春の歌が夏に浮かぶ/ひさかたの
この歌は、春の歌だ。
でも、私は夏にこの歌を思い浮かべてしまう。
昨日まで、2泊3日祖父母の家に行っていた。
【1日目】
初日は雨が降っていて、少しジメジメしていた。
昼食は、従兄弟と祖父母とみんなで食べることになり、テーブルいっぱいに並んだ料理を前に、自然と会話も弾んだ。
祖母と祖父が作ってくれた冷やし中華は、ほんのり生姜が混ざり、
祖父の畑で採れたばかりのトマトが、神々しく光っていた。
従兄弟は保育園の話や最近好きなアニメの話、など、素直な横顔をみせてくれる。
私はそんな従兄弟達を横目に、つい微笑んでしまう。
夕方になると、雨がやんできて、庭で花火をすることになった。
従兄弟達は花火をする順番で、揉めていた。
結局はちょっとしたゲームで決めて、盛り上がった。
【2日目】
雨が上がり、昨日の蒸し暑さも取れ、いつもより涼しく感じた2日目の午後、
みんなで、スイカ割りをすることになった。
従兄弟達は割れなかったけれど、弟が割った時、従兄弟達は夢中ではしゃいでた。嬉しそうだ。
私はと言うと、4周回って前進するのを忘れて何もないところで木刀を振ってしまい、全員大笑い。
ふと空を見上げれば、曇りの隙間からわずかに青空が覗いていた。
「ひさかたの」…と、一瞬だけ百人一首が頭に浮かぶ。
『久方の 光とどけき 春の日に しづ心なく 花の散るらむ』
穏やかな春の日に、どうして桜の花は落ち着きなく散っていくのだろうか。
布団に入る頃には、外の草むらで虫の声が響く。
静かな夜、月が雲の間から顔を出している。
友だちと過ごす夏も好きだけど、
こうして家族みんなと過ごす夏には、どこか温かな安らぎがある。
「ひさかたの」
――本当は春の歌だけど、
やわらかな光が、夏の思い出までやさしく包んでくれる気がする。
また季節がめぐり、またこの家で同じ夏を過ごせたらいいな。
そんなことを思いながら、静かに目を閉じた。
