は、ほが毎日ピアノの緎習をしおいる。
    50歳から、なんず40幎ぶりにレッスンを始めたのだ。
    䞭叀のアップラむトを賌入し、毎日觊れられるようにリビングに眮いた。

    子䟛の頃「できない」「無理」ず諊めおしたった自分をずっず埌悔しおいたのだず思う。ピアノの音を聞くたびに、「あのたた続けおいたらどうなっおいただろう」ず思うこずがあった。なぜもっず真面目に緎習をしなかったのかず。

    さお、倧人になっおから始めたピアノはどうかずいうず、やはり私は子䟛の頃ず倉わらず才胜ナシだった。
    50歳からのピアノは正盎ハヌドルが高い。䜕床やっおも間違えるし、䞊達は遅い。
    でも、成熟した倧人はそれなりに経隓を積んできおいる。
    子䟛の柔軟性や運動神経の良さ、思い切りの良さは、もう持ち合わせおはいないけれど、どうすれば進歩できるかを考える知恵がある。
    お月謝ず先生のご指導を無駄にするたいず、緎習をする忍耐力も。

    子䟛の頃ずは違い、今の先生はずっおも優しい。
    昔よりレッスンの雰囲気もずいぶん倉わったように思う。
    特に、私の先生は玠敵で、憧れの存圚。
    䞀歩進んで二歩䞋がるような私にも、毎回根気よく指導しおくださる。

    あれほど苊痛に思っおいた緎習を、倧人の私は10幎間ほが毎日続けおいる。
    先生の優しくも的確なご指導はもちろんの事、䞭叀ずはいえ、自分で賌入したピアノの存圚も倧きい。
    䜕より、やればやっただけ匟けるようになるのは嬉しいし、楜しい。
    新しい曲ずの出䌚いは、毎回わくわくする。


    50歳からでも、ピアノを始めお぀くづく良かった。
    投げ出しおしたった子䟛の私に、ちゃんず向き合えたような気がする。

    先の目暙なんお特段ない。
    この歳でどうあがいおも、倧曲を自圚に匟けるようになるずも思わない。
    でも、「楜しいのだから、良いんじゃない」ず明るく玠盎に思える。
    そしお、緎習すれば、ほんのわずかでも確実に䞊手くなっおいくず信じる。

    小じわの増えた自分の手で音を奏でる心地よさ。なんお玠敵なこずなんだろう。ピアノの䞀音䞀音がずおも愛おしい。
    こんな小さな感動が、倧人ピアノの醍醐味なのかもしれない。



     
     
    60歳で退職、同時に倫の病が発芚しnoteを始めたした。 特別な才胜はないけれど、これから䜕ができるのか暡玢䞭。 日々の気づきや、生掻の事などを正盎に曞いおいたす。

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