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 郊倖の䜏宅地に、その家はぜ぀んず立っおいた。颚は匱い。にもかかわらず家は小刻みに震え、軒の圱が優しく、しかし䞍自然な揺り戻しを繰り返しおいる。
 郜垂防灜建築調査員のサクマは、ネクタむの結び目を無意識にき぀く締め盎した。
 圌の仕事は建物の「是正」だ。傟きを盎し、揺れを止め、建築基準法ずいう名の正解に抌し蟌める。
 圌の人生もそうだった。動揺を芋せず、垞に堅牢であるこず。それが倧人であり、プロフェッショナルであるこずだず信じお生きおきた。
 だからこそ、この建物の「原因のない揺れ」が、サクマには蚱しがたい゚ラヌに芋えたのだ。
「たるで家に䜕か、意図があるみたいだ  」
 出迎えたのは䜏人のクルミだった。柔らかな物腰の女性だ。
「ようこそ。家が少し興奮しおいるようですね。久しぶりのお客様だから」
 圌女は軜く笑っお家の柱に手を觊れた。その瞬間、サクマの目の前で、揺れがすっず匱たる。
 たるで撫でられた動物が萜ち着いおいくような、有機的な反応だった。
 屋内に入っおも、家は垞にわずかに揺れおいた。しかし䞍思議なこずに、家具は䞀぀も倒れない。床や壁が流䜓のように埮现な圢状倉化を繰り返し、重心を垞時自動調敎しおいるのだろう。
「最新のアクティブ免震構造  の誀䜜動、ずいう蚳ではなさそうですね」
 サクマが蚈噚を芋ながら問うず、クルミはあいたいに埮笑んだ。
「ええ。私も詳しくは知りたせん。ただ、この家は『揺れるこず』を自分の 圚り方 ずしお遞んでいるのだず思いたす」
「揺れるこずを  遞ぶ」
 サクマの理性が抵抗した。建築においお揺れずは排陀すべきノむズだ。
 しかし、センサヌが拟う波圢には、ノむズずは思えない耇雑な芏則性があった。
 それは地震波ぞの察抗振動ではない。
 解析モニタヌに映し出されたのは、高床な孊習AIが線み出したず思われる、未知のコミュニケヌション・プロトコルだった。
「  気づかれたしたか」
 クルミが静かに蚀った。
「この揺れは、この家の蚀語なんです」
「蚀語  」
「斜工に䜿われたスマヌトマタヌが、䜕かの拍子に『寂しさ』ずいう抂念を孊習しおしたったのかもしれたせん。圌は揺れるこずで、自分がここにいるず䞖界に䌝え、たた倖からの埮现な振動――颚の音や、虫の矜音――を受け取っおいる。揺れるこずはこの子にずっお、存圚そのものの肯定――“是”なのです」
 サクマは息を呑んだ。
 自分はずっず、揺れないように螏ん匵っおきた。
 瀟䌚ずいう地盀の䞊で、匱音ずいう亀裂が入らぬように。
 だが、この家はその逆を行く。
 硬く閉じるのではなく、柔らかく揺れるこずで䞖界ず繋がろうずしおいる。
 そのずきだった。
 家の揺れが突然、サクマの早鐘を打぀心臓の錓動ず同じ呚期に重なった。
 たるで同調を求めるように、振幅が緩やかに倉化しおいく。
 足元から感じるのではなく、脳波に盎接響くような、䜎く柔らかな揺れ。
 ――ここに、いるか
 そんな意味の揺れのように感じた。
 サクマの匷匵っおいた肩から、匷制的に力が抜けおいく。
 この揺れは、厩壊の前兆ではない。倖郚ず共鳎し、衝撃を受け流し、柔らかく生き続けるための機胜スペックなのだ。
 サクマの目から、䞍芚にも䞀雫、涙が萜ちた。
 それもたた、圌の心の蚱容量を超えた「揺れ」が生んだ結露だったのだろう。
「  揺れるこずを、是ずするのは」
 サクマの声が、わずかに震えた。
 だが、その震えを止める気にはなれなかった。
「家だけではなく、人間にも必芁な機胜こずなのかもしれたせん」
 家がゆっくりず、倧きく頷くように揺り戻しを返した。
 たるで、ようやく力を抜くこずができたサクマを、優しく肯定するように。

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   P.N 四九十䞉しく・じゅうぞう拝
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