メインコンテンツへスキップ
見出し画像

🧶編み物シリーズ  最終話|完売より嬉しかった、たったひとりの「大丈夫」

    【前書き】

    「全部、売れたね。本当にすごいよ」

    そう言って、隣で涙ぐんでくれた人がいました。

    それは、私にとって――何よりのご褒美でした。

    編み物を再開したあの日から、ずっとそばで見守ってくれていた人。

    自信ゼロで、「どうせ無理」と言い続けていた私に、
    「大丈夫だよ」と何度も言ってくれた人。

    🧶テーブルが、軽い

    イベント終了間際。
    ふと、違和感がありました。

    テーブルが……軽い。
    見慣れたあのバッグも、
    あの小物も、
    どこにもない。

    「……あれ?」
    「これって……全部、売れたってこと?」

    その瞬間。
    バンッ!
    と背中を叩かれて、
    思わず前につんのめりました。

    🧶泣きながら笑う人

    「全部売れたね! 本当にすごいよ!」
    振り返ると、親友がいました。

    泣きそうな顔で、でも笑っていて。
    まるで自分のことみたいに、
    喜んでくれていました。

    肩をポン、どころじゃなく。
    ゴンゴン叩かれながら、
    私は、ただ立ち尽くしていました。
    胸の奥が、じんわり熱くなって。
    言葉が、出てきませんでした。

    🧶あの日から、ずっと

    思い返せば。
    彼女は、ずっとそこにいました。

    100円の毛糸を手に取った日から。
    「私なんて……」と弱音を吐けば、
    「大丈夫だよ」
    と、迷いなく言ってくれた人。

    作品を見せれば、
    「かわいい!」と笑ってくれて、
    「買わせて!」と即決してくれる。
    しかも、頼んでもいないのに、
    口コミ営業までしてくれる(笑)
    それを、一度や二度じゃなくて。
    何度も、何度も。

    🧶隣にいるだけで

    マルシェ当日も、彼女は変わりませんでした。
    「ほんとにすごいよ」
    と、泣きそうな顔をするから、
    私まで泣きそうになって。
    慌ててティッシュを探したら――
    「はい」
    と、先に差し出される。
    ……抜かりない。

    そのとき思いました。

    ああ。

    この人には敵わないな、って。

    🧶完売より、大切なこと

    正直に言うと。
    “完売”は、もちろん嬉しい。

    でも――
    それ以上に強く残ったのは、
    この人と一緒に立っていた時間でした。

    もし彼女となら。
    たぶん、雑草を売っても笑っていられる。
    (……売らないけど)

    “親友”という言葉だけでは足りないくらい、
    大切な存在。

    🧶毛糸がくれたもの

    あの頃の私は、
    「何もない私」だと思っていました。

    でも――
    100円の毛糸と、かぎ針が、
    そんな私を、少しずつ前へ押してくれました。

    編んではほどいて、
    また編んで。
    その繰り返しの中で、
    気づいたら、
    「好き」と言える自分を取り戻していました。

    🧶最後に

    売れたことも、もちろん嬉しい。

    でもそれ以上に——
    「ここまで来られた」

    そう思えたことが、何よりの宝物でした。

    あのとき、100円の毛糸を手に取らなければ、
    この景色はきっと見ることができなかったと思います。

    編み物は、ただ作品を作るだけではありませんでした。

    止まっていた時間を、少しずつ動かし、人とのつながりを運び、そして「好き」と言える自分を取り戻させてくれました。

    編んではほどいて、また編む。

    その繰り返しは、どこか人生にも似ています。

    うまくいかない日があっても、やり直せる。
    少しずつ、自分のペースで前へ進めばいい。

    今の私は、もう次に編みたいものを考えています。

    きっとこれからも、一本の毛糸から始まる小さな幸せを、大切に編み続けていくのでしょう。

    ここまで、この物語を見届けてくださったあなたへ。

    本当に、ありがとうございました。

     
     
    あみこ|人生を編み直す人 ブラック企業、喪失、介護、−26kg減量。 いろいろありました。 でも人生は、 思ったより何とかなるものです。 自分の体験をぜんぶネタにして 人生劇場として書いています。 読後に 「まあ、なんとかなるか」 と思ってもらえたら嬉しいです。

    あなたへのおすすめ