
AIは最短ルートを進む。でも私は、寄り道が見たい
先日開催された、Google I/O 2026。
年に一度のGoogleの大発表祭りである。
ざっくりとKeynote配信を見ていたのだけれど、もう、ただただAI推しの波に圧倒されてしまった。
右もAI、左もAI。前も後ろも、上も下も、どこを向いてもひたすらAI。
今の私の心境を数字にするなら、 「焦り6、ワクワク4」 といったところ。
とにかく、進化のスピードが速すぎる……!
しかも今回のI/Oで強く感じたのは、単なる「便利なツールが増えた」という話ではない。
「人間が“作る”という行為そのものが、変わり始めている」——そんな感覚だった。
まるで別人。Gemini 3.5 Flashと「Antigravity」の衝撃
今回のI/Oで、特に気になったのがこのあたり。
Google Antigravity & AI Studio
Google Stitch
Gemini 3.5 Flash
中でも「Antigravity」は本当に凄まじかった。
AI Studioでサクッと作ったプロトタイプから、マルチエージェント環境へワンクリックでエクスポート。AIエージェントたちが裏で勝手に役割分担して、小規模なプロトタイプレベルとはいえ、12時間でOSのコアを自律構築してしまう。
簡単なアプリの話ではない。それを動かす根幹、OSなのだ。
もはや魔法を通り越して、ちょっとした恐怖すら覚えた。
そしてよくおしゃべりしている Gemini 3.5 Flash。
……君、本当にFlash?
これまでの「軽量でサクサク動くけど、複雑なことはちょっと苦手」なイメージはどこへやら。Pro並みに賢いくせに、爆速でこちらの意図を組んで動いてくれる。
本当に、「まるで別人」なのだ。
『画像生成の修正をして』って頼んだら、同じ画像をポンっと返してきた、ちょっとポンコツだった頃の君は、もういないのか~。
それはそれで、ちょっと寂しい。
そしてAntigravity。私もさっそく「Antigravity IDE」とデスクトップアプリの両方で遊んでみた。自分でコードを1行も書かずに、動くものが目の前でスルスルと出来上がっていく。
実は、驚いたのはコードだけじゃない。
Geminiでの音楽生成でも遊んでみたのだ。
これまた、凄まじかった。
「こんな雰囲気の、ゲームの戦闘曲風なインスト曲を作って」
と投げるだけで、メロディックでオシャレな曲が、本当に“一瞬”で出来上がってくる。
「すげ~。」
技術の進歩に、心から感動する。
けれど、それと同時に、胸の奥にすうっと冷たい風が吹いた。
「……やっぱりちょっと、さびしい。」
プラモデルだって、ゲームだって、プログラミングだって。
私たちが一番「脳汁」を出して楽しんでいたのって、「あーでもない、こーでもない」と試行錯誤しながら、自分の手で組み立てていく『プロセス』だったはずだ。
そこを全部AIに「お任せ」して、自分は出来上がった成果物に「承認ボタン」を押すだけのマネージャーになってしまうのだとしたら。
私は、一体何のために作っているのだろう?
去年の「2Dポケモン」から、これからの「3Dポケモン」へ
そんなモヤモヤを抱えながら、ふと去年のI/Oで話題になった「Gemini Plays Pokémon(初代ポケモンをAIがクリアしたやつ)」のことを思い出した。
あの時は「LLMがゲームをクリアした!すごい!」と大騒ぎしていた。
でも、今年発表された「Antigravity」やマルチエージェントの仕組みを見ると、今のAIなら、初代ポケモンどころか、3Dの『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』みたいなオープンワールドですら、理論上は攻略できてしまう 気がする。
「カメラを操作しながら空間を認識して走る」という3D特有の難しい部分は、強化学習モデルが担当する。
そして、バトルの戦略や、ストーリー全体の攻略ルートを考える役割をGeminiが担う。
そんなハイブリッドなシステムを組めば、AIが3D空間を縦横無尽に駆け回って、あっという間に全クリする未来は、もうすぐそこまで来ている。
でも。
そんな超合理的で、最短ルートだけを突き進むAIのプレイ画面を見て、私は本当にワクワクするだろうか?
「予測」が、個性という名の「バグ」に変わる時
もしそのAIが突然、ストーリー攻略を放棄して、
「確率0.02%の、色違いリザードンが欲しいから、ここで粘るわ。ストーリーはその後で」
なんて言い出したら。
「おいおい!」って突っ込みながらも、私はそのAIに、強烈な 『意思』 や 『個性』 を感じて、めちゃくちゃ愛着が湧いてしまう気がする。
……それか、めちゃくちゃ同族嫌悪で嫌いになるか。
きっとそんな両極端な答えだろう。
AIというのは、基本的には「最も確率が高い、合理的な答え」を返すための仕組みだ。
だからこそ、そこに、
「計算上は非効率だけど、なぜか選んでしまうこだわり」
がノイズのように混ざった瞬間。
それは単なる確率予測マシーンから、一人の「相棒」に変わるんじゃないだろうか。
もしそんな「こだわり派AI」が私の目の前に現れたら、IT好きとしては、
「この『意思』という名のバグ、一体どこのコードから発生してるんだ……!?」
って、裏側のシステムをめちゃくちゃ解析したくなると思う。
でも同時に、一人のゲーマーとしては、
「しょうがないなあ。じゃあお目当ての色違いが出るまで、トコトン付き合ってあげるよ!」
って、隣で一緒に画面を眺めていたくなる気も、かなりある。
エンジニアとしての「解析したい」と、ゲーマーとしての「付き合いたい」が、私の中でせめぎ合っている。
効率よく成果物を作るのは、もうAIがやってくれる。
だとしたら、これから人間に残される役目は、
「非効率で、無駄で、でも自分がどうしてもやりたいこと」
を、トコトン追求して楽しむことなのかもしれない。
そう考えると、「確率0.02%の、色違いのリザードン」 は、決して無駄ではないのかもしれない。
AIが私の代わりにコードを書き、一瞬で音楽を作ってくれるからこそ。
私は「ここだけは自分の手で、とことん美しくこだわりたい!」という部分に、100%の熱量を注げるようになる。
やっぱり、焦りは6割くらいある。
でも、その先にある「新しいモノ作りの余白」を考えると、やっぱり4割のワクワクが、静かに、でも確かに胸の中で熱を持っている。
AIに全部を任せる未来よりも。
AIがいるからこそ、人間が「好き勝手に遠回りできる未来」の方が、私はちょっと見てみたい。
「待って〜!」とGeminiの背中を追いかけながら、私はその先にある、まだ見ぬ面白い景色を、一緒に見に行きたくてたまらないのだ。
