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【連載小説|第27話】深海通信 23.5Hz

    コロン

    –––––カチッ

    01100100 01100101 01101100 01100101 0111…. 01100…
    01100101 01110010 011….. 6F72
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    74696D65stamp 20XX/08/06 07:23:57

    人混みの中にいるように、あたりが騒めいている。
    ただそれは音として聴こえているのかどうか、よく分からない。
    なんだか、声から人の感情が流れ込んでく時と似ているような……

    「…………」

    「………………………!」

    「………、…………?」

    ぼんやりとした視界の中、誰かの声が聞こえる。
    どこか懐かしい気がするのに、思い出せない。
    でも何故か、女の子と僕と同い年くらいの少年の声だと……そう思った。

    「お前、また………………」

    「面倒…………、お兄ち………………」

    「………」

    何を喋っているのかはよく聴こえない。
    でもそこには、どこか優しい空気が漂っているのを感じる。

    –––––ザザッ
    ノイズと共に、視界が切り替わる。

    今度は……体育館のようだ。
    さっきよりは少し視界がはっきりする。

    前を見ると、1人の少女がこちらにかけて来る。

    「……! ……ってきてくれたの?」

    「お前……………に、弁当…………ろ。」

    少女に弁当を渡す。
    近づいてきた少女の輪郭に、どこか見覚えがあった。

    これ、もしかして……兄さんの記憶?
    その瞬間、はっきりとした声が耳に飛び込んできた。

    「お弁当、何入ってるの? もうお腹ぺこぺこだよ〜」

    「お前が忘れるのが悪いんだろ……何回目だよ。」

    「ごめんごめん、気をつけるって。」

    さっきより鮮明になった視界には、今より少し幼く見える杏がいた。
    僕の知らない光景、中学の頃だろうか……

    「改める気ないだろ。次は持ってこないからな。」

    「そう言って〜、いつも結局届けてくれるじゃん。」

    兄さんの声は聞こえるのに姿はない。
    これはなんなんだろう。
    兄さんの記憶みたいだけど……というか兄さんって誰だっけ?
    そもそも、僕は誰なんだっけ……

    –––––ザザッ
    ぼんやりとする思考の中、また視界が切り替わる。

    多くの人が行き交う廊下の先、1人の青年がいた。
    短い髪に、カーディガンを羽織った細身のシルエット。
    僕の知っている兄さんとは違う。
    でも、あれは兄さんだという確信があった。

    『……』

    呼びかけようとしても、声が出ない。
    そもそも今、僕の体はここにあるんだろうか……
    兄さんに近づこうと、進もうとしても一向に進まない。
    こちらには全く気づかずに、遠くへ進んで行く兄さんに焦りを覚える。

    【あいつ怒ってるかな……】



    「兄さん!!」

    気がつくと、僕は布団の上に起き上がっていた。
    跳ね上げられた布団が、床に落ちている。
    まだ寒いのに、全身に汗をびっしょりとかいていた。
    心臓の鼓動がやけに大きく聞こえる。

    さっきのは–––––

    焦っていたはずなのに、何を考えていたのか、何を見たのか思い出せない。
    夢から覚めた時のように、薄らとした断片だけが残っている。
    でも、兄さんが出てきてような気もする……

    時計を見るとまだ朝の4時23分、昨日も遅かったしまだ起きるには早い。
    心臓の鼓動に耳を澄ませ、ぼんやりと落ち着くのを待っていると、くらりと眩暈がした。
    不安定な感覚に身を任せてそのまま布団に戻ると、数分もしない内に寝息が聞こえ始めた。


     
     
     
    創作小説『深海通信』完結しました。 初めてのオリジナル小説です。 ラジオ越しに届く“もういないはずの兄の声”–––記憶と観測をめぐる静かな物語です。 最後まで読んでくださった方、本当にありがとうございました。 もし何か心に残るものがあれば、コメント等残していただけると嬉しいです。

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