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告りびと (毎週ショートショートnote)

    姿が見えた途端、胸が弾んだ。
    間違いない、彼だわ。
    娘時代に戻ったかのような自分の感情に戸惑い、恥じらう。

    告りびとたちは、それぞれの待ち人を迎えいれていた。
    その群れの中に、彼を見つけた。

    「どうしても伝えたくて、君を待ってた」

    彼は熱を帯びた眼差しで、私を見つめる。

    「自分の気持ちを偽り続けたこと、後悔してるんだ。本当は幼い頃からずっと、僕は君に恋してた」

    嬉し涙が溢れて、彼の姿が滲む。
    ――そう、もう誰の目も気にしなくていい。

    「……私もよ」

    私もまた隠してきた本音を、初めて口にした。

    「今度こそ、僕と一緒にいてくれるかい?」

    微笑んだ私は、ゆっくりと頷いた。

    彼の差し出した手につかまって、小舟を降りた。
    乗り手のいなくなった小舟は音もなく川面を滑り、私たちが長い年月を過ごした対岸へと戻っていった。

    握り返された彼の力強い手に、心は安らぎ、満たされていく。

    「さあ、行こうか」

    どこまでもどこまでも広がる美しい花畑の小道を、私は彼と共に歩き出した。



    (了)414字

     
     
     
    第2回角野栄子もっとあたらしい童話大賞にて「カゲとかけっこ」が最終選考作品となりました。 日本児童文学者協会会員 2022年より創作沼へ。読み手の心と共鳴するモノが書けたら嬉しいです(^^)  童話、ショートショート等々書いてます。他サイトにも作品を投稿、活動詳細はXにて発信中。

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