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妄想列車は今日も行く!


    最近ハマってるのが、妄想セルフケア。
    「自分の機嫌は、自分で取って」と言われる世の中。
    なら自分で何かテンションが上がることしないと。
    とりあえず、お金がかかるのは避けたい。
    この物価高の波に揉まれすぎて、カラッカラに干からびている。
    いつでもどこでも、道具も遣わず出来ること。
    となれば。
    妄想しかない。
    妄想は得意だ。
    いつごろからか分からないけど、暇さえあれば妄想するようになった。
    理由は、ただひたすら現実から逃避するため。
    それだけ現実は、私にとって辛いものだった。
    ギャンブラーで、浮気性の父。
    そんな父のせいで、心を病んだ母。
    毎日、言い争いが絶えない我が家。
    妄想するしかない。
    妄想しない日なんて、ない。
    自分の心は、自分で癒す。
    色々と考えて導き出したのが、妄想セルフケア。
    そう。自分で自分に、エステのような心地良さを提供するのだ。

    まず「理想の自分」をリアルに設定。
    個人的に、某女優が理想だ。
    背が高くてキリッとしている。
    きっと1人でも、どこにいても前向きに生きていける。
    強い女性を演じたらピカイチの、元宝塚の麗しきお方。
    いつか彼女のようになりたいと思うけど、無理。
    だいたい「理想の自分」は、現実の自分と正反対なことが多い。
    なので、潔く諦めて妄想に吹けるとしよう。
    妄想の中の自分を、最高の人生にするぞ
    それにはまず、出来るだけリアルに想像しなきゃいけない。
    自分が笑顔でいられるように。
    まず、住んでるのは「王様のいない王国」だ。
    上に立って、指導する人間は誰もいない。
    1人1人を尊重する世界。素敵。
    レンガ積みの高い壁で囲まれた、小さい国。
    そこの一番奥の家で、ひっそり静かに暮らしている。
    1年のほとんどが、冬で寒い。
    静かに仕事をしつつ、ブログに小説を書いている。
    王国のSNSは、いいねもコメント欄ももない。
    アクセス数も表示されないから、読んでもらえてるかどうかも分からない。
    でも、それでいい。それがいい。
    誰かの評価など、関係ない。
    王国では、外へ出る期間が限られている。
    何故って、雪が積もるから。
    9月中旬から、末あたりまでしか出て行けない。
    なので、みんな軽トラに乗って、町へ買い出しに行く。
    ぐるっと壁に囲まれた国。
    出入りすよ門は、たったひとつ。
    そこには、門番が立っている。
    「お帰り。今年はどうだった?」
    「けっこう良かったです。とりあえず、日用品を中心に買い溜めしてきました」
    「大変だねぇ毎年」
    「ええ。でも冬ごもりは楽しいです」
    「明日も、同じ時間でいいかい?」
    「はい。よろしくお願いします」
    アクセルを踏み込む。
    ここの住人には、全員に軽トラが支給されている。
    それぞれ思い思いにデコレーションして、楽しんでいる。
    私の家は、一番奥にある。
    門から遠いから、出入りするのに少し不便だ。
    その代わり、静かでいい。
    私は編み物をして、生計を立てている。
    セーター、ストール、マフラー、靴下、手袋。
    色々編んで、それらを町の雑貨屋や服屋などに置いてもらっている。
    ありがたいことに、ほぼ完売だ。
    今年は80万円ほどになった。
    王国の冬は長い。ほとんど、家から出られない。
    本格的な寒さを迎える前に、たくさん買い溜めしないといけない。
    玄関前に車を停めて、買ってきた日用品を下ろす。
    台車に乗せて、地下室へ運ぶ。
    明日は、食料と飲み物を買いに行かなきゃ。
    たくさん好きなもの買おう。

    めっちゃいい。
    何もかも自由。

    「お帰り、ギリギリだね」
    「はい。最後に寄った青果店で、長く話こんじゃって」
    「ああ、あそこの店主は好きだからね、お喋り」
    「そうだ、これ。バタークッキーです」
    「え、大きい缶じゃないか。いいのかい?」
    「いつもお世話になってますから。お茶の時間に、どうぞ」「
    「ありがとう、ゆっくり頂くよ」
    「じゃ、また来年。お身体に気をつけて」
    「君もね。良いお年を」
    門から家までは、10分くらいかかる。
    運転しながら、みんなの家の様子を窺う。
    ほとんどの家が、既に雨戸を閉めていた。
    「私も急がないと」
    アクセル全開で、家まで飛ばす。
    昨日と同じように、買ってきたもの第四銀行に乗せて、地下室へ運ぶ。
    地下室は、常にマイナス15℃前後。天然の冷蔵庫だ。
    生ものも安心して保存できる。
    缶詰やレトルト、お菓子、野菜。棚に並べるのが楽しい。
    トイレットペーパーや洗剤類などの日用品は、地下室の入口に置く。
    「よし、完了。頑張ったー」
    車を車庫に入れてから、玄関のドアをがっちり閉める。
    「さあ。やりますか」
    冬ごもりの初日の夜は、シチューを作ることにしている。
    ジャガイモとニンジンをたっぷり入れる。
    食べながら、次に編むものを考える。
    新しい毛糸も、たくさん買ってきた。
    毎日毎日、しんしんと雪が降り続く国。
    その様子を眺めながら、編み物するのは、私にとって至福でしかない。
    ああ。
    1人で好きなことして生きるっていいな。
    ここにいれば、誰にも邪魔されない。
    ここは私の拠り所。

    という感じで、ずーっと妄想している。
    涙で枕を濡らす時も、王国へ行けば幸せだ。。

    逃げてもいいと思う。
    それで生きていけるなら。
    ただ、生き物には依存しないようにしている。
    命には、期限があるから。

    自分だけが知ってる、自分だけの場所。
    いつでも行ける場所。
    私は王国での妄想をすることで、頑張ってこられた。
    これからも、王国での暮らしを楽しく続けていこう。

    妄想列車は、止まらない!

    #創作大賞2026
    #エッセイ部門