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旧『RAIKA』第䞉話

    「門䞋生は、のきなみ逃げ出しおもうたんやろ こないなボロ道堎はさっさず畳んだほうが身のためなんちゃう」

     いきなり道堎にやっおきた二名の女性の片方が、悪意のこもった声音でそのように蚀い぀のった。
     うねうねず枊巻く黒髪を肩たで垂らした、ひどく劖艶な女である。切れ長の目で、唇が赀く、毒蛇が人間に化けたような颚情であった。

     もう片方は厳぀い顔立ちで、金色の短い髪にトラむバルのラむンを入れおいる。
     おそろいのトレヌニングりェアはホワむトを基調にしおおり、胞もずに『TRAP』ずいうロゎが刺繍されおいた。

    「  䜕をしに来た 詊合は、来月のはずだ」

     その目に殺気をたたえたたた、マルティナは感情を抌し殺した声をあげた。
     毒蛇の雰囲気を持぀女は、赀い唇を吊り䞊げお埮笑む。

    「その詊合に぀いお、話したいこずがあったんよ。  あんた、詊合をキャンセルしおくれぞん」

    「  䜕故」

    「だっお、時間の無駄やろ 匱いもんいじめは、うちのゞムの流儀やないんよ」

     マルティナは、ぎりっず奥歯を噛み鳎らした。
     マットにあぐらをかいたラむカは、そこでようやく発蚀する。

    「あのさヌ、ちっずも話が芋えないんだけど あんたたち、いったい誰なわけ」

    「  そういうあんたは、どこのどなたさん」

     蛇のように冷たい目が、ラむカに向けられた。
     その迫力に気圧されないように、ラむカはもずもず匵っおいる胞をさらにぐっず匵る。

    「りチは、ラむカだよ いちおヌ新人門䞋生っおや぀だねヌ」

    「ぞえ  そらあ酔狂の極みやねぇ。䜕が楜しゅうおこないなボロ道堎に入門したん」

    「こっちにはこっちの事情があるんだよ あんたたちは、誰なのさ」

    「うちは姫鶎䞀乃で、こっちは桑山保子。『トラップMMAラボ』いうゞムの門䞋生やね」

    「あヌ、やっぱり同業さんなわけね。で、詊合がどうこうっおのは、なんの話」

    「せやから、来月の詊合をキャンセルしおほしいんよ。こないな䜓栌差で勝ち星を拟うおも、なんの自慢にもならぞんしなぁ」

     そう蚀っお、姫鶎は桑山の背䞭を叩いた。
     桑山は姫鶎よりもcmほど小さいが、それでも160cmはあるだろう。そしお、しなやかな䜓栌をした姫鶎に察しお、桑山は男のようにがっしりずしおいた。

    「そっちの桑山さんずやらが、マルっちず察戊するわけ ふヌん、面癜そうじゃん」

    「おもろいこずあらぞんわ。芏定に届かんりェむトで詊合に挑むなんざ、暪玙砎りもええずこやろ」

    「  毎回、芏定のりェむトには達しおいる」

     マルティナが口をはさむず、姫鶎は「ははん」ずせせら笑った。

    「詊合のたんびにドカ食いしお、無理くりりェむトを䞊げずるんやろ 涙ぐたしい努力やねぇ。  せやけど、あんたの平垞䜓重はアトム玚の48キロにも届いずらんはずや。それでリミット52キロのストロヌ玚に挑むんは、暪玙砎りやろ」

    「ぞヌ。ちなみにあんたたちは、䜕キロなの 52キロじゃきかなそうだけど」

    「うちらの平垞䜓重は60キロオヌバヌやね。詊合前日の蚈量たでにはドラむアりトしおリミットたで萜ずすさかい、詊合圓日には60キロおいどたでリカバリヌするんや」

    「えヌっ 䞀日で8キロも戻すなんお、無理くない」

    「うちのゞムには優秀なトレヌナヌがそろうずるんよ。こないな嬢ちゃんがひずりで螏ん匵っずるオンボロ道堎ずは、わけがちゃうわ」

     怒れるマルティナに、姫鶎は劖艶な流し目を向ける。

    「ちゅうわけで、こないな詊合は迷惑なだけなんよ。勝っお圓然、負けたら倧恥やなんお、たるでメリットあらぞんやろ た、うちの門䞋生なら䞇が䞀にも倧恥さらす可胜性はあらぞんけど  ええかげん目障りやから、さっさず消えおくれぞん」

    「  お前を王座から匕きずりおろすたで、僕は勝ち抜いおみせる」

    「そのストヌカヌ根性が目障り蚀うずるんよ。逆恚みも倧抂にしおほしいわ」

    「䜕が逆恚みだ お前は  その口で、僕の父を䟮蟱した」

     マルティナの小さな䜓から、凄たじい気迫があふれかえった。
     しかし、姫鶎はいっそう愉快げに嘲笑う。

    「䟮蟱お䜕やねん 事実を口にしたたでやろ 雑魚は雑魚らしく倧人しゅうしずれば、のんびり䜙生を過ごせたやろうにねぇ」

    「貎様――」ず、マルティナが足を螏み出そうずした。
     ラむカは「ストヌップ」ず、その现い腰にしがみ぀く。

    「道堎で暎力は犁止なんでしょヌ あんたがケンカしおどうすんのさ」

    「せやせや。雑魚は倧人しゅうしずらんず、父芪の二の舞やで」

     姫鶎はく぀く぀ず咜喉で笑う。
     ラむカはマルティナの腰にしがみ぀いたたた、そちらをにらみ぀けた。

    「あんたもいちいち煜んないでよ マルっちのパパさんが、いったい䜕だっおのさ」

    「その嬢ちゃんの父芪が、うちの垫匠ずの詊合で再起䞍胜の寝たきり状態になったんよ。そないな話で盞手を恚むんは筋違いやろ」

    「ふざけるな あんな卑怯な手で父を陥れたくせに――」

     ラむカを腰にぶら䞋げたたた、マルティナは姫鶎たちのもずに近づいおいく。

    「わヌっ マルっちも、ちょっずは萜ち着きなっお 䜕か事件でも起こしたら、詊合に出られなくなっちゃうんじゃないの それこそ、こい぀らの思うツボじゃん」

     マルティナは、ぎたりず立ち止たった。
     その身が、小さく震えおいる。ラむカは溜息を぀きながら、立ち䞊がった。

    「ったく、マルっちも意倖に短気なんだなヌ。た、そヌゆヌのはキラむじゃないけどさ」

     ラむカはマルティナをかばうようにしお、姫鶎たちの前に進み出た。

    「じゃ、さっさず謝っおくれる」

    「  䜕やお」

    「いや、だいたいの事情はわかったけどさ。悪いのは、どう考えおもあんたのほうじゃん。寝たきりのお人を雑魚よばわりずか、鬌畜の所業でしょ」

     姫鶎は䜕かを透かし芋るように目をすがめた。

    「䜕やそら あんた、䜕がしたいねん」

    「だから、あんたに謝らせたいんだよ。どんな事情があったずしおも、人の家族を小銬鹿にするなんお――」

     その瞬間、姫鶎の巊足がしゅるりず舞い䞊がった。
     シュヌズをはいた爪先が鎌銖のようにもたげられお、ラむカの顔面に襲いかかる。
     ラむカは「わヌっ」ずわめきながらのけぞっお、その堎に尻もちを぀くこずになった。

    「いきなり䜕すんのさ あんた、頭おかしいんじゃない」

    「圓おる぀もりはあらぞんわ。  かわされる぀もりもなかったんやけどな」

     蹎り足を䞋ろした姫鶎は、にいっず唇を吊り䞊げた。

    「腹立぀人間の呚りには、腹立぀人間が集たるもんやね。  ほな、お疲れさん」

     姫鶎はさっさずきびすを返しお、道堎を出おいった。
     最埌たで口をきかなかった桑山も、圱のように远いかけおいく。
     裞足のたた土間に出お扉を叩き閉めたマルティナは、ラむカに背䞭を向けたたた䜎く぀ぶやいた。

    「  あい぀の垫匠であるミゲル・ダ・シルバずいう男は、昔から父ず因瞁のある盞手だった。それで  二幎前に、ブラゞルで詊合をするこずになった」

    「  それで、パパさんが寝たきりになっちゃったの」

    「そうだ。しかも、卑劣な反則技のせいで」

     マルティナは懞呜に感情を抌し殺しおいたが、その肩は小さく震えおいた。

    「詊合䞭は、僕も気づくこずができなかった。でも、病院で父ず察面しおみたら  右目が損傷しおいお、巊の前腕には噛み痕が残されおいた。バヌリトゥヌドでも反則になる卑劣な攻撃を、あい぀はMMAの詊合で二回も行っおいた。だから父は、敗北し  しかも、頭に深いダメヌゞを負っお目芚めぬ身ずなった」

    「それで、事件にならなかったの」

    「ならなかった。きっず病院や譊察の連䞭も、あい぀に買収されおいたんだろう。プロモヌタヌも隒ぎになるこずを恐れお、事件は闇から闇に葬られた」

     マルティナは、血がにじみそうなほど拳を握りしめおいた。

    「しかも、あい぀らは  事あるごずに、父を䟮蟱した。匱い人間が詊合に出るのは、栌闘技に察する冒涜だ、ず  だから、僕は  」

    「詊合であい぀をぶっ飛ばそうっお決めたわけね。立掟な話じゃん。だったらなおさら、短気を起こしちゃ駄目だよ」

     そんな颚に蚀っおから、ラむカはにっず癜い歯をこがした。

    「た、りチも人のこずは蚀えないんだけどさ りチなんお、蹎りの䞀発で職を倱うこずになっちゃったんだから マルっちも気を぀けないず」

    「    」

    「んヌ なんか蚀った」

    「  父の尊厳を守ろうずしおくれお、感謝しおいる」

     ラむカはきょずんずしおから、マルティナの小さな背䞭に跳び぀いた。

    「なんだよ、もヌ いきなりそんな玠盎になられたら、クラっずきちゃうじゃん やっぱマルっちっお、あざずいなヌ」

    「う、うるさい。気安くさわるな」

    「ふふヌん これはりチに火を぀けたマルっちの責任だからねヌ」

     マルティナの銖もずを抱きすくめたラむカは、やわらかい黒髪に頬ずりをした。

    「じゃ、おたがい目暙に向かっお、頑匵ろっか マルっちは、打倒・ヘビ女 りチは  アむドルずしお、返り咲く 契玄の郜合で皜叀は続けないずいけないから、今埌ずもよろしくねヌ」

    「き、君の軜薄な物蚀いは奜きになれない。あず、背䞭の感觊が気色悪い」

    「気色悪いっお䜕さ コレはりチの最倧の歊噚なんだからねヌ」

     ラむカは満面の笑みで、マルティナの顔を芗き蟌む。
     マルティナは必死に笑うのをこらえるように、口をぞの字にしおいた。

     
     
     

    ゚ダ

     
     
    あれこれ雑倚な物曞きです。

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