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芋出し画像

父のオムラむス

    真倏の熱気がアスファルトを焊がす午埌。
    営業回りの途䞭で、芋知らぬ路地裏の叀びた食堂に入った。

    カりンタヌが六垭だけの小さな店。
    厚房には癜髪混じりの無口そうな店䞻が立っおいる。

    䜕気なくオムラむスを泚文した。
    䞭華鍋が火にかけられ、小気味よい音が響く。

    ケチャップが熱い鍋肌で匟ける銙ばしい匂いが広がった。

    「お埅ちどおさた」
    目の前に眮かれたのは、䞀筋のケチャップが茉った楕円圢のオムラむス。

    スプヌンで端を厩し、口に運んだ瞬間、私の手が止たった。

    甘酞っぱい颚味、
    お米䞀粒䞀粒の旚味、
    チキンラむスの代わりのチャヌシュヌ、
    この塩胡怒の銙りは  。淡路島からの取り寄せの  
    卵の絶劙な火の通り加枛。

    どこか蚘憶をたどるような食べ方で、私はゆっくりずスプヌンを動かし続けた。厚房の店䞻が、その様子を静かに芋おいる。

    ※
    父はか぀お、䞋町の商店街で小さな食堂を営んでいた。
    倫婊二人で切り盛りする、ごく普通の店。

    幌い私は、厚房の隅の䞞怅子でぐるぐる回っお遊ぶのが倧奜きだった。

    料理に劥協しない職人だった父が䜜るオムラむスは、䜕よりのごちそうだった。

    ※
    時代の波
    やがお商店街の再開発が決たり、店は立ち退きを䜙儀なくされた。

    移転先の本通りの近くには、党囜チェヌンの飲食店が進出。
    䟡栌では勝おず、客足は少しず぀枛っおいった。

    暮らしぞの䞍安は倫婊の笑顔を奪い、積み重なった小さなすれ違いの末に、二人は離婚した。
    私は母に匕き取られ、父ずはそれきり䌚えなくなった。

    ※
    ある䌑日、父がオムラむスを䜜っおいる厚房で、幌い私ははしゃぎ回っおいた。
    そのずき、フラむパンから熱い油が跳ねた。

    父は反射的に私の腕を掎み、自分の方ぞ匕き寄せた。
    油は私の巊手銖をかすめ、父の巊手の甲ぞ。
    父は自分の火傷など気に留めず、氎道の冷氎で、泣き叫ぶ私の手銖を必死に冷やし続けた。

    ※
    オムラむスを食べ進めるうちに、味が幌い日の蚘憶を完党に呌び芚たしおいた。
    涙をこらえながら味わう私の姿に、店䞻が気づく。
    ただ空腹を満たす食べ方ではない。

    䜕かを確かめおいる。

    店䞻の胞にも小さなざわめきを生んでいた。

    ※
    最埌の䞀口を終え、皿をカりンタヌぞ静かに寄せた。

    「ごちそうさたでした」
    店䞻が皿を受け取りに来る。

    そのずき、私のワむシャツの袖から、うっすらず残る巊手銖の火傷の痕が芋えた。

    店䞻の芖線が止たる。
    私も、皿を持぀店䞻の巊手の甲を芋た。そこには、歪で倧きな火傷の痕があった。

    二぀の傷痕。
    癜髪が増え、深く皺の刻たれた顔ではわからなかった。
    䜎く掠れた声でもわからなかった。

    幎月は二人の姿を倧きく倉えおしたったが、味が蚘憶を呌び戻し、傷が確信ぞず倉わった。

    ※
    父は静かに厚房ぞ戻り、再びコンロに火を入れた。
    卵を割る音。
    ケチャップの銙り。
    私は黙っおその音を聞いおいた。

    父は二皿のオムラむスを䜜り、䞀皿を私の前ぞ眮き、もう䞀皿を自分で持った。

    少し照れくさそうに笑っお、蚀う。

    「  隣で、食べおもいいか」

    私が小さく頷くず、父は隣の䞞怅子に腰を䞋ろした。
    スプヌンが皿に觊れる音だけが、静かな食堂に響く。

    「オムラむスを食べる暪顔はお母さんだな」

    時間は互いの顔を倉えおしたったけれど、スプヌンを持぀父の巊手の傷は、あの日の愛情のたた、枩かかった。

    完

     
     
     

    コり

     
     
    友人はアマチュア小説家。たぶんそのうち、しれっず本屋に䞊ぶ人。 母は昔、地元玙の小説賞を受賞。 ――どうやら才胜は、きれいに玠通りしたらしい。 小6の頃、挢字が壊滅的で通知衚は「1」 母芪からしこたた叱られた  その蚘憶だけは今も珟圹で倢に出おきたす。

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